色彩
■ 38.頭の悪くない凡人

「嘘だ!!!院生時代のあれは罰ゲームだった!!ていうか、何で加賀美さんがそれを知っているの!?」
「・・・私の昼寝場所が校舎裏の二階部分だったのだ。久世はいつもいつも私の昼寝を邪魔してくれた。本当に迷惑な奴だ。」
深冬は迷惑そうに言う。
その様子に青藍たちは笑った。


「えぇ!?何それ!?おれ、わざとじゃないよ!?ていうか、それ、おれたちが、面識を得る前の話だよね!?おれは加賀美さんのこと知っていたけれども!!加賀美さん、有名人だったから!」
「そのようだな。だが、久世はいつも橙晴の後ろに隠れているせいで、有名人だったのだ。ついでにあれやこれやと根も葉もない噂があったが。」


「おれ、橙晴の傍に居たからずっと苛められていたもの!」
「胸を張って言うな。・・・馬鹿なのか?」
「違うよ!?梨花ちゃん曰く、頭の悪くない凡人!!」
「それは褒め言葉ではないぞ?」
「うん!解っているよ!?でも、馬鹿よりはまし!!!」


「・・・紫庵って、昔からこうなのね。まぁ、いいわ。これから私が鍛えればいい話だもの。それより、青藍様に聞きたいことがあるわ。」
梨花は紫庵を横目で見て、それから青藍を見つめた。
『うん?何かな?』


「茶羅様の件よ。青藍様、昨日、決定事項だとおっしゃったわ。そして、蓮様は周防家の力を借りることになるとおっしゃっていた。つまり、公表するということでしょう?瑛二叔父様が周防家の者であると。」
梨花の言葉に紫庵は目を丸くして皆の顔を見る。
そんな紫庵に京楽は肯定の頷きを返した。


『そうだね。燿さんが茶羅を受け入れるからには、これ以上琥珀庵と朽木家の繋がりを隠しても仕方がない。だから、瑛二さんが周防瑛二であることを公表するよ。手筈は整えてあるけれど、大きな騒動になるのは間違いないね。朽木家も周防家も注目の的、という訳だ。』


「・・・瀞霊廷が大騒ぎになるわね。」
『ふふ。でも、反論は許さないよ。まったく、何が大変って、うちの家臣を説得するのが大変だったよ。特に清家。一か月間毎日僕に嘆願書を送って来たくらいでね。いや、あれは辛い。』
青藍は苦笑した。


『でも、認めさせた。茶羅をどこぞの貴族に嫁がせて得る利益の埋め合わせは僕がした。というより、そんなことをしなくても、朽木の名は揺らがないと、僕が示した。だから、朽木家は一丸となって茶羅を送り出す。』


「正気じゃないわね。まぁでも、朽木家の家臣は、貴方をそれほど信頼しているということだわ。青藍様の力量があれば、政略結婚など必要ないと認めさせたのね。流石青藍様、という所かしら。」


『ふふ。うちの家臣を説得するのは骨が折れたよ。僕、一か月間死ぬほど働かされたからね。深冬が清家に可愛くお願いしてくれなかったら、忙しすぎて死んでいたよ。』
青藍はそう言って遠い目をする。


「あら、深冬様、流石ね。あの清家さんを動かすなんて。」
「あはは。そうだね。深冬ちゃんから、僕に厳しくするのやめて欲しいって、お願いしてよ。」
「いや、それは、白哉様の命なので、難しいかと・・・。」
深冬は困ったように京楽を見る。


「あれは朽木隊長のせいなの!?朽木家で寝ていると叩き出されるんだよ!?」
『あはは・・・。その辺で寝ているからです。うちの使用人は不審者を見つけたら門の外に捨ててしまうので。』
「え、僕、不審者!?あれだけ朽木家に通っているのに!?」
京楽は涙目になる。


『門から出入りしないのが悪いのです。許可証があるのですから使いましょうよ・・・。』
「だって、面倒なんだもの!顔パスでいいじゃない!何でダメ!?」


『姿を変えることなど、簡単ですからね。簡単に邸に他人を入れられては困るのです。あの安曇様や十五夜様だって、門から入ってこなければ、うちの使用人は追い出しますよ。』
「そう言えば、父様が二度ほど追い出されていたな・・・。」
深冬は思い出すように言う。


「本当に!?」
その言葉に京楽は目を丸くした。
「・・・流石朽木家ね。誰が相手でも容赦がない。」
「え、おれ、この人たちと関わって、大丈夫かな・・・。」

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