色彩
■ 44.戦慄

「伺ったことがございます。確か、尸魂界の創生に関わった一族が、赤い瞳を持っていたと・・・。」
『流石によく御存じですね。そういうお話もございます。』
「ですが、あの一族は霊王様を崇め、霊王宮に仕える一族にございます。」


「では、まさか・・・。」
貴族たちは微笑みを崩さない青藍に驚きの視線を向ける。
『ふふ。・・・えぇ。お気づきの方もあるようですが、あの方、安曇様は、霊王宮の方にございます。』


「「「「!!!!!!」」」」
驚きを隠せない様子の貴族たちに、青藍は笑みを深める。
『当然、私と深冬を襲った者たちも霊王宮の方にございます。・・・本来ならば、皆様にお話しするべきことではないのですが、深冬の素性を調べるために朽木邸と加賀美邸に良からぬ輩を忍ばせる方が居りまして・・・。大変困っているのです。』
青藍はそう言ってため息を吐く。
彼の言葉に一部の者は気まずげな表情をした。


『ですので、皆様にお話ししてしまおうかと。もちろん、安曇様の許可は頂いておりますが。』
にこにこという青藍に、周りの者たちは唖然とするしかない。
「・・・で、では、深冬様は・・・。」


『えぇ。霊王宮にお勤めされている安曇様の子、ということです。そしてその安曇様の一族は尸魂界の創生に関わっておられます。尸魂界で最も古い由緒正しい一族。その上、安曇様はその一族の長であるのですから、深冬を朽木家に迎えることに、何の不足がございましょうか?』


にっこり。
その笑みが恐ろしいと感じたものは少なくない。
元から知っていたのだ。
それを知った上で、それを周りに隠して自らの手の中にしまい込んだ。


今、それを話したのは、それがすでに手の中にあるということを知らしめるため。
そして、手を出せば容赦はしないという牽制と忠告である。
皆がそれを感じ取り、表情を変えることはないにしろ、背筋をぞっとさせた。


「・・・なるほど。面白い話をしているようだな、青藍殿?」
そこへ豪紀が実花を伴って姿を見せた。
「相変わらず、怖いお方。」
実花は呆れたように言う。


『ふふ。そんなことはないよ?豪紀殿もご存知だろう?』
楽しげに言う青藍に、豪紀は内心で呆れる。
そして頷いた。


「まぁ、そうだな。父から、深冬の話は聞いていた。しかし、何故今その話を?」
『皆様、深冬の素性に興味がおありだったので。豪紀殿が「相談」してきたでしょう?邸に良からぬ輩が入り込んで何か調べていると。我が邸でも同じようなことがあってね。加賀美邸を調べたことがあるだろう。実際に調べたのはうちの師走という男ですが。』


・・・俺の邸に不法侵入したのはそれを調べるためか。
豪紀が視線で問うと、青藍は小さく頷く。
うちの邸を調べに来ていた者を調べたということだったのか・・・。
それにしても、邸の仕組みを全て知られているというのは納得がいかないが。
・・・はぁ。
内心で重苦しいため息を吐きながら、豪紀は青藍に話を合わせることにした。


「そんなこともあったな。大変困っていたもので。」
『私もだよ。だから、この場でお話してしまおうかと。安曇様にご相談したところ、そういうことならば、と、安曇様が霊王宮の方であるという話をすることを、快く承諾してくださいました。困っている息子のために手を貸してくださる。これ以上心強い義父は居られない。豪紀殿にも、よろしく、とのことだよ。』
「そうか。それは有難い。後で安曇様にはお礼を申し上げなければ。」
『えぇ。』


そんな会話をする二人を周りの者たちは恐ろしいものを見るように見つめる。
会話の内容からして、霊王宮の者と親密な関係であることが窺えるからだ。
手を出すのは容易いが、手を出せば安曇が敵になる。


ましてや朽木家は漣家と縁が深く、その漣家には漣十五夜という伝説的な男がいる。
産まれは上流貴族だが、今や霊王宮の筆頭家臣。
四十六室でさえ、彼の言には逆らえない。
並みの貴族では太刀打ちできまい。


そして、それを隠し通していた若き当主二人にも、戦慄しているのだ。
これほどのことを隠し通す技量と、霊王宮の者から手を貸してもらえるほどの器があることに。
霊王宮の者に息子と言わしめ、霊王宮の者を義父と呼ぶ。
それを当たり前のように受け入れている彼らに。
青藍は戦慄している様子の彼らに、内心ほくそ笑む。

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