色彩
■ 14.懐かしい


『・・・で、外で聞き耳を立てている五人も、そろそろ入ってきては?』
青藍がそう言うと勢いよく扉が開けられた。
「こら、白哉、離せ!!!私が今すぐに、制裁を加えてやる!!」
「落ち着け。相手が誰かもわからずに、どうやって制裁を加えるのだ、馬鹿者。」


「そんなの、私が探し出してやる!!」
「三番隊を壊滅させる気か。」
ジタバタと暴れる咲夜を白哉が腰に手を回して引き留めている。


「珍しく橙晴が怒っていると思ったら、何か面白そうな話をしているようね。」
「そうですね。久世も大変だったのだな。いや、それは昔からか・・・。」
「あー、俺は聞くつもりはなかったんだけどよ・・・。巻き込まれたっつーか・・・。」


白哉が咲夜を引き摺るようにして部屋の中に押し込んで、それに続いて雪乃、深冬、恋次が入ってくる。
ぞろぞろと入ってきた面々に紫庵は固まった。


「・・・逃げるな、紫庵。」
状況を理解した紫庵は思わず逃げ出そうとするが、橙晴がその腕をがっちりと捕まえた。
「いや、離して!!!おれ、死ぬ!!!死んじゃう!!!!」
ジタバタと抵抗するも、橙晴は離さない。


「・・・君は僕の家族と上司を何だと思っているの。」
「いや、だって、くち、朽木、隊長!!それに、その奥さん!!それから、橙晴の奥さん!!!阿散井副隊長!か、加賀美さん、たす、助けて・・・。」


「・・・慣れろ。そこに居ればそのうち慣れる。」
「酷い!!!投げやり!!!嫌だぁ・・・。」
「五月蝿いなぁ。騒がないでくれる?他の隊士たちは仕事中なんだから。」
橙晴はそう言って紫庵の口を塞ぐ。


「んぐ!?」
紫庵は苦しげだが、橙晴に容赦はない。
『まぁ、皆さん、お座りください。・・・父上、母上をちゃんと捕まえておいてください。三番隊を壊滅させるわけにはいきません。』


「解っている。・・・咲夜、そんな顔をするな。良いから座れ。」
不満げに白哉を見つめる咲夜を、先に座った白哉が引き寄せる。
納得いかない顔をしながらも、咲夜は腕を引かれるままに白哉の隣に座った。
逃げ出さないように白哉は咲夜の腰に腕を回す。


「雪乃もおいで。あ、そうそう。これが、僕の同期の久世紫庵。三番隊だよ。」
「そう。初めまして。朽木雪乃よ。よろしく。」
「ん、ん!!!」
雪乃は橙晴の隣に座りながら、紫庵に声を掛ける。
紫庵は苦しげにただ頷いた。


「・・・橙晴、そろそろ久世が死ぬぞ。」
「あ、そう?」
深冬が呆れたように言うと、橙晴は紫庵の口元から手を離す。


「・・・ふわ!?・・・げほ!ひ、酷いよ、橙晴・・・。」
解放された紫庵は咳き込みながら橙晴を睨む。
「五月蝿いのが悪い。」
「だ、橙晴が、苛める!!おれを一番苛めているの、橙晴だと思うよ!?」


「橙晴のそれは愛情表現だ。諦めろ、久世。橙晴はお気に入りほど苛めるのだ。」
「そんな!?どうにかして!!!お願いだよ、加賀美さん!!!」
紫庵はそう言って深冬に詰め寄る。
「無理だな。」
深冬の言葉に紫庵は涙目になる。


『あはは。いいから、深冬から離れようか。ね、久世君?』
にっこり。
青藍の微笑みを見て、紫庵は悲鳴を上げる。
「ひゃい!!ご、ごめ、ごめんなさーい!!!」


それ以上深冬に近付いたら解っているよね?
微笑む青藍の瞳がそう語っているのを見て取って、紫庵は慌てて深冬から距離を取る。
そのまま壁にぶつかりそうになったところを恋次が受け止めた。


「・・・おう。何か、苦労しそうなのが、仲間入りみたいだな。」
「うわ!?あ、あばばばば!?」
恋次を見上げて紫庵は口をパクパクとさせる。
「まぁ、落ち着けよ。お前の敵じゃねぇから。」


「ご、ごめんなさいいいいい!」
「落ち着けって言ってんだろ。良いから座れ。蓮、これを座らせろ。」
「あはは。はーい。ほら、紫庵、僕の隣においで。他の人の隣よりは安全だから。」
「う、うぅ。れ、蓮さん・・・。」


「・・・相変わらずのようだな。」
「うん。相変わらずだよね。騒がしくて仕方がない。」
「その割には、嬉しそうだが。」
「五月蝿いよ、深冬。君だって実は嬉しいでしょ?」


「まぁ、そうだな。懐かしい鬱陶しさだ。」
「あはは。辛辣。」
橙晴と深冬は苦笑する。

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