色彩
■ 34.日常の平穏を願う

「それに、これまでの青藍の話を聞いたらこの人の幸せがそんなに小さなものである理由が解るわよ。本当に、面倒事ばかり起こるんだから・・・。」
雪乃はげんなりしながら言う。


「そうですわ!十五夜様の糞爺に面倒事を押し付けられて、汚れ仕事まで引き受けているのだから。何が尸魂界の秩序と安寧のためよ。自分でやるべきだわ!!あの糞爺。今度会ったら天音様と共謀して追い返してやる・・・。自分の手抜かりを棚に上げて、深冬様にまで手間を掛けさせたらしいじゃない・・・。多少痛い目に遭って貰わなければ。」
唸るように言う実花に青藍は苦笑する。


「そうね。それだけじゃないわ。毎日のようにその身を狙われて、直接心臓を握られたこともあるのよ。危うく握り潰されるところだったんだから。」
「その前は首元に毒を塗りこんだ刃を突きつけられていたな。両手を拘束され、霊圧を封じられた状態で。霊王宮から狙われるってどういうことだよ・・・。」
三人の言葉にその場に居る者たちは戦慄する。


「もっと前は咲夜様が四十六室に拘束されて、それに伴って白哉様も軟禁状態。朽木家、漣家は刑軍の監視下に置かれて、身動きが取れない。」
「まさに絶体絶命よ。それなのに、朽木隊長は三日で咲夜さんを取り戻せと青藍に命じたのよ?咲夜さんを見捨てることも、朽木家を揺るがすことも許さないと。」


『あはは・・・。まぁ、それは、父上だからね・・・。』
「そうだとしても無茶振りにもほどがあるだろ。相手は四十六室だぞ。・・・それでどうにかして居場所を見つけたと思ったら、母親の箍が外れていると来た。そしてそれを止めることが出来たのはこいつだけ。」


「この青藍の馬鹿はこうして微笑んでいるけれど、他にも語りきれないほど可哀そうよ!これのどこが幸せなのよ!!日常の平穏を願うのは当たり前じゃない!それに巻き込まれる私たちだって、空が綺麗なだけで思わず泣きそうになるくらいなのよ!」
『あはは・・・。いつも巻き込んでごめん・・・。』
「馬鹿ね、青藍が謝る必要なんてないわよ!」


『あはは。・・・まぁ、僕のことは置いておくとして。君のやり方は誰が見ても間違っていると答えるだろう。君は自分が何をしたのかよく考えなさい。除籍されて死神としてここに居ることは出来ないが、君には君の守るべきものがまだあるはずだ。君は、柳内家の次期当主なのだから。君がそれを望んで居なくとも。』
そう言う青藍の瞳に映っている感情は同情である。


『次期当主がこんなところでへたり込んでいては、柳内家の者たちが可哀そうだ。君の背には、その双肩には、君以外の者たちの命運が乗っている。それを、自覚することだよ。上ばかり見ていると、足元が脆くなっていることに気が付かない。』
青藍はそう言うと執務室の扉の方へと歩き出す。
雪乃たちもそれに続いて歩き出した。


『あぁ、でも、君がそれを自覚したからと言って、橙晴を傷付けたことは許さないよ。僕個人としては、絶対に君を許すことはない。君の所業も許しはしない。それだけは、覚えておきなさい。』
青藍は一度立ち止まって鍵を開けながらそう言うと、扉を開いて執務室から出て行ったのだった。

[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -