色彩
■ 28.総隊長

『・・・さて、僕らは後片付けだ。橙晴、君の風を使って、あの瓦礫を穴の中に回収しなさい。』
「僕の斬魄刀は掃除機じゃないんですよ・・・。」
『いいから早くやる!散らかしたのは君と十五夜様だよ。』


「はいはい。やればいいんでしょ。やりますよ。風伯はこういう使い方をするものじゃないのに・・・。最近はこんなことばっかりだ・・・。僕は今日も掃除当番・・・。」
言われて橙晴は文句を言いながらも渋々斬魄刀を抜く。


『・・・で、睦月は院生たちを教室に戻しなさい。それから霊術院へ事情説明。学院長が文句を言ってきたら、今期の寄付金を増やすから黙れとでも言っておいて。朽木家当主がそれを許可する。』


「了解。権力と財力の正しい使い方だよなぁ。」
『五月蝿いな。・・・師走は修繕の手配を。』
「はいよ。ほぼ橙晴が片付けるから今日中に終わるだろ。」


『・・・で、安曇様は・・・医務室でお茶でも飲んでいてください。』
「なんだ、その役立たずに対するような命令は。」
『それでは、橙晴と共にあの瓦礫の掃除をしますか?橙晴の邪魔をすれば安曇様も一緒にお掃除されてしまいますが。』
不満げに言った安曇に、青藍はにっこりと問う。


「いや・・・解った。お茶を飲んで待っている。」
『えぇ。では茶羅、お相手を。お菓子を与えるのは禁止です。』
「解りましたわ。行きましょう、安曇様。」
茶羅はそう言って安曇を連れていく。


『蓮、雪乃、キリト、それから加賀美君はあそこに居る席官たちに事情説明をお願いするよ。皆、僕に怯えているようだから、その方がいいだろう。怖かった自覚もある。人前であれ程取り乱すとは、失態だよ。』
青藍は困ったように言う。


「貴方、本性丸出しだったものね。」
「うん。僕、青藍を怒らせちゃいけないって、改めて思ったよ。」
「鬼や悪魔の方がよっぽど優しいよな・・・。」
「あはは。加賀美君、言うねぇ。まぁ、確かにそうだけど。」
『蓮・・・。』
笑う蓮を青藍はじとりと見つめる。


「あらら。機嫌を損ねると面倒だから、言われた通りにしましょうか。皆、行くよ。説明するのは愛し子の青藍が巻き込まれたということだけ。いろいろ聞かれても適当にはぐらかすこと。青藍だから多少変な噂になったって構わないよ。いい?」
蓮に問われて三人は頷く。
「よし。じゃあ、行こうか。」
そう言って蓮が駈け出すと、三人もそれに続いたのだった。


『さて、と・・・先ほどからそこに居られるのは解っておりますよ、山本元柳斎重圀総隊長。』
青藍がそういうと、音もなく元柳斎が現れる。
その姿を隠すように、青藍は自分たちを囲むように結界を張る。
深冬は目を見開いて、片膝をついて頭を下げる。
青藍もまたそれに並んで頭を下げた。


『この度は、お騒がせして、申し訳ありません。』
「此度は、あの程度で済んで良かったのう、青藍。」
元柳斎はそう言いながら橙晴の掃除の様子を眺める。
「・・・あの時、舞を舞って瀞霊廷を修復したのは咲夜ではなかろう。儂にはそれが解る。これだけ騒いでおきながら、まだ、儂には話せぬか。」
元柳斎は静かに問う。


『・・・はい。申し訳ありません。』
青藍もまた静かに答える。
「何故に?」


『この秘密を知れば、貴方は今以上の苦悩に苛まれることでしょう。貴方がこの秘密を知っていることが知れれば、貴方は、無事ではおられますまい。貴方は尸魂界の歴史そのもの。根幹に深く関わり過ぎております。私どもの秘密は、それを上回る重大な、尸魂界を揺るがす事実にございます。貴方に、それまで背負わせるわけには参りません。』


「十四郎も、春水も、知っておるのじゃろう。他にも知っておる者があるようじゃが。」
『はい。その秘密を知り、余計なものを背負わせました。危ない綱渡りをしていただいたこともございます。秘密を知れば知るほど、あの方々に負担を強いております。あの方々ですら、この秘密の前では無力だとおっしゃいます。私どもがこのような目に遭うたびに、心を痛めておられます。』


「儂では、力になれぬか。」
寂しげに言われて、青藍は泣きそうになる。
違う。
そうじゃない。
貴方の手を取ることは簡単だろう。
でも・・・。


『無礼を承知で申し上げます。』
青藍はそう言って顔を上げる。
『・・・浮竹、京楽両隊長の代わりはいずれ生まれることでしょう。いや、すでに生まれているかもしれません。ですが、貴方の代わりとなる死神は、未だ、この世には居りません。護廷隊は、尸魂界は、まだ貴方を失う訳にはいかぬのです。』


「・・・それ故、儂には話せぬと?」
『はい。この秘密を知れば、貴方は知りすぎる。知り過ぎたものは、いずれ、消されてしまう。それだけは、出来ません。話せと命じることは、おやめください。どうか・・・。』

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