色彩
■ 31.十番隊の隊主室

『・・・ふぅ。疲れた。』
侑李が去ってから暫くして、青藍は十番隊の隊主室で休憩を取っていた。
我が物顔で長椅子に居座り、まったりとお茶を飲んでいる。


「・・・いやいやいや、青藍。可笑しいでしょ。何寛いでるの。」
「そうよ!このあたしが必死で仕事をしているっていうのに、酷いわ!」
「いや、それは、副隊長が普段から真面目に仕事をしないからです。今日中にやらないと、隊長に氷漬けにされますよ。僕まで巻き添えを食らうのですから、ちゃんとやってください。」
文句を言い始めた乱菊を、京はじろりと見つめる。


「何よ。あたしのお蔭で席官になれたようなものじゃない。あたしに感謝したっていいはず!」
「五月蝿いですね。良いから仕事してください。こっちは席官になっても貴方の監視係で貴方の巻き添えを食らう割合が高くなっているんです。・・・はぁ。」


『あはは。京、大変だねぇ。』
二人の言い合いを青藍は楽しげに見つめる。
「本当だよ。僕だって、書類ばかり見ていないで、任務に出かけたい・・・。隊長は今日もキリトを連れて行った・・・。」
京は詰まらなさそうに言う。


「そりゃあそうでしょ。京みたいな上司に毒を吐く部下より、従順な部下の方が可愛いわよ。本当に可愛くないんだから。」
乱菊はすかさず京に文句をぶつける。
「誰のせいですか、誰の。自覚がないとは重症ですね。」


「ほら、またそうやって!あたしは副隊長なのよ!?もう少し敬いなさいよ。」
「書類仕事をして頂ければ、副隊長として敬いますよ。それが出来れば僕だって文句は言いません。もちろん隊長だって毎回貴方を怒鳴らずに済みます。・・・いいから早くその書類の山を片付けてください。」


「ほんと、生意気なんだから。青藍、これってどうなのよ!?あんたの同期でしょ?何とかしなさいよ!」
乱菊は青藍に詰め寄る。


『あはは。僕も仕事をしない乱菊さんが悪いと思いますけどねぇ。』
青藍は苦笑する。
「何よ、皆して。あたしが悪いっていうのね。まったく、失礼しちゃうわ。」
乱菊は拗ねたように言う。


『「実際そうですからね。」』
「・・・。」
二人に言われて、乱菊は黙り込む。


『・・・ふふ。早く筆を持った方がいいですよ。冬獅郎さんたちが近づいてきます。』
青藍に言われて、乱菊は慌てて筆を手に取る。
それとほぼ同時に、隊主室の扉が開かれた。


「帰ったぞ・・・って、青藍。また来てんのか、お前は。」
「あれ、本当だ。」
隊主室に居座る青藍を見て、冬獅郎は呆れたように言う。
続いて入ってきたキリトも、青藍を見て目を丸くした。


『ふふ。お帰りなさい、冬獅郎さん。キリトもお疲れ様。あ、お茶、飲みます?今なら僕が淹れてきますけど。暇なので。琥珀庵の最中もありますよ。』
「あぁ。頼む。」


『それじゃ、僕、皆さんのお茶を淹れてきますね。』
青藍は楽しげに立ち上がった。
「篠原も休憩を入れろ。」
「はい。日番谷隊長。」


『・・・お待たせいたしました。はい、どうぞ。』
暫くして青藍がお茶を持って隊主室に入ってくる。
「あぁ。悪いな。」
「ありがと、青藍。」


『どういたしまして。・・・乱菊さんと京もちょっと休憩しましょ?休憩を入れないと、乱菊さんが知恵熱を出しちゃうからね。』
青藍は悪戯っぽく言う。
「失礼ね。全く、本当に生意気なんだから。・・・でも、ありがたく頂くわ。」
文句を言いつつも乱菊は嬉々として青藍からお茶と最中を受け取る。


「青藍。松本を甘やかすな。」
『ふふ。いいじゃないですか。京が居るお蔭で、乱菊さんは今日、一度も脱走していないのですから。ということは、京はまだ休憩していません。』


「・・・解ったよ。松本はそれを食ったらすぐに仕事に戻れ。御剣は休憩していい。いつも悪いな。」
「いえ。これが僕の仕事ですからね。」


「・・・それで、青藍は何でここに居るの?」
キリトは首を傾げる。
『あー、ね・・・。何ていうか、噂が噂を呼んで、騒がしいから逃げてきちゃった。』
青藍はそう言って笑う。
「噂・・・あ、昨日の?」


『そうそう。僕が心臓を取られたとかいう、君たちの説明から派生した噂。・・・皆して、僕で遊んでるでしょ。なんか僕、人造人間説とか出てきちゃったんだけど。心臓を取り換えればまた動くらしいよ。・・・僕は一体何者なのか。』
青藍はため息を吐いた。


「あはは。ごめんね?色々隠して説明したら、曖昧な説明になっちゃって。それに、昨日の青藍をどう説明しても、あの場に居た皆は青藍が怖くて仕方が無いようだったから。青藍がとにかく普通じゃないっていうことを強調したのだけど・・・。」
キリトは苦笑する。
『酷い・・・。いや、取り乱した僕が悪いか・・・。あー、面倒臭い。』

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