色彩
■ 27.撤収

「咲夜は相変わらずだね。あれじゃあ、僕の入り込む隙がない。」
十五夜は詰まらなさそうに言う。
「茶羅も相手が決まったことだし、僕、どうしようかなぁ。」
その十五夜の言葉に茶羅は首を傾げる。


「・・・私の相手が決まったとは、どういうことですの?」
茶羅に問われて、十五夜はしまったと言う顔をする。
「・・・阿呆が。」
そんな十五夜に安曇は呟く。


「いや、それは、ほら、ねぇ・・・青藍、後は頼んだ!!僕、仕事しなくちゃ!これの処分は僕に任せてね!それじゃ、またね!!行くよ、響鬼!」
茶羅にじいっと見つめられた十五夜は、そう言って彩雲と響鬼を抱え上げると、空間を開いて逃げていく。


「ちょっと、十五夜様!?」
茶羅が追いかけようとするも、すでに空間は閉じられている。
「あの爺、青藍に丸投げして逃げおった。それに、あの者の処分は私の仕事だ。馬鹿者。」


安曇は同情するように青藍を見る。
白哉は素知らぬ顔で傍観を決め込む。
他の面々も青藍に内心同情しながらも我関せず、とあらぬ方を向く。
・・・本当に糞爺だ。
後で痛い目に遭って頂こう。
青藍は内心で呟いた。


「青藍兄様!!一体、何を隠しているのかしら!?」
そうとは知らず、茶羅は青藍に詰め寄って胸倉をつかむ。
『うわ、ちょっと、茶羅。落ち着いて。』
「これが落ち着いていられますか!私の相手が決まったとはどういうことかしら!?」
『あはは・・・。』
「青藍兄様!!!」


『そんな目で見ないでよ、茶羅。僕は君の邪魔はしないと約束したでしょう。』
「だって!!!相手が決まったって!!」
茶羅は泣きそうになりながら言う。
『・・・はぁ。うん。決まったよ。君はただ待っていればいい。いずれ、君の望む者が迎えに来るだろう。・・・だから僕らは全力で君を解き放つ。』


「え・・・?」
青藍の言葉に茶羅は目をぱちくりとさせる。
「・・・・・・えぇぇ!?!!?」
それから理解したのかそんな叫び声を上げた。


「何それ、どういうこと!?一体、何がどうなってそうなるの!?ねぇ、兄様!?」
『ふふ。彼は、中々狡い奴なのさ。何せ、僕と同類だからね。覚悟しておくことだよ、茶羅。縛り付けられるのは苦しいが、自由というのも苦しいものなのだから。』
青藍はそう言って茶羅の頭を撫でる。


「・・・・・・ん?ちょっと待って。」
青藍に頭を撫でられて固まっていた茶羅は何かに思い当たったらしい。
『どうしたの?』
「兄様。おかしいわ・・・。」
そう言って青藍の胸倉を離すと、白哉を見た。


「父上が、大人しすぎませんこと・・・?今の話、聞こえているわよね・・・?というより、私の相手が決まったと断言されているのだから、父上が知らないはずない・・・。」
やっぱり、そこに気が付いちゃうか・・・。
青藍は内心苦笑する。


「・・・父上も、共犯者ってことが、あるのかしら?」
そう言って茶羅は青藍を見上げる。
『はは・・・。』
茶羅の問いに青藍は苦笑するしかない。


「・・・父上!知らない振りをして、楽しんでいたのね!?」
茶羅はそう言って頬を膨らませる。
「さぁな。私は何も知らぬ。」
「嘘!!父上!!知っているのでしょう!?」


「知らぬ。・・・私はそろそろ帰るぞ。兄らもまだ仕事中であろう。」
白哉は茶羅から逃げるようにそう言って浮竹と京楽に視線を走らせる。
「橙晴は青藍と共にこの始末をつけてから帰ってこい。」
それから橙晴にそう言うと、踵を返して歩き出した。


「また僕、後始末係ですか・・・。」
「はは。大変だな、橙晴。・・・俺たちも帰るか、朽木。漣も帰るぞ。」
「はい、浮竹隊長。」


「私は帰ってもやることがないのだがなぁ。」
「お前は昼寝でもしていろ。その辺をふらふらされると他隊から苦情が来る。」
「酷いなぁ。私はちゃんと隊士たちに指導をしているのだぞ!」
咲夜は抗議するように言う。


「あぁ、そうだな。解った、解った。」
「流すな、浮竹!大体、君は最近、私の扱いが雑なのだ!・・・聞いているのか!?」
「五月蝿いぞ。・・・深冬は自分の仕事をしてから帰ってくるんだぞ。」
騒ぐ咲夜を面倒そうに窘めて、浮竹は深冬に笑みを向ける。


「はい。解りました。」
そんな浮竹に苦笑しながら深冬は頷いた。
それを見て彼らは背中を向けて歩き出す。


「さて、私たちも帰りますよ、京楽隊長。」
「あれ、七緒ちゃん。この縄、何・・・?」
一瞬でグルグル巻きにされた京楽は、顔を引き攣らせる。


「隊務が滞っておりますので。今日はこれから少なくとも定刻までは机に座っていて頂きます。では、皆さん、私たちは帰ります。」
「そんなぁ・・・。」
七緒は京楽を引き摺るようにして去っていく。

[ prev / next ]
top
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -