色彩
■ 33.全てを知るのは

『貴方が知ろうとしていることは、尸魂界を根底から覆すような事実です。それを知れば、貴方は縛られる。身動きが取れなくなりますよ。大切な者まで危険に晒します。・・・己の存在が他人を傷つけるというのは、恐怖でしかない。そうではありませんか?』
その問いに冬獅郎は目を伏せた。


『母上が(剣の)巫女であることを知る貴方には、色々とご協力して頂いております。それなのに、これ以上踏み込むなというのは、こちらとしても心苦しい。ですが、これ以上知るのはお勧めいたしません。己を恨むことになります。世界を、世の理を恨むことになります。・・・それに耐える覚悟があるのならば、調べて頂いて結構です。もちろん、その事実は貴方の胸の中に留めておいて頂きますが。』


「・・・解ったよ。今はまだ手を出すべきことではないみたいだな。」
青藍に真っ直ぐ見つめられて、冬獅郎は諦めたように頷く。
『そうですか。知る覚悟が出来たのならば、私どもからお話しいたします。自身で調べられても構いませんが、何度も大霊書回廊に忍び込んでいては、見つかった時に大事になりますからね。』
青藍はそう言って笑う。


「そうだな。お前が教えてくれるならそうするぜ。」
そんな青藍に冬獅郎も笑みを返す。
『それから、母上が(剣の)巫女であることは漏らさないでくださいね。彼等にも。』
青藍はそう言いながら乱菊たちをチラリと見やる。


「解ってる。そっちにも全てを話している訳じゃないみたいだな。」
『えぇ。本当に全てを知るのは私だけでいい。それが私の定めです。』
「ふぅん。篠原も御剣も不満そうな顔だけどな。」
『ふふ。それでも、彼らは冬獅郎さんの知らないことを知っていますよ。』


「なるほど。こっちから聞き出すという手もあるのか。」
『それは難しいですねぇ。彼らは口が堅いので。ね、二人とも?』
貴族然とした青藍に問われて、キリトと京はどぎまぎと頷く。
「話せばこいつらを消す程度訳ないって感じだな。」
二人の様子を見て、冬獅郎は呆れたように言う。


『あはは。そんなことはありません。僕はただの朽木家当主です。ただの六番隊第三席です。大した力はありません。』
「「お前は」だろ。「お前の周り」は、そうじゃない。」
『ふふふ。それは何とも言えませんねぇ。・・・ということで、僕はもう帰ります。ではまた。』
青藍はそう言うとあっという間に隊主室から出ていく。


「・・・隊長、一体何をしているんです?それに、青藍に何をやらせているんです?」
青藍を見送って、乱菊は恐る恐る聞く。
「なんでもねぇ。」


「今の話を聞いて、そんなはずないじゃないですか。ていうか、隊長、大霊書回廊に忍び込むとか犯罪ですよ?」
乱菊はいぶかしげに冬獅郎を見つめる。


「別にいいだろ。気にするな。俺は仕事に戻る。お前らも仕事に戻れ。休憩は終わりだ。」
そんな乱菊を気にすることなく、冬獅郎は湯呑を置いて立ち上がる。


「はい。では、僕はこれで失礼します。」
「ほら、副隊長も仕事の続きですよ。机に戻ってください。」
京はそう言って乱菊の腕を取り立ち上がらせた。


「ちょ、ちょっと!なんなの!?何であんたたち二人とも何も突っ込まないのよ!?」
「そんなの、突っ込んだら自分の身が危ないからですよ!」
「隊長が退くくらいなのですから、僕たちでは太刀打ちできません。」


「そうそう。・・・隊長、本当にそれ以上調べないでくださいね?」
「解ってるよ。俺だって自分の身が可愛い。本当に怖い奴だぜ。俺がどこまで知っているか知っている様子だった。お前らも一体、どんなことに巻き込まれてんだよ・・・。」
冬獅郎はそう言ってため息を吐く。


「あはは。まぁ、それは、隊長が秘密を知れば解るでしょう。知れば、沈黙するしかありません。知っていても、僕らは見守ることしか出来ない。」
「ま、必要になったら、青藍に聞くさ。つか、彼奴、どうやって俺が大霊書回廊に忍び込んだことを知ったんだ・・・?」


「それは青藍スペックです。青藍は必要な情報を瞬時に手にすることが出来ますから。」
「そうですよ。だから怖いんです。・・・・ほら、乱菊さん、仕事に戻りますよ!」
「そうだな。仕事に戻るか。」
「ちょっと!?何なの!?あたしだけ仲間はずれ!!!」
そんなこんなで不満げな乱菊を残して、皆が仕事に戻ったのだった。

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