色彩
■ 1.橙晴と紫庵

「・・・なぁ、橙晴。」
「ん?どうしたの、深冬?」
「・・・何故、私はここに居るのだ?それに、睦月まで。」
深冬は戸惑ったように睦月を見る。


「それは俺が聞きたい・・・。」
睦月は目の前の状況に遠い目をする。
「それは、同窓会だからじゃないかな。」
橙晴はけろりとそう言って、目の前の料理に手を伸ばす。
周りには同期たちが集まっているのだが、素知らぬ顔だ。


「じゃあ、俺は、いらないと思うぞ・・・。」
「やだなぁ、睦月。君は僕らの先生じゃないか。ここに居ても問題ないさ。」
「そうじゃねぇだろ。それなら担任でも呼べよ・・・。何故俺・・・。」


「・・・私、は、帰っても、いいか?」
周りから向けられる好奇の視線に耐えかねたのか、深冬はそう言って逃げようとする。
「駄目だよ、深冬。深冬が居なくなったら、僕、友達居ないもの。」
「嘘を吐くな。さっきから隣に居るのは次席だった久世紫庵だ。」
深冬は橙晴の隣で小さくなって居る人物に目を向ける。


「よう、久世。元気か?」
睦月は気安く声を掛けた。
「げ、元気です・・・。」
「あぁ、そうだろうね。君は元気だろうさ。僕から逃げ回るくらいには。」
小さく答えた紫庵に、橙晴はじろりと目を向ける。


「ご、ごめんってば!だって、橙晴のそばに居ると、先輩に、恨まれる・・・。」
泣きそうになりながら答える紫庵に橙晴はため息を吐いた。
「今更でしょ。院生時代だって散々苛められていたじゃない、君。ねぇ、睦月?」
「・・・まぁ、そうだな。よく医務室に避難してきたな、お前ら。それは深冬もだが。」
睦月はそう言ってチラリと深冬を見る。


「そ、それは、だな・・・。橙晴が、朽木家の者だとばれたからだ・・・。」
「そ、そうです。おれ、は、その上、加賀美さんも、上流貴族、なので・・・どうしたって、恨まれます!おれんち、一応貴族ですけど、瀞霊廷内に住めるだけで、ほぼ一般人です!それでなくても、橙晴が朽木家の者だとばれる前から苛められていたのに・・・。」
機嫌の悪そうな橙晴に怯えながら、深冬と紫庵は言い訳をするように言う。


「・・・へぇ?だから何?」
「つまり、だね、橙晴には、手を出せないから、おれに、被害がくる・・・。加賀美さんは、ほとんど、教室に、居ないし・・・。途中までクラスも違ったし・・・。」


「ふぅん?僕のせいで苛められたって言いたい訳?」
「・・・うん。そう。」
「お前、そこは否定しておいた方がいい気がするぞ・・・。」


「だから、わざわざ、ずっと、一緒に居たのに?何の相談もなしに僕から逃げ回って?その上、僕に怯えているわけだ?・・・寂しいなぁ。紫庵は僕をその程度だと思っているわけか。酷いなぁ。」
ちらちらと紫庵に視線を向けながら、橙晴は厭味ったらしく言う。


「違うよ!?それは、違う!!橙晴は、ちゃんと、おれの、友達だよ!?」
「・・・じゃあ、相談くらいしてよ。僕と雪乃の祝言にだって呼んだのにさ。手紙と祝いの品だけ寄越して紫庵は来ないし。薄情者。」
橙晴は拗ねたように言う。


「ご、ごめん。でも、おれには、敷居が高い・・・。」
「馬鹿じゃないの?この僕が呼んでいるんだから、そんな訳ないでしょ。兄様の友達なんか、流魂街出身だけどお祝いに来てくれたよ。僕らと関わるだけで、色々と面倒なことになっているけど、それでも友人でいてくれている。彼等だって色々と風当たりが強いよ。そんなの気にならないくらい兄様に巻き込まれているだけで。」
そう言って自分を見つめる瞳が、少し傷ついているようで、紫庵はさらに小さくなる。


「ご、ごめん・・・。橙晴が嫌いとかじゃ、ないんだよ・・・。でも、おれ、自信がなくて・・・。おれなんかが、橙晴の隣に居ていいのかなって、思ったら、怖く、なって。」
そんな紫庵に橙晴は深いため息を吐く。


「馬鹿にしないでくれる?僕は、自分で君を隣に置いているの。君を、この僕が、選んだの。それで、紫庵も、僕の隣に居ることを選んだんじゃないの?そこに、何か問題ある?僕はね、簡単に名前を呼ばせたりしないの。解るでしょ?」


「うん・・・。橙晴、おれ以外の同期で名前を呼び捨てにさせているの、加賀美さんだけだものね。」
「それが分かっていて、何で、そう思うかなぁ。本当に馬鹿!だから、ずっと次席なんだよ。そんなんじゃ一生僕に勝てないんだから!」
橙晴はそう言って頬を膨らませる。


「うん。そうだね。ごめんね、橙晴。」
そう言いながら紫庵は小さく笑う。
「解ったら、僕を避けるようなことはやめてくれる?」
「うん。逃げないよ。だから、そんなに拗ねないで、橙晴。」


「拗ねてない!!」
橙晴はそう言ってそっぽを向く。
それを見た紫庵は苦笑した。


「・・・なんだ。橙晴は寂しかったのか。」
「そうみたいだな。素直じゃない奴。」
「五月蝿い!そういうこと言っていると、兄様呼んじゃうんだから!」


「「!?」」
「いや、橙晴、それは、駄目だろう・・・。嵐を呼ぶ気か・・・。」
「あぁ・・・。頼む、それはやめてくれ・・・。」

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