色彩
■ 4.護廷隊命


『私たちを使っても、赤い瞳の一族は、そう簡単には動きますまい。私も、深冬も、あの一族から見れば、異端でしかない。お蔭で酷い目にばかり遭うのですが。』
「それでもお前は愛し子だろう。愛し子のためならば、あれらは動く。」
『まさか。あれらはそれほど優しいものではありません。世の理とは決して優しいものなどではないのですから。』


「それでも、あれらは世の理のためならば動く。お前は既に理の中。」
『・・・まだ解って頂けないようですね。はっきりといいましょうか?貴方は、もう、二度と、霊王宮には帰ることが出来ない。貴方の配下は続々と捕えられております。』
「何・・・?」


『申し訳ありません。私は、貴方が私と連絡を取る前から調べさせていただいておりました。知っていたのですよ、貴方の存在を「最初から」ね。』
「!?」
青藍の言葉に、玄奘は目を見開く。


『霊王宮から密命がございまして。命を下したのは、言うまでもありません。』
「十五夜・・・。」
玄奘は唸るように言う。


『えぇ。貴方は気に入らなかった。こちらの貴族を霊王宮に迎え入れることが。それ故、十五夜様が霊王宮へとお入りになられたとき、貴方はその地位を使って、あの方を貶めようとしました。ですが、あの方は最初からそれを知っておられた。知っておられた故に、霊王宮へと入る前から、貴方を調べ尽くした。』


「あり得ない。霊王宮の情報はこちらからでは調べられないはずだ。」
『そうですね。ですから、霊王宮から、教えて頂いたそうですよ。・・・響鬼、という名に覚えがあるでしょう。貴方には決して傅かなかった少年の姿のままの秘書官。他より地位が高く、何より霊王様がお傍に置いていたために、貴方は彼を蔑ろにすることも出来なかった。・・・彼は現在、十五夜様の秘書官を務めておいでです。』


「・・・は、ははは!!!なるほどなぁ。道理で手際が良いはずだ。」
玄奘は可笑しそうに笑う。


『その上、貴方が蹴落とした者たちが、漣家に助けを求めてやってきたようでして。世の理から外れる権力の濫用はいけませんねぇ。霊王宮というのは世の理そのものであるというのに。霊王様はそれを見ておられました。貴方に何も手を出さなかったのは、十五夜様がいずれそれを正すことを見通しておられたからです。』


「なるほど。では、今回のこともあの方は見通しておられるということか。これでは分が悪い。大人しく捕まるほうがいいだろう。」
『・・・何か、勘違いをしておいででは?』
青藍はそう言いながら、鳴神を抜いた。


冷たいきらめきが玄奘の瞳に映る。
彼は驚いて青藍の瞳を見つめた。
その瞳は冷たい。


『霊王宮からの命は、貴方を調査しろというものだけです。ですが、私は今、護廷隊命で動いております。私が今ここに居るのは、別の理由です。』
「何・・・?」


『私の仕事は「護廷」です。貴方がこちらに追放されてから、どれほどの命を奪ったか、知らぬ私ではございません。こちらへ降りてすぐに、貴方は幼子を殺しました。何の罪もない幼子を、服の裾を掴んだからと言って。その後も数えきれないほど、貴方は自らの自尊心のために殺した。流魂街の民を虫けらのように扱い、更には、霊王宮の者であると偽って、貴族に取り込み、好きなように動かしました。気に入らない者は、切り捨てたそうですね。この数百年の間の当主の不審死は殆どが貴方の仕業です。これを見逃す護廷ではありません。当然、朽木家当主としても放置するわけには参りません。』
静かに怒りを滲ませながら、青藍は言う。


『大人しく捕まる?馬鹿なことをおっしゃらないでください。今回、私は、貴方を殺しに来たのです。秩序を乱す者を裁きに。こちらの法に従って。』
そういうや否や、青藍の刃がひらめく。
玄奘が反応する間もなく、その刃は首元を掠っていき、玄奘の皮膚を焼いた。


「!!!」
『お分かりですか、玄奘様?』
刃のような冷たい表情でそう言った青藍に、玄奘は息を呑む。
首元から血が滲み、それを抑えるように手を持っていく。


『本来ならば、生け捕りにして霊王宮に突き返すのが礼儀ではありますが、貴方の調査に関するご報告をした際に、霊王宮より春日井玄奘はすでに我が同胞に非ず、という回答を頂きまして。要するに、貴方は見限られたのです。そして、貴方は数々の悪事を働いている。これを重く見た四十六室は、春日井玄奘の処刑を決定しました。護廷隊にその命が下されたのです。』

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