色彩
■ 11.負けない賭け


「・・・南雲燿、朽木茶羅。両名は、これにて、夫婦となる。」
「我らはこれを認め、お祝い申し上げる。末永く、共にあれ。」
祝言は滞りなく進められ、証人として招かれた天音と弥彦が二人を夫婦として承認する。
今、この瞬間に、二人は夫婦となったのだ。
その場に居る面々は、そこでようやく一息つく。
先ほどから門の外が騒がしいのだった。


「・・・「客人」が「お祝い」にいらっしゃっております。如何いたしましょう?」
静かに清家が青藍の傍に寄って、青藍に耳打ちする。
青藍は一つ深呼吸をすると、立ち上がり、皆を見回す。
皆が頷いたのを見て、青藍は空を見上げる。
見上げた空は透き通るように青い。


『良い日和ですねぇ。』
それが二人の未来を見せているようで、青藍は微笑む。
そして、凛と前を見据えると、声を上げる。


『・・・門を開けよ!』
青藍に言われて、清家はすぐさま合図を出す。
それと同時に、外で朽木家に面会を求めていた貴族の者たちが雪崩れ込んできた。
『ふふ。皆様、大きな賭けの始まりです。』


呟くようにそう言った青藍に、隣に居た深冬は不思議そうな顔をするが、青藍は楽しげに微笑むばかり。
それを見た男性陣と咲夜は、訳知り顔で、口元に笑みを浮かべる。
あとは、天に運を任せるだけなのだ。
とはいっても、その賭けに負けると思っているものは、そこには居ないのだが。


「朽木様!!ご説明頂きたい!!!」
「周防様もいらっしゃるではありませんか!!此度の件、一体どういうことなのか!!」
「我々に何の説明もないというのは、些か傲慢に過ぎまする!!」
「掟を何だと思っておられるのですか!!!!」
「南雲瑛二が周防様の実弟とはどういうことなのです!?」
「このような暴挙が、許されるはずがない!」
雪崩れ込んできた者たちは、その場に居る面々を見て、口々に騒ぎ出す。


『・・・ふふ。』
それを見て、青藍は小さく笑った。
その笑い声はそう大きなものではないのだが、その場に響いて、皆が青藍に視線を集める。


「な、何を笑っておいでなのですか!?」
次々とそんな声が上がり、青藍は笑みを深める。
『いえ。申し訳ありません。少々、可笑しくて。』
青藍はそう言って再び笑う。


「おかしい?可笑しいのはそちらの方でございます!無礼を承知で申し上げますが、此度の所業、正気の沙汰ではございませぬ!!!」
『確かに、正気の者には思いつかないことでしょうねぇ。』
「それが解っていらっしゃるのならば、何故、このようなことを!!!」


『ふふ。可愛い妹の幸せを願って何が悪いのでしょう。私を始めとして、朽木白哉、朽木咲夜、朽木ルキア、朽木橙晴、朽木深冬、朽木雪乃、そして、朽木銀嶺。朽木家は、この婚姻を喜ばしく思っております。』
青藍の言葉に、信じられないと言った様子で、彼等は朽木家の面々を見る。
白哉たちはそれぞれ、小さく頷いた。
その様子に、彼等は唖然とする。


「・・・で、ですが、貴方方が納得しておられても、朽木家の家臣が納得しておられないのではありませぬか?朽木家の姫を、流魂街の者に嫁がせるなど!!」
『まさか。我が朽木家家臣一同も、この婚姻に異議はございません。皆に、納得して頂いております。』


「「「「朽木家家臣一同、異議はございません。」」」」
青藍の言葉に同意するように、家臣たちが言葉を発する。
「な、何ですと・・・!?朽木家は、掟を破るとおっしゃるのか!!」


『掟?確かに、我々貴族は、貴族同士の婚姻が原則にございます。ですが、この南雲燿は、上流貴族、周防家の血を引く者。彼の父、南雲瑛二は、現周防家当主、周防慶一の実の弟にございます故。』


「周防様に弟君がいらっしゃるという話は聞いたことがございませぬ。突然そのようなことを知らされて、我々がそれを信じるとでも?」
皆が疑うように瑛二を見る。


「この周防家当主周防慶一が、それを証明する。南雲瑛二は、間違いなく、この私の弟。」
「そうだのう。この周防主計が、それを証明する。我が息子は二人。この慶一と、そこに居る瑛二。その者は、まぎれもなく儂の息子である。」
主計の言葉にざわめきが奔る。


「か、主計殿・・・。」
「見てみろ。慶一と燿は、並ぶとよく似ておる。そして、そこに居る蓮と晴の瞳は、この儂の瞳と同じ色じゃ。」
「それは、確かにそうですが・・・。」


「ほほ。信じられぬであろうな。だが、己の耳ならば信じることが出来るであろう。」
「「「耳・・・?」」」
皆が首を傾げたのを見て、主計は笑う。
「そうだ。周防の笛を、奏でられるのは、周防の者だけ。・・・瑛二。」
「はい。」


「・・・「四神」を皆に聞かせてやるがよい。」
その場に響き渡ったその言葉に、貴族たちは自分の耳を疑った。

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