色彩
■ 37.伯父様

『「「・・・ふふ。」」』
応接室に入って扉を閉めた瞬間、青藍、深冬、京楽がくすくすと笑い出す。
「な、何を、笑っているのですか!?」
笑い出した三人に紫庵は首を傾げる。


「ぎこちなさすぎなのよ、貴方。」
そんな紫庵に、梨花は呆れ顔だ。
「だ、だってぇ・・・。伯父様は伯父様だもの。」
紫庵は泣きそうになりながら言う。


「すぐに涙目にならない!」
「うわ、ごめんなさい!」
梨花に叱られて紫庵は反射的に謝る。


「あーあ、面白い。これじゃ、あの子が君を捨てられないわけだよ。」
二人の様子に京楽は面白そうに言う。
「お、伯父様も、伯父様です!!護廷隊内では、近づかないって!!そういう、約束でした!!!」
笑う京楽に紫庵は抗議するように言う。


「まぁ、いいじゃないの。可愛い甥っこが苛められたと聞いて、様子を見ずにはいられないでしょ?それに、僕にも相談してくれない紫庵が悪い。僕に言ってくれれば八番隊に移隊も出来たのに。そもそも僕は八番隊においでって言ったのに、無視されるし。」
京楽は拗ねた顔をする。


「そ、それは、ですね・・・。決して無視をしたわけではない、のですが・・・。伯父様に、頼るわけには、いかなかったのです・・・。おれは、橙晴の、隣に、立ちたかったから。伯父様が頼りないとか、そういう、ことでは、ありません。」
拗ねた京楽におろおろとしながらも、紫庵ははっきりという。


「・・・じゃあ許す。でも、次からはちゃんと相談するんだよ。いいね?」
「はい。次何かあれば、伯父様に相談します!」
「うん。そうしてくれると僕も安心する。」
京楽はそう言って、大きく頷いた紫庵の頭を満足そうに撫でる。


『・・・ふふ。しかしまぁ、春水殿も隠し事がお上手ですねぇ。』
そんな二人を微笑ましげに見つめながら、青藍は言う。
「あはは。流石に青藍も気付かなかったでしょ?」
『えぇ。采湧殿が貴方を兄と言わなければ一生気付くことはなかったでしょう。』


「あら。あの子のせいでばれちゃったんだ。後で叱っておかなくちゃね。」
京楽は悪戯に笑う。
『ふふ。まさか、あの采湧殿が、本当に実在しているのか疑われている京楽家の三男、京楽一色だとは思いませんでした。あんなところに隠していたとは。道理でお顔をお見かけしないはずです。』


「あはは。隠していた訳じゃないけどね。長兄があれと折り合いが悪くてね。あの子、我が道を行く子でしょ?だから、一色を家に縛り付けるのは無駄だと早々に諦めた。それで、適当なところに送り込んだのさ。まぁ、それが久世家だったのだけれど。」
京楽はそう言って苦笑する。


「結果として久世家にはご迷惑をお掛けしただけだったみたいだね。まさか、久世家の御嬢さんが家を出ることになるとは・・・。」
『流石にそれは春水殿も予想外でしたか。』
「うん。それでも久世家は一色を預かってくれているのだけれど。」


「それは、伯父様が、久世家の後ろ盾になってくださっているからです。父がアレとはいえ、伯父様には大変お世話になって居ります。」
「いいんだよ。むしろ、こっちの方が、一色がお世話になってごめんっていうか・・・。」
京楽は困ったように言う。


「まぁでも、周防家が紫庵を拾ってくれるとは幸運だったね。」
「え、おれ、拾われたんです!?」
「え、違うの?」
「おれ、昨日、実花ちゃんと豪紀さん、それから蓮さんに売られたんです!!」
「そうね。それで私が安く買い取ったのよ。」


「あ、やっぱり、おれ、売られてた!?」
梨花の言葉に紫庵は落ち込む。
「あはは!なるほど。梨花ちゃんが買い取ったのね。まぁ、大事に使ってあげてね。」
「勿論ですわ。公には出来ないとしても、京楽家との繋がりが出来るのですから。」
「あら、打算的。流石梨花ちゃんだよね・・・。」


『ふふ。でも、大きな騒動になっているようですよ。多くの男性陣が涙を流していることでしょうね。』
「そうだな。久世もあれで、女性陣が数名涙を流しているのだ・・・。」
『「「「えぇ!?」」」』
深冬の言葉に、青藍、京楽、梨花、そして紫庵が目を丸くする。


「何故久世まで驚いているのだ・・・。何度か呼び出されているだろう。」
「だ、だって、あれは、罰ゲームか何かでしょう!?おれなんかに本気で告白する人なんて居ないよ!?」
「院生時代から鈍感な奴だ。どれだけ自分に自信がないのだ・・・。」
目を丸くして騒ぎ出す紫庵に、深冬は呆れた視線を向ける。

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