色彩
■ 16.最後の試練

『・・・さて、他にも続々とお祝いに来られております。これだけの方々がこの婚姻を祝福しているというのに、まだ、何かと理由を付けて反対されますか?』
青藍はそう言って反対している者たちの方を見る。
彼等は集まった面々に目を丸くしていた。
上流、中流、下流を問わず、集まった貴族が朽木家の庭を一杯にしている。


また、死神は隊長格がほとんど揃っている。
仕事に一区切りついたのか、文を持たせた隊長格も姿を現し始めていた。
ルキアや橙晴たちは彼らの対応に追われているようだ。
深冬や雪乃、朽木家の使用人たちも慌ただしく動いている。


そして、何より。
その場に居る皆が笑みを浮かべていた。
当然、その中心にいる茶羅と燿も。


『一応言っておきますが、後から来られた方々は、我らが朽木家の名を振りかざして集めた者たちではございません。各々、一個人として、友人たちにご協力願いました。その結果、これだけの者たちが茶羅と燿のためにお力を貸してくださいました。本当に、我々は友に恵まれておりますねぇ。』


青藍にそう言われて、思わずため息が漏れる。
・・・これでは、敵うまい。
家としても、個人としても、彼等には敵わない。
格が違うのだ。


『お分かりいただけましたか?』
心を読んだように青藍にそう問われて、彼等は沈黙したのだった。


『ふふ。さて・・・燿!これだけの方々が貴方と茶羅の婚姻を認め、祝ってくれています。今、ここで、貴方の覚悟を示して見せなさい。前へ。』
「はい。」
言われて燿は、庭の中心へと歩を進める。


『・・・父上、橙晴もここへ。』
「あぁ。」
「はい。」
青藍に呼ばれて白哉と橙晴も前へ出る。
その手には斬魄刀が握られている。


青藍もまた清家から斬魄刀を受け取り、庭の中心に立つ。
三人は燿の前まで来ると、すらり、と斬魄刀を抜き、彼の首元に刃を突きつける。
その様子に、一同は目を見開いて沈黙した。


『南雲燿に問う。』
「我らは茶羅を解き放つ。」
「それを引き受ける覚悟があるか。」
刃を突きつけられながらそう問われても、燿は平然としている。


「はい。貴方方が茶羅に与えた翼を、守りましょう。どんな困難も、乗り越えて見せます。」
真っ直ぐに答えた燿に、皆が目を瞠る。
青藍たち三人は、そんな燿に瞳だけで笑った。


『では、我らの刃を潜り抜けて見せなさい。』
その言葉に、朽木家以外の面々は目を見開いた。
「我らの刃がそなたを貫く前に、茶羅の元へ辿り着いて見せろ。」
「これが、貴方への最後の試練。・・・受けて立ちますね?」
「当然。受けて立ちましょう。」


『・・・では、始めましょうか。』
そういうとともに、三人は霊圧を上げた。
一部の者は霊圧に当てられて動けなくなる。
しかし燿は、その霊圧の中でも涼しい顔をして刃を突きつけられている。


「・・・おい、漣。お前、燿に何を教えたんだ?」
「これだけの霊圧の中平然としているって、どういうこと・・・?」
浮竹と京楽はその姿を見て、疑うように咲夜を見る。
その視線を受けて、咲夜は楽しげに微笑んだ。


「速さはこの私が相手をしているのだから、隊長格。だが、霊圧が足りない。だから、この一週間霊圧を溜め込ませていた。さっき、霊圧制御装置を外したようだ。これで、数十秒は隊長格と同等だ。よく見ていろ。一瞬で終わる。」


「・・・青藍、橙晴、準備は良いな?」
『「はい。」』
「では、行くぞ、燿。」
「はい、白哉様。」


その返事を聞くとともに、青藍、白哉、橙晴は、刃を振るい始める。
それをするりと躱すと、燿は一直線に茶羅の元へ駈けた。
次々と迫りくる刃を紙一重で避けながら、燿は全力で茶羅の元へ向かった。
予想以上の速さに三人は内心舌を巻く。


次の瞬間、燿は茶羅の元に辿り着いていた。
それを見て取った三人はピタリ、と刃を振るう手を止める。
青藍の刃は喉元に、白哉の刃は心臓に、橙晴の刃は瞳に突きつけられている。
そして、彼らの霊圧が抑えられた。

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