色彩
■ 16.柳に雪折れなし

『あはは。流石蓮だよねぇ。さて、犯人が分かったところで、まぁ、柳内は潰すとして、七席はどうしようか。』
「潰す!?」


「そうですねぇ。とりあえず、梨花に盛大に振ってもらいましょう。それで仕事に戻れば、まぁ、その後の処遇を考えましょうか。」
「ねぇ、スルーしちゃうの!?潰すって何!?」
紫庵の言葉を皆は黙殺する。
黙殺されて紫庵は泣きそうになった。


「それが良いわね。でも、その前に梨花さまとお見合いをするのが先よ。お見合いをして、梨花さまが久世君をどう見るかね。見合いが成立すれば、久世君は周防家という後ろ盾が得られる。「周防家次期当主の婚約者」となるのだから。そのことで文句は言われるかもしれないけれど、手は出しにくくなるわ。」


「見合いを断ったらどうなるのだ?」
深冬は首を傾げる。
『断ったとしても、見合いを出来るだけの力があると見なされる。家の力は小さくても、個人の伝手がそれほど強いという認識をされるだろう。そして、皆がその伝手を調べる。すると・・・。』


「朽木家に繋がる。それも朽木家が手を貸すほどの強い繋がりがあると見る。」
『そう。だが、朽木家は簡単に動く相手ではない。だから、その朽木家から余程の信頼があるか、若しくはそれだけの才能があると見なされる。見合いが成立しなくても、多くの者が久世君を見直すだろう。でも・・・。』


「でも?」
『梨花姫は、断らないと思うよ。』
「・・・そうね。私もそう思うわ。」
青藍と雪乃はそう言って紫庵をまじまじと見つめる。
「な、何ですか・・・?」


『「柳に雪折れ無し。」』
「え・・・?」


『柔軟な者は剛直な者よりも、よく物事に耐えるということのたとえだよ。君は一見弱々しいが、苛めをものともせずにこれまで一人で耐えてきた。机と椅子を放り出されたら、普通は心が折れる。ましてやそれは一度ではないのだから。それなのに、仕事を放りだすこともせずに、自分で場所を見つけて、何とか死神として働いている。』


「はぁ・・・。まぁ、そうですが。」
紫庵はそれが何だという風に首を傾げる。


「普通なら死神を辞めるわよ。そんなことをする死神が居るとは、思わなかったでしょう?霊術院で夢見た死神はそう言う姿ではなかったはずよ。流魂街の者ならば、死神を恨む者もあるでしょうけど、久世君は一応貴族なのだから。瀞霊廷内に住んでいる者を死神は無下にしたりはしないもの。」
「それ、は、確かに、そうです。」


「どんな場所でも適応するというのは、才能だ。君は多分、流魂街に放り出されても生きていくことが出来るのだろうなぁ。白哉では、それは出来ないだろう。」
「そうだろうな。」
咲夜の言葉に白哉は頷く。


『あはは。父上、お金の計算出来ませんものね。』
「出来ないわけではない。する必要がないのだ。」
「さすが父上ですよねぇ。」
「・・・笑っているけど、貴方たちも大概そうよ。」
堂々と言い放った白哉を苦笑しながら見つめる青藍と橙晴に雪乃は呆れたように言う。


「そうですね。それに欲しいと言っていないのに、欲しいものを持ってくるのです。」
「そうなのよねぇ。一体、どこで監視をされているのやら。」
『あはは。そんなことはしていないよ?僕が深冬をよく見ているだけで。』
「僕だって、雪乃をよく見ているだけだよ?」
「・・・嘘くさいわね。」


『あはは。まぁ、その辺は知らない方がいいさ。朽木家の情報網には色々と伝手があるようだからね。』
「邸に二人きりの時以外は、基本的に見られていると思うよ。そうですよね、父上?」
「まぁ、そうだな。」


「「「な!?」」」
頷いた白哉に、咲夜、雪乃、深冬は目を見開く。
「だ、そ、それは、どういう、事だ!?隊主室も!?」
咲夜は焦ったように白哉に詰め寄る。


「そうだろうな。」
「何!?で、では、君は、それを知っていながら、あんな・・・。」
咲夜はそこまで言って両手で顔を覆う。
『あらら?父上、何をしたのです?』
「少し咲夜を甘やかしただけだ。」


『なるほど。だから母上は顔を隠しておられるのですね。』
「違うぞ!?私は、甘やかされてなど・・・。」
『じゃあ、母上が甘えたんですか。相変わらずですねぇ。母上ったら、かわいー。』
「!!!???」
焦ったような咲夜に、青藍は生温かい視線を送る。
そんな視線を向けられて、咲夜は耳まで赤くなった。

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