色彩
■ 6.緊張感はない

『よし。では、行こうか。・・・鳴神。』
「吹き荒べ、風伯。」
『一の裁き、春雷!!!』
「一之陣、風牙!!!」


二人の斬撃が縺れ合って、互いの力を増幅させながら、玄奘を頭上から襲う。
しかし、それは片手で簡単に止められた。
玄奘の体は鋼のように鈍く輝いている。


『あ、やっぱり駄目か。』
「そのようですね。・・・玄奘の宝具は一体何だったのです?」
『それがねぇ・・・。』
青藍は困ったような表情をする。


「何か問題が?」
『心を顕わにする鏡、だったそうだよ。つまり、あれは玄奘の心そのもの。ついでに、こちらの心も顕わになるとか。・・・どうしようか。橙晴は雪乃への煩悩だけだろうけど、僕、他にも色々とアレだからなぁ。』
「失礼ですね。僕だって雪乃への煩悩だけで出来ているわけではありません!」
『あ、そう?』


「お前ら、余裕だな。まぁ、焦る必要もないが。」
二人の言い合いに、冬獅郎は呆れたように言う。
「しかし、心を映すとは厄介だな。」
「橙晴はともかくとして、青藍の心が顕わになるのは問題な気が。つか、見たくねぇ。」
「そうだな。橙晴はともかく、青藍は、色々とアレだからな。私も遠慮したい。」


「ちょっと!?二人とも、僕の扱い酷くないですか!?」
『え、僕も貶されているよね・・・?父上、僕のことアレって言っているよ・・・?』
「・・・まぁ、それはいいとして。咲夜さんは来るのか?」
『「スルーした!?」』


「来るだろうな。その内。」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫だろう。あれは今、眩しいくらいだ。」
「へぇ?どうやら青藍の言っていたことは本当らしいな。」


『え、僕、嘘なんか言っていませんよ?』
「お前は信用ならない。」
『酷い!』
しれっとそう言われて、青藍は涙目になる。
「さっきのお前を見て、信用すると思ってんのか?」
冬獅郎は呆れたように青藍を見る。


『あれは、演技です!どうです?名演技でしたでしょう?』
「嘘つけ。八割本気だっただろうが。」
『あら鋭い。』
「馬鹿にしてんのか、てめぇ・・・。」
冬獅郎は青筋を立てながら言う。


『いえいえ。感心しているのです。まぁ、遊ぶのはこのくらいにしましょうか。・・・鏡というのは光を反射するものですよね?ということは、光をなくせばいいのでは?』
真面目な顔に戻って青藍は言う。
「そうだな。だが、完全に光を遮断すればこちらも見えなくなるぞ。」


『じゃあ、もう、母上に黒棺でも放ってもらいます?とりあえず鏡が割れればいいんですよね。』
「おい、お前、突然面倒臭くなるなよ・・・。」
「確かにそれはいい方法だ。」
「そうですね。鏡に映らないように割ってしまえばいいのです。」


「・・・はぁ。それを実行する気なんだな、お前ら。じゃ、俺はとりあえず雲でも呼ぶか。青空の下で戦うよりはましだろう。」
『あ、冬獅郎さんの斬魄刀で光を乱反射させるという手もありますよ。それから・・・。』


「それから?」
『あの方の心が満たされれば暴走は収まるはず。ということは、冬獅郎さんが十五夜様の虚像でも作って、ボロボロにしてもらえばいいのでは。』
「「「確かに。」」」


『まぁ、本人を召喚することも出来ますけどね。でも流石にあの方に死ねという訳にもいかないので。この件についてこちらに丸投げするという暴挙ともいえる判断をするような糞爺ではありますが。』


「そうですね。糞爺ではありますが、死なれては困ります。」
「そうだな。糞爺だが、あれでも居ないと面倒なのだ。居ると二倍面倒だが。」
『「本当にそうですね。」』


「お前ら、流石だな・・・。まぁ、良い。青藍は雲を呼んでおけ。俺は漣十五夜の虚像を作ってみる。橙晴、ちょっと、手を貸せ。お前の記憶の中にある漣十五夜を再現する。」
冬獅郎はそう言って橙晴の額に手を当てる。


『了解です。』
青藍は言われた通りに霊圧を上げて雲を集め始める。
「何かむずむずします。」
「我慢しろ。姿を強く思い浮かべろ。そうすれば俺にも見えるから。」
「冬獅郎さん、こんな術も知っておられるのですねぇ。」


「黙れ。集中しろよ、お前。緊張感ねぇな。朽木を見習え。」
「父上も緊張はしていませんよ?」
「五月蝿い!そういうことじゃねぇんだよ。どうでもいいから静かにしてろ。」
「はーい。」
二人がそんなことをしている間に、黒雲があたりを埋め尽くした。

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