色彩
■ 5.宝具の暴走


「・・・青藍様。そのようなお仕事は私が。お召し物が汚れてしまいます。」
鳴神を抜いた青藍に、睦月は静かにそう声を掛ける。
『構わない。もとより穢れている。これは私の仕事だ。』
「ですが・・・。」


『離れろ、睦月。これの中に何が潜んでいるか、解らない。これを斬るのは簡単だが、これの中に居るものを斬るのは骨が折れる。これでも霊王宮に居たお方だからね。』
言われて睦月は大人しく下がる。


・・・一体、その身の内に何を潜ませている?
護衛には白哉さんと日番谷が来ると言っていた。
隊長格が三人。
それほどのものが、この、目の前の男の中に潜んでいるというのか・・・?


・・・というより、青藍、お前、首を切り落とす気か?
俺、そんなものを間近で見せられるのか・・・?
出来ることなら、それは勘弁したいんだが。
後ろには橙晴たちが居るんだぞ?


つか、深冬にそんな姿を見せていいのか、お前は。
今すぐ毒針でも投げつければ見なくても済むだろうか。
睦月がそう思っている間に、鳴神が閃いた。
その刹那。


ドン!!!!
玄奘の体から異様な霊圧が発せられる。
霊圧が風を呼び、建物の屋根を吹き飛ばした。


「青藍!無事か!?」
睦月がそう叫ぶと後ろから声が聞こえてくる。
『大丈夫。ちゃんと避けたよ。・・・しかしまぁ、大変なことになりましたねぇ、父上?』


「そうだな。予想通り大変なことになりそうだ。」
「白哉さん!?いつの間に。」
「俺も居るぞ。」
「日番谷!」


『あはは。本当は最初から居たのさ。隠れてもらっていただけで。』
「・・・お前、そういうことは教えておけよ。」
『ふふ。機密事項だったから。さて、ここを出ましょうかね。外に出た方が良さそうだ。睦月はそこに居て。君に怪我をされてはこちらに何かあった時に困る。』
青藍たちが空中に飛び上がると、玄奘もそれを追うように飛び上がってくる。


『あぁ、やっぱり、虚とか呼べる感じですねぇ。』
空を見上げながら青藍はのんびりという。
「そうだな。まぁ、その辺は松本たちが相手するだろ。副隊長数人を連れてきておいた。」


『流石冬獅郎さん。・・・砕蜂隊長はどうしました?』
「浮竹たちと共に玄奘と関わっていた貴族を洗い出している。大方片付いたようだが、全員の捕縛にはもう少し時間がかかるようだ。」


『そうですか。では、僕らであれを適当に止めるしかないということですかね。・・・しかしまぁ、王族から賜った品が暴走すると、こうなるのですねぇ。せめて没収してから追い出してほしい・・・。』
「そうだな。十五夜の爺に文句を言っておけ。」


『えぇ。まったく、糞爺ですよね。霊王宮は手を出さないとか言っちゃって。結局、こちらに丸投げってことですよね?そりゃあ、思う所もありますよ。』
「あぁ。本当に糞爺だ。」
「・・・お前ら、相変わらずだよな。」


そんな会話をしているうちに、玄奘の体は元の原型を止めないほどに変化していく。
禍々しい霊圧があたりに満ちて、それに吸い寄せられるように虚が集まり始める。


「隊長!」
「日番谷隊長!」
そんな声とともに、恋次と乱菊が姿を見せる。
「恋次。」
「松本か。」


「副隊長の配置、完了いたしました。それから・・・更木隊がこちらに向かっているようです。こちらの異変を察知したようで。」
「そうか。まぁ、更木隊は好きにさせて置け。行け、阿散井、松本。虚を殲滅しろ。」
「「は!」」
二人はそう言って姿を消す。


『さて、後は橙晴の同期たちをどうするかですねぇ。結界を張っているとは言っても、この霊圧の中に放り出すわけにもいきませんし・・・。』
「儂が居る。」
『!?』
良く響く声が聞こえてきて、青藍は驚いたようにそちらを振り向く。
見ると、橙晴が張った結界の前に、元柳斎が立っていた。


『・・・あら、こちらに足を運んでいただいたようで。それでは、お願いいたします。橙晴!君もこちらにおいで。』
「はいはい。山本の爺が居れば、皆も安心でしょう。・・・紫庵、君は深冬を抑えていて。急に深冬に飛びだされると兄様が危なくなるかもしれないから。」
橙晴はそう耳打ちをして、結界から出ていく。


「わかった!気を付けてね。」
「君に心配される謂れはないよ。」
「えぇ、酷い・・・。」


『あはは。橙晴、酷いなぁ。彼、泣きそうだよ?』
「いいんですよ。あれはいつもああなんです。・・・それでも、深冬の盾ぐらいにはなります。安心していいですよ。」
『そう。それは心強いね。』


「ですから、兄様はあちらを気にする必要はありません。山本の爺も居るのですから。」
『うん。・・・行くよ、橙晴。とりあえず、僕らで遠距離から攻撃してみよう。それでいいですね、父上、冬獅郎さん?』
「「あぁ。」」
青藍の問いに二人は頷く。

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