色彩
■ 30.騒がしい


「・・・ごほん。今回の久世紫庵の件に関して、三番隊の上位席官は殆どがそれに気が付かないという失態を犯した。これは、明白な監督不行き届きである。」
元柳斎の重い声があたりに響く。


「よって、三番隊隊長鳳橋楼十郎、同じく副隊長吉良イヅルには、六か月の減俸を命じる。そして、それを利用した席官は官位剥奪。苛めなどという問題を起こした柳内という隊士は、除籍処分。久世紫庵を除くその他の隊士たちは一か月間内勤のみとする。謹んで書類仕事を引き受けよ。・・・以上。」
元柳斎はそう言ってくるりと背を向ける。


「ですが、それでは!!!隊長と副隊長の処分が重すぎます!」
「私どもにも同じだけの処罰を!!!責任は私たちにもあるはずです!!!」
背を向けた元柳斎に三番隊の席官たちがそう声を掛ける。
「皆、やめなさい。これは、もう決まったことだよ。」
去りゆく背中を追いかけようとする席官たちをイヅルが止める。


「でも!!それでは隊長たちだけが、責任を負うのと同じことです!!隊長副隊長がお忙しい分、私たちが隊をよく見なければなりませんでした!!」
「そうです!!!これは、私たちのミスです!!」
「それなのに、このような処分では、あまりにも・・・。」
そう言って彼らはイヅルに詰め寄る。


「・・・これは決定事項なんだよ。君たちは、総隊長が初めに言ったように、全員で官位を剥奪されたいのかい?うちの隊長だけでなく、浮竹隊長、京楽隊長、朽木隊長、そして、咲夜さんが総隊長を説得した意味を考えることだよ。・・・僕だって、君たちだからこの処分を受け入れるんだ。三番隊には君たちが必要だからね。」


「イヅルの言う通りさ。君たちがそうやって、僕らのためを思ってくれるのは嬉しいけれど、それは僕らも同じなのさ。だから君たちはこれを受け入れてくれないかな。そしてこれからも三番隊のために働いてくれると嬉しいんだけど・・・。」


「「「た、隊長!!!副隊長!!!」」」
席官たちはそう言って二人をもみくちゃにする。
「うわ!?ちょっと、痛い!痛いよ、李空!!他の皆も落ち着いて!」
「皆、いい子だねぇ。気分が乗ってきたから、僕が演奏を聞かせてあげよう。」
ローズはそう言ってバイオリンを取り出す。


「えぇ!?いや、駄目です!!隊長もこれから仕事です!!ちょっと、蓮!!!居るならこっちに来て!!!!早く隊長を捕獲して!!!」
もみくちゃにされながら、イヅルがそう叫ぶと、副官室の扉が開かれた。


出て来た蓮は、どことなく生き生きとしている。
その右手は死んでいるのかと思うほど血の気のない元七席の襟首を掴んでいる。
副官室から出ると蓮は元七席を放り投げるようにして執務室内に転がした。
そして埃を払うように軽く手を叩く。


「これ、片付けておいて。あと、これの席を移動しておいてもらえるかな。邪魔だから。」
清々しい笑顔で言い放った蓮に、言われた隊士たちは震えあがって、すぐに動き出す。
「・・・ふぅ。これでよし。・・・って、何をしているんです、副隊長?」
画面に映るもみくちゃにされたイヅルを見つけて、蓮は首を傾げる。


「あ!蓮!いいから、とりあえず、隊長を止めて!!!これ以上隊務を遅らせるわけにはいかないんだ!!!」
「ん・・・?あ!!隊長!?楽器は休憩時間だけだって言っているじゃないですか!!!駄目ですよ!?聞いてます!?」


「聞こえてないから早く来て!!演奏が始まったら一刻ほど止まらないよ!!ここは一番隊だから!!!」
「はい、副隊長!!一番隊ですね!!すぐに行きます!!!」
蓮はそう言うとあっという間に窓から出て行く。
その手に縄が握られていたことを見た隊士たちは顔を青くしている。


『・・・どうしてこうもそちらは騒がしいのか。ま、いいか。母上、そろそろ切りますよ・・・ん?居ない・・・?』
画面の中から咲夜が消えていることに気が付いて青藍は首を傾げる。


「咲夜姉さまなら先ほど白哉兄様が持ち帰ったぞ。」
『あら、ルキア姉さま?そちらにいらしたのですか?』
「ははは。咲夜姉さまに連れてこられたのだ。」
ルキアは困ったように笑う。


『あぁ、それは、申し訳ありません。お仕事の方は大丈夫なのですか?』
「それは問題ない。咲夜姉さまが今日の分は終わらせたからな。」
『さすが母上というか、何というか。それが裏目に出ていることが何度もあった気がしますが・・・。』
青藍は苦笑する。


「そうだな。それで、だな・・・。」
ルキアは言い難そうに青藍を見る。
『どうしました?』
「白哉兄様からの伝言だ。「仕事は二人に任せた。」とのことだが・・。」


『「・・・。」』
その伝言に青藍は思わず額に手を当てる。
橙晴もまたため息を吐いた。

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