色彩
■ 6.夢喰い


『・・・うん。怖くない。僕には、大勢、僕の力になってくれる人たちがいる。深冬は、酷い僕を、受け止めてくれる。格好悪い僕も、受け止めてくれている。こんなに心強い味方が居て、怖いことなんか、ない。』


「解ったのなら、眠れ。ここから出られないとはいえ、明日も忙しいのだろう。私がそばに居てやるから、安心して眠るといい。」
『うん。ありがと・・・。深冬・・・。あいして、いるよ・・・。』
安心したように微笑むと、青藍はすう、と眠りの中に入って行く。


「私も青藍を、愛している。・・・おやすみ、青藍。」
眠った青藍の額に唇を落として、それから額を合わせる。
「青藍の眠りが穏やかなものであるように。」
祈るように呟いて、深冬は斬魄刀を手に取る。


「夢に誘え、幽冥。彼の者の眠りを妨げるものは去るが良い。青藍は渡さない。・・・夢喰い。」
深冬の言葉に、青藍の傍にあった、深冬にしか見えない陰りが祓われる。


「少し狡いが、これでいいだろう。全く、私の斬魄刀は本当に戦闘向きではないな・・・。」
小さく愚痴りながらも、深冬は穏やかに青藍を見つめる。


「まぁでも、こんなに穏やかな寝顔を見ることが出来るのなら、それでいいか。私にはこのくらいの能力が良いのかもしれないな。青藍の助けになることが出来るのだから。」
すやすやと眠る青藍に、深冬はくすりと笑う。
そして、眠る青藍に布団を掛けると、深冬は彼の傍で本を読み始める。


「・・・深冬?」
暫くして、そんな声が扉の外から聞こえてきた。
「橙晴。入っていいぞ。」


「うん。お邪魔します。雪乃もおいで。兄様の様子を見てくれるかな。」
「えぇ。お邪魔するわ。」
深冬に言われて、橙晴と雪乃が忍び込むように部屋に入ってきた。


「兄様は・・・眠ったようだね。」
「あぁ。眠らせた。」
「あら、本当によく眠っているようね。寝顔が穏やかだもの。」
青藍の顔を覗き込んで、雪乃が珍しそうに言う。


「少し、ずるをしたので。」
「ずる?・・・あぁ、能力を使ったのね?」
「はい。こういう使い方があることは、青藍には秘密です。」
深冬は悪戯っぽく言う。


「ふふ。解ったわ。・・・さっき、師走さんが来たの。」
「師走が?」
「えぇ。祝言の準備はもう整っているとのことよ。」
「最終確認は睦月に任せて、師走はこちらの様子を見に来たらしい。兄様のこと、心配していたようだよ。ま、この様子なら、問題ないでしょ。」


「そうね。師走さんが持ってきた青藍の仕事は私たちと白哉様が引き受けるわ。隊舎から出られないのは少し窮屈だけれど、青藍にはいい休暇ね。深冬もそばに居てあげるといいわ。貴方もゆっくり休みなさい。」
「はい。ありがとうございます。」


「じゃ、僕らはこれで。深冬、兄様を頼むよ。全く、兄様ったら、もう少し僕らに仕事を分けてくれてもいいのになぁ。」
橙晴はそんなことを呟きながら、雪乃を伴って部屋から出て行ったのだった。

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