色彩
■ 17.周防家次期当主


「・・・青藍、あまり咲夜を苛めてやるな。」
白哉はそう言って咲夜を隠すように抱き寄せる。
『父上も父上ですよねぇ。ここに居る者たちにも可愛い母上を隠すのですから。』
「当たり前だ。これを知るのは私だけでいい。」


「何と!?朽木隊長が、惚気た!?子どもが居る夫婦とは思えないぞ・・・。あぁ、でも、青藍さんは加賀美さんを膝の上に抱えているし、橙晴は雪乃さんに腕を回している・・・。その両親だから、これは納得するべきなのだろうか・・・?」
白哉の言葉にそれまで唖然と様子を見ていた紫庵はそんな言葉を零す。


『あはは。久世君、また心の声が漏れているよ。まぁ、その通りだけれども。』
「ふわ!?すみません!」
紫庵は飛び上がって蓮に隠れるようにして青藍を見る。
「・・・紫庵、どうして青藍にだけ過剰反応しているの。」
蓮は呆れたように言う。


「だ、だって、ですね、その、あれですよ。おれには、刺激が強すぎます!青藍さん、どうしてそんなに綺麗なんですか!?それなのに身長まで高いとか羨ましい!!天は二物を与えずというのは、嘘ですよね!?」
「あはは。そんなことないよ。青藍、深冬には弱いし。」


『蓮さーん。余計なことを吹き込まないでくださーい。』
「事実じゃない。・・・まぁ、あの顔のせいで苦労もしているのさ。君もそのうち慣れるよ。ね、深冬?」
「そうですね。慣れろ、久世。」
「加賀美さん、さっきからそればっかりだよ・・・。」


「朽木家と関わるには、慣れが重要なのだ。青藍と関わる場合は特に。」
深冬は遠い目をする。
「え・・・。だからその体勢を受け入れているの・・・?」
「・・・。」
恐る恐る聞いた紫庵に深冬は悟ったような視線を向ける。
その視線を受けて、紫庵は同情するように深冬を見返した。


「うわ。紫庵に同情されるとか、深冬、可哀そう。」
「そうね。深冬は流石だと思うわ。もし私が青藍の妻になったならその日のうちに実家に帰るわ。」
それを見ていた橙晴と雪乃は言う。
「お前ら、それ、深冬にも久世にも青藍にも失礼だぞ・・・。」
恋次は呟くようにそう言ったのだった。


それから三日後。
「ねぇ、青藍様?」
『何かな?』
青藍は梨花を連れて三番隊の隊舎に来ていた。


「何故私はここに連れてこられているのかしら?それも、こんな、豪華な着物を着せられて。」
梨花は胡散臭そうにその着物を見て、それから青藍に視線を戻した。
『あはは。それはお見合いだからだよ?』


「いや、それは聞きましたわ。相手が誰かも聞いているもの。」
『ふふ。まぁ、お見合いの前にちょっと一仕事をしてもらいたいなぁ、と。』
「一仕事?」
楽しげな青藍に梨花は首を傾げる。
『そう。・・・君は、自分に向けられる好意にそれほど鈍感ではないはずだよ。』


「・・・三番隊、ということは、あの七席ね?」
青藍の言葉から推測したのか、梨花は確信を持っていう。
『ご名答。・・・こっ酷く、あっさり、すっぱりと、切り捨ててもらえるかな。』
「私はこれからお見合いをしてその人と結婚するつもりなの、って?」


『そうそう。それから、苛めを利用するような人も嫌い、って言ってやってくれるかな。三番隊の皆に聞こえるように。』
そう言った青藍に、梨花はため息を吐く。
「それ、青藍様がおっしゃるの?そんなことを計画している時点で、苛めの主犯は青藍様になるわよ?」


『別に構わないさ。僕がどんな奴かなんて、僕をよく知る人だけが真実を知っていればいい。どうでもいい者たちに何と言われようと、僕は僕だしね。』
「・・・解ったわ。鬱陶しかったのも事実だし、この辺できっぱりと断ってやるわ。それから・・・私、このお見合い、頷くわよ。」
梨花は前を見据えながらそう言った。


『うん。そうだと思った。』
「正直、愛情がある訳ではないのだけれど、前から丁度いいと思っていたのよね。でも、お父様にどうやって認めさせるかが問題だったのよ。もちろん、その辺の準備も進めていたけれど。でも、その必要もなくなったわ。何しろ、青藍様のお勧めの貴族ですもの。下級貴族出身だからと言って、そう簡単に無下には出来ないわ。」
梨花はそう言って小さく口元に笑みを浮かべる。


『ふふ。流石梨花姫。いや、周防家次期当主、と言った方がいいかな。』
「どちらも同じことよ。私は周防梨花で、周防家の次期当主なのだから。」
『あら、強気。』
「そう思わなければ当主になんてなれないわよ。」


『まぁね。・・・でも、本当にそれでいいの?』
心配そうに言われて、梨花は逡巡する。
それから大きく頷いた。

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