色彩
■ 40.思案

ある日のこと。
『うーん・・・。』
青藍は考えていた。
目の前にはまだ諦めていない様子の貴族たちから届いたお見合い写真。
数が減ったとはいえ、その辺の貴族が受け取る量よりもはるかに多い。


『諦めが悪いなぁ。まぁ、よからぬ噂もあるし、仕方ないのかもしれないけど。』
よからぬ噂。
それは、青藍が深冬に飽きたという噂である。
貴族たちの中には青藍が珍しいもの欲しさに深冬を妻にしたと思っている者もある。


珍しいから、出自の分からない養子をわざわざ朽木家が受け入れたのだという噂も流れている。
ついでに青藍が楼閣に出入りしているために、その噂の信憑性は高いのではないかという見方が広まっているのだ。


当然、青藍は遊ぶために楼閣に出入りしているわけではないし、彼が深冬に飽きるはずもない。
青藍を近くで見ているものならば、一目で深冬を溺愛していると解る。
それに、彼が女性として触れることが出来るのは、未だに深冬だけ。


いい加減、彼は女性不信の改善を諦めている。
深冬という妻があり、彼女に触れることが出来るために、改善の必要性もない。
それはそれとして、深冬の母は流魂街の民であったが、彼女の父親は正真正銘霊王宮の者である。


ついでに言えば、尸魂界を作り上げ、霊王を王として迎えたという、尸魂界最古といってもいいほどの一族の長。
母親が流魂街の民であろうと、深冬の血筋が高貴と呼ばれるものであることは間違いない。


『・・・もう、安曇様が霊王宮の方だということだけは、明らかにしてしまおうか。』
青藍は呟くように言う。
『というか、十五夜様が近くに居るのだから、朽木家と霊王宮の繋がりが露見しても問題ないし、深冬はもう朽木家の者になったから深冬を利用するような悪巧みは、僕が阻止できる。つまり、安曇様が霊王宮の住民であることを隠す必要はないということ。』
呟きながら、青藍は考える。


それに・・・。
深冬が養子だからと言って、その見た目だけで僕が選んだと言われるのは面白くない。
その上、深冬を下に見る者もある。
深冬を下に見て、深冬を貶す、というか、嫌味を言う、というか。


そんな者があるのだ。
それも僕の見えないところでそんなことをする。
深冬は深冬で何でもないことだと思っているのか、僕に相談することもない。
一番面白くないのは、それだ。


・・・僕に相談してくれればいいのになぁ。
青藍は内心で拗ねる。
深冬は正真正銘の朽木家当主の妻であり、僕の愛する妻なのだ。
それをぞんざいに扱われるのは、朽木家当主としても、一人の男としても納得がいかない。


そこで、だ。
安曇様の素性を公にしてしまえば、そのような者を黙らせることが出来るのだ。
彼が深冬の父親であることは徐々に漏れ始めている。
というより、もとよりそう隠そうともしていない。
隠すべきは安曇様の素性だったのだから。


しかし、今はもう、それを隠す必要もないのだ。
深冬は僕のものなのだから。
まぁ、それで霊王宮との繋がりを持とうと寄ってくる輩もいるだろうが、何しろ本人は基本的に霊王宮に居るし、こちらに来ても姿を見せるのは護廷隊と朽木家、漣家、それから甘味処だけである。


霊王宮の住人に直接話しかけられるほど度胸のある貴族もそうは居ない。
まぁ、朽木家以外ではせいぜい漣家と周防家ぐらいだろう。
安曇様本人はそう面倒なことにはならないし、僕も霊王宮の方については語るなと言われているとでも言っておけば、そう面倒ではない。

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