色彩
■ 2.例の件

『・・・二人とも、酷いなぁ。』
突然そんな声が聞こえてきて、一同は騒然とする。
深冬と睦月は恐る恐る後ろを振り向いた。


『やぁ。・・・おや、そこに居るのは三番隊の久世君だ。昨日ぶり?』
「え、えぇ。そう、ですね・・・。昨日は三番隊でお昼寝をされておりましたから・・・。」


『そんなに畏まらなくてもいいのに。あぁ、そうか。君、橙晴の同期だっけ。入隊してからは君に避けられて、橙晴、地味に落ち込んでいたけど。橙晴ったら、可愛いよねぇ。』
青藍は楽しげに言う。
「兄様、余計なことは言わなくて結構です。」
『おや、失礼。』


「・・・で、何故ここに?それにその恰好は・・・。」
「・・・刑軍装束、だな?」
深冬の言葉に青藍は楽しげに頷く。


『こう見えて僕、お仕事中なのさ。』
「お仕事中・・・なのに、そんな恰好で、こんなところに顔を見せていいのですか?」
楽しげな青藍を橙晴は訝しげに見つめる。
『いいんじゃない?実際動くのは僕じゃないからね。』


「・・・その割には、血のにおいがするぞ。」
睦月はそう言って微かに眉を寄せる。
『一緒に行動しているのは隠密機動だからね。血の匂いが移ったかな。彼らは想像以上に血腥い。まぁ、ここへ来るまでに虚を二、三捌いてきたから、そのせいもあるかも。』


捌いて・・・?
青藍の言葉に皆が内心で首を傾げるが、深くは突っ込まない方がいいだろうと、誰もそこに触れようとはしない。
そこへ、影が現れた。


『おや、来たようだね。・・・裏挺隊ですね。準備のほうは?』
「六番隊第三席、朽木青藍様。指示通り、配置が完了いたしました。」
跪いて、青藍にそう報告する。
『そうですか。・・・では、隊長方に連絡をしなければ。』
「は。すぐに。」
裏挺隊の者はそう言って去ろうとする。


『あぁ、いいよ。僕がやる。その方が速いでしょ。』
「え・・・?」
『まぁ、見ていなさい。・・・うん。とりあえず、一番隊舎に繋げばいいかな。』
霊圧を探った青藍はそう言って構える。


『・・・縛道の八十七、天挺空羅!・・・繋がった。やっぱり何人か居ないなぁ。ま、仕方がないか。君は下がっていいよ。後は刑軍の仕事だ。』
青藍に言われて頷くと、裏挺隊の者は姿を消した。


『・・・さて、隊長の皆様、聞こえておられるでしょうか。十一、十二番隊は不参加のようですね。一体どちらにいらっしゃるのやら。まぁ、いいでしょう。・・・例の件、準備が整いましてございます。砕蜂隊長、出陣のご準備を。刑軍の配置は完了しておりますので、そのままお使いくださいますよう。浮竹、京楽両隊長もお手伝いをお願いします。朽木、日番谷両隊長は、「朽木家当主」の「護衛」をお願いいたします。他の皆様は、予定通りに。こちらは三分後に接触いたします。では、私はこれにて。』
青藍はそう言って通信を終える。
そして唖然としている一同を見て、苦笑した。


『騒がしくてごめんね。』
言いながら青藍は刑軍装束を脱ぎ始める。
その下からは貴族の正装が現れた。
「青藍、一体、何をしているのだ・・・?」


『あはは。まぁ、すぐに解る。僕は、六番隊第三席兼朽木家当主だから、何かと面倒な役割があるのさ。・・・おや、いらっしゃったようですね。橙晴、私が出たら、この部屋に結界を張っておきなさい。今張っている結界は一度解くからね。久世君もお手伝いを頼むよ。深冬は結界の中で姿を消していなさい。呼ぶまで出てきてはならないよ。』
青藍は深冬を真っ直ぐに見つめながら言う。


「何故ですか?」
『君が、私の妻だから。』
「でも、私は!私も、死神、です。」
青藍を見つめ返しながら、深冬ははっきりという。


『・・・相手が欲しいのは、君なのさ。だから、隠れていて。』
青藍は言いながら深冬の頬を撫でる。
「嘘。青藍様も欲しいはず。むしろ、青藍様の方が危ないはずです。」
『あはは。流石に鋭いなぁ。まぁ、そうなのだけれど。・・・大丈夫。無茶はしないと約束しよう。父上と冬獅郎さんもこちらへ来るからね。』


「本当に?」
『あぁ。本当に。あの方々が護衛なのだから、私は無茶をする必要がないだろう?だからここに居てくれ。』
「・・・解りました。」
『うん。・・・橙晴、頼んだよ。あ、そうそう。これ、風伯ね。』
青藍はそう言って何処からか風伯を取り出して橙晴に投げつける。

[ prev / next ]
top
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -