色彩
■ 1.最終確認


紫庵と梨花のお見合いから一週間。
青藍はあちらこちらに話をつけて、着々と準備を進めていた。
朽木邸で行われる茶羅と燿の祝言。
その準備で、朽木邸は慌ただしい。


『・・・燿さん?入りますよー。』
青藍はそう言って襖を開けた。
今日は衣装の最終確認に燿が朽木邸に来ているのだ。


ちなみに茶羅も別室で最終確認をしている。
茶羅の白無垢は咲夜が着たもの。
その白無垢はそのまま朽木家から茶羅に贈られる。


それから、二人の新居として、邸が贈られるのだ。
邸というには小さいが、二人で住むには十分すぎる家である。
場所は琥珀庵からほど近い流魂街の一角。
此方は既に完成し、茶羅の嫁入り道具が運び込まれ、後は主を待つだけである。


『おやおや、やはり着こなしておられますね。』
「青藍君。・・・本当に、これを着てもいいのかな。」
襖を開けて入ってきた青藍に、燿は気恥ずかしげに彼の方を見る。
『いいんです。慶一殿がくださったのですから。お似合いですよ。その袴。』


今燿が着ているのは、慶一が祝言の時に着た袴である。
周防家の紋が染め抜かれたもの。
羽織の色は群青色。
袴は灰色で縞のあるもの。


本来ならば、紫庵が着るべきものなのだが、彼には着こなせないだろうと、急遽燿に着せることにしたのである。
この姿は貴族の中にあっても見劣りしないだろう。
青藍は内心で呟いて、満足げに微笑む。


『本当にお似合いです。それなら、茶羅が着る白無垢にも負けません。』
「はは。そうだといいけど。でも、この家紋がねぇ・・・。」
青藍の言葉に燿は困ったように笑う。


『大丈夫ですよ。・・・あとは、安曇様と十五夜様からの品を待つだけです。それが届いたら、茶羅との婚約を公表します。貴方が周防家の血を引いていることも。燿さん。覚悟は良いですね?』


「もちろん。茶羅も覚悟を決めてくれているのだから、俺が怖気づいている場合ではないしね。それに、父さんに母さん、蓮、晴、玲奈さんまで覚悟を決めてくれた。白哉様にもお許しを頂いたし、咲夜様には大切な白無垢を贈って貰える。青藍君たちも俺たちのために力を尽くしてくれているし、弥彦様も銀嶺様と一緒にあちらこちらに話をつけてくれているらしい。安曇様と十五夜様が素敵な贈り物を下さる。・・・これだけ祝ってもらえるんだ。何か迷うことがあるかい?」


微笑みながらそう言った燿に、青藍は眩しそうに目を細める。
この人は、太陽の下を堂々と歩く人だ。
この人が居れば、茶羅は道に迷わない。
暗い道を歩くこともきっとない。
様々な困難があるだろうけれども。


『・・・ふふ。そうですね。燿さんは、遠慮なく茶羅を連れていってください。大きな空に、連れ出してあげてください。・・・僕の代わりに、あの子を、守ってあげてください。あの子が自由に羽ばたく姿を僕らに見せてください。それが、僕らの力になります。』


どうか、茶羅が、僕の様に、囚われたりしませんように。
青藍は心の中で小さく祈る。


「約束するよ。必要ならば、彼女ごと、君たちに届けよう。茶羅は、俺の妻になるけれど、ずっと、青藍君や橙晴君の妹なのだから。白哉様や咲夜様、ルキアさんにも、届けよう。まぁ、俺が届けなくても、あの子は自分で飛んで行ってしまうだろうけど。」
燿は苦笑する。


『ふふ。そうですね。捕まえておいてもいつの間にか飛んで行ってしまう子ですから、燿さんは大変ですねぇ。』
「あはは。そんな茶羅が、好きなのさ。」
『あら、もう惚気ですか?』
「そうそう。ここで惚気ておかないと、暫く青藍君たちには中々近づけなくなるからね。」


『護廷隊に来れば、すぐに会えますよ。僕だって、深冬を連れて琥珀庵に行きましょう。橙晴だって、雪乃と一緒に足を運ぶことでしょう。もちろん、父上と母上、ルキア姉さまも。・・・燿さんも会いに来てくださいね。』
寂しげにそう言った青藍に、燿は小さく微笑む。


「会いに行くよ。茶羅と一緒に。・・・君の立場が難しいものであることは、何となく解る。それなのに、こんな無理を通してくれるんだ。君が俺の知らないところで無茶をしているのだろう。君だけじゃなく、他の皆も。俺などより、よっぽど動きを取り辛いだろうに。」
燿はそう言って目を伏せる。

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