色彩
■ 3.避難


「「「「えぇ!?!!???」」」」
青藍が護廷隊へと向かっていると、あちらこちらからそんな声が上がる。


あはは・・・。
予想通り、凄いことになりそうだ・・・。
姿を隠して移動しながら、青藍は苦笑する。


朽木家、周防家は門扉を閉ざしているし、琥珀庵は蛻の殻。
そして関係する死神たちは既に避難済み。
京楽家、漣家、加賀美家、朝比奈家は素知らぬ顔で、知らぬ存ぜぬ。


十四郎殿、春水殿、烈先生も知らない振りをするだろう。
十五夜様と安曇様はお仕事で此方には来られないし・・・。
まぁ、恋次さんやイヅルさんとかまで巻き込まれて可哀そうだけれど、彼等には知らせていないから知らないというしかない。


『・・・失礼しますよ、烈先生。』
「青藍。すでに皆さんお揃いですよ。」
青藍が窓から四番隊の隊主室に侵入したにもかかわらず、卯ノ花は当然のように話しかける。
言われて青藍が隊主室を見回すと、茶羅を除いた朽木家一同と、蓮、晴、紫庵がそれぞれ書類に向かっていた。


『あら、皆さんお早い。』
「青藍。・・・状況は?」
青藍の声に顔を上げた白哉が、静かに問う。
『予想以上です。かくれんぼ作戦を実行しておいて良かった。』
青藍は苦笑する。


「そうか。睦月と師走はどうした?」
『二人には邸に残って祝言の準備の指揮を執ってもらっています。茶羅と燿さんの護衛という役目もありますが。・・・祝言は予定通り三日後です。茶羅も燿さんも覚悟をしています。我々も覚悟を決めますよ。とりあえず、この三日間、逃げ切りましょう。皆さん、いいですね?』
青藍に問われて皆が頷く。


『烈先生もご協力ありがとうございます。今度、四番隊にお手伝いに来ますね。睦月と師走も連れていきましょう。』
「ふふ。それは助かります。」
『さて、では、僕も仕事に取り掛かりますかね。』


数刻後。
「・・・終わった!終わったぞ、白哉!」
そんな声を上げてそれまで書類の処理に没頭していた咲夜が筆をおく。
「そうか。こちらももうすぐ終わる。青藍、橙晴、終わるか?」
『・・・今、終わりました!』
「僕ももうすぐ終わります!」
白哉の言葉に青藍と橙晴も声を上げる。


「卯ノ花隊長、こちらの書類、確認をお願いします。三日分、終了しました。」
「あら早い。流石雪乃ですね。」
「ルキアさん、咲夜様の書類の分別が終わりました!」
「あぁ。ありがとう。私ももうすぐ終わる。」


「紫庵に晴、僕は終わったけど、手伝おうか?」
「いえ!おれも終わります!後三枚です!」
「私も終わるよ、蓮君。・・・流石に皆様、仕事がお早い。そして眼福です。」


「・・・五番隊第九席加賀美豪紀です。卯ノ花隊長は在室でしょうか。」
皆が仕事を終え、一息ついた頃、外からそんな声が掛かる。
「お入りなさい。」
卯ノ花の言葉に扉が開けられる。
皆の姿を認めて、豪紀は軽く頭を下げた。


「失礼いたします。・・・ほら、六席、避難場所に着きましたよ。」
豪紀はそう言って引き摺るように玲奈を隊主室に押し込む。
「玲奈さん?大丈夫・・・?」
倒れこむように中に入ってきた玲奈に、蓮が駆け寄る。


「だ、大丈夫、よ・・・。加賀美君が、助けて、くれたから・・・。」
疲れ切った表情で、玲奈は言う。
「あはは。逃げ遅れたみたいだね。助かったよ、加賀美君。」
「いえ。俺も逃げようと思っていたところだったので。」


『あはは。やっぱり、加賀美君も色々聞かれた?』
「まぁな。実花は周防家の者だから、俺も事情を知っていると思われている。実際、事情を知っているわけだが、知らぬ存ぜぬで通しておいた。」
豪紀も少し疲れたように言った。


『いつも悪いね。』
「俺より平子隊長に感謝するんだな。」
『真子さん?』


「あぁ。事情を知っていそうな六番隊は他隊の者の立ち入りを制限しているし、三番隊も一刻ほど前に他隊の者の立ち入りを制限し始めた。お蔭でそれらが五番隊に雪崩れ込んできてな・・・。事情を察した平子隊長が俺と六席の仕事を引き受けてくれた。」
『あぁ、なるほど。後でお礼を言っておくよ。』


「それから、朝霧たちから伝言。」
『ん?』
「「後で詳しく聞く。」とのことだ。朝比奈にも文句を言っていたぞ。彼奴らも詰め寄られていたからな。」


『「・・・。」』
「まぁ、覚悟しておくんだな。」
豪紀は心なしか楽しげだ。
『え、加賀美君も同罪でしょ。』
「そ、そうよ。加賀美君も一緒にあの三人に怒られるのよ。」


「俺はもう先に謝ってきた。」
『「裏切り者!」』
「何とでも言え。」

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