色彩
■ 22.お節介な兄ちゃん


「・・・橙晴は?」
師走を不満げに見つつも、睦月は静かに問う。
「引き受けてくれたさ。橙晴はあれで青藍が心配で仕方がないからな。眠れていないことにも気付いていたさ。言ったところで聞かないから何も言わないだけで。」


「だろうな。雪乃は?」
「今日は早番。雪乃が帰るまではお前が見ていてやれ。お前はその後合流でいい。それまでは俺が二人分動くさ。今回は弥生も居るんでね。」
「そうか。頼む。こういう時、茶羅が居ないと、大変だな・・・。誰も居ない時は、茶羅が青藍の傍に居たのに。」
睦月はそう言ってため息を吐く。


「その茶羅は、元気に琥珀庵の店員をやっているぞ。茶羅目当ての客で、連日大盛況だ。思っていたより貴族の奴らも離れていっていないようだし、あっちは問題ないだろう。」
そんな会話をしながら青藍を抱え上げた二人に、真子は不思議そうな視線を向ける。
「「なんですか?」」
それに気付いた二人は、首を傾げた。


「・・・いや、お前ら、何で朽木家に居るんやろ、と思っただけや。お前ら、別に朽木家におらんでも、やっていける奴らやろ?なんや事情があるみたいやけど、そうやとしても、朽木家に守られなければならんほど、弱い奴らやない。何で朽木家におるん?二人とも誰かに仕えるようなタマやないやろ。」
問われて二人は苦笑する。


「鋭いですねぇ。」
「そうかァ?」
師走に言われて、真子はけだるげにそう言いながらお茶を啜る。
だからこの人は怖いんだ、と、二人は内心で呟く。


「まぁ、でも、大した理由ではありませんよ。」
「そうだな。朽木家は居心地がいいとか、そんな理由です。」
「俺たちは厄介者ですからね。落ち着くことの出来る場所が、なかったんですよ。」
「それを朽木家が与えてくれたんです。まったく、可笑しな人たちだ。俺たちみたいなのを引き受けるなんて。」
二人は困ったように微笑みながら言う。


「へぇ?」
「それに・・・。」
「それに?」
「「こんなに手のかかる奴らを、放っては置けない。」」


「なんや、ただのお節介な兄ちゃんやったか。」
真子は詰まらなさそうに言う。
「そんなところです。・・・俺たちが近づくと、貴方の斬魄刀が、ざわつきましたか?」
睦月に問われて、真子は目を丸くする。


「何で知ってん?」
「どうやら俺たちは平子さんの斬魄刀には好かれなかったようだ。そのざわめきが「見えた」もので。まぁ、俺たちの、能力、というか、何というか。」
魂魄が見えないと、魂留めは出来ないという、そんな理由だ。
斬魄刀は魂魄である故に、睦月たちにはそれが見えるのである。


「後付けの能力ではありますけどね。咲夜さんほど解る訳ではありませんし。」
「何やそれ?ほんまに何者なんや?」
「言ったでしょう?俺たちは厄介者だって。・・・それじゃ、俺たちはこれで。」
そう言い残して青藍を抱えて消えた二人に、真子は首を傾げるのだった。

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