色彩
■ 26.許し

「流石青藍様。何が効果的かよく解っていらっしゃる。・・・さて、十五夜様。貴方の仕事は此処から先です。あの者を連れて帰りますよ。正規の方法で此方に来たせいで、あれの処理までしなければならない・・・。全く、勝手に持ち出した上に、破損するとは。あれではもう廃棄するしかありません。」
響鬼は面倒そうに彩雲が乗ってきたものを見やる。


「あぁ、それは問題ないよ。・・・橙晴。」
「はい。十五夜様。・・・吹き荒べ、風伯!」
橙晴が始解すると鋼鉄の扇が現れる。


「行きますよ、十五夜様。・・・一之陣、風牙!」
「春乃嵐!」
橙晴と十五夜が扇を振るうと、荒れ狂う竜巻のような風があっという間にその物体を粉々に砕いた。


「これで良し。青藍、この破片はその辺に埋めておくように。落ちた衝撃で地面が陥没しているようだから、ちょうどいいね。」
十五夜はそう言って春乃嵐を懐にしまう。


『はい。そのように。・・・二人が並ぶと、そういうことが出来るのですね。あれはそんな簡単に壊せるものではないと思いますが。』
青藍は感心したように言った。
「そうそう。まぁ、青藍と橙晴が並ぶと雷鬼と風鬼って感じだけどね。」
『あはは。そんなに怖い物じゃありませんよ。ね、橙晴?』


「そうですね。兄様は鬼ですけどね。兄様の鬼の姿を見て、雪乃が立てなくなっているのですけど。どうしてくれるんです?可愛いですけど。」
言われて青藍は雪乃を見やる。
雪乃は地面にへたり込んでいた。


『あら、雪乃。ごめんね?やっぱり僕、怖かった?』
「べ、つに、貴方だけが怖くて、立てない、訳じゃ、ないわよ・・・。もう、ここに居ると、皆が怖いのよ・・・。」
雪乃は疲れたように言う。


『あはは。それは仕方ないね。蓮にキリトに加賀美君も、大丈夫?随分、疲れているようだけれど・・・。』
「あぁ、うん・・・。大丈夫だよ、青藍。緊張が解けて力が抜けただけ。」
「ちょっと、寿命が縮んだだけだから・・・。僕たち、生きてるんだね・・・。」
「そうだな・・・。俺も今それを実感している・・・。」
三人はそう言ってため息を吐く。


『あーうん。なるほど。父上たちが怖かったのね・・・。ご愁傷様。』
「「「他人事すぎる!!!」」」
『あは。まぁほら、何時ものことだから。いい加減慣れるっていうか。』
「それもそれで、どうなのだ、青藍・・・。」


『あはは。・・・春水殿に七緒さんも、あそこで来ていただいて助かりました。』
青藍は苦笑する。
「あはは。僕らが一番近かっただけさ。」
「間に合ってよかったです。」


『本当に。あのままでは彩雲様を殺すところでした。あ、もちろん、全力で証拠は隠滅しますけど。』
「「「「!!!???」」」」
青藍の言葉に一同は目を見開く。
いや、京楽においては内心同意しているのだが。


『当たり前じゃないですか。心臓を掴まれたんですよ、僕。中々加護が発動しなくて流石に死ぬかと思いました。同じ痛みを味わって頂きたいくらいです。』
笑顔でそう言い放った青藍に、一同は小さく震えた。


『でも、まぁ、母上が許すというのですから、僕も許しましょう。深冬もそうしてくれるね?朽木家当主たるこの僕がそう言っているのだから、これが朽木家の意思だよ。』
「・・・・・・解った。」
『ふふ。不満げ。まぁ、仕方ないか。当然、父上たちも手は出さないでくださいね。』
青藍の言葉に白哉たちは不満げな顔をする。


『そんな顔をしないでください。心の底から許せと言っているわけではありませんので。本音を言えば、僕自身口で許すと言っているだけで、許してなどおりません。ですが、これを許すかどうかを決めるのは母上ですよ。その母上が許すと言っているのですから、僕らが手を出すのは違うでしょう。いいですね?』


「・・・解りました。」
「解りましたわ。」
「解った。」
『父上も、解りましたか?』
問われて白哉は渋々頷いた。


『・・・これでいいですか、母上?』
「あぁ。上出来だ。私の息子は賢いなぁ。何も言わずとも、私の意思を汲んでくれる。」
咲夜はそう言って青藍に抱き着く。


「・・・君が見たものは、誰にも秘密だが、私は全てを許す。だから君は、それで苦しむ必要はない。怒る必要もない。私の闇に引き摺られるな。いいな?」
咲夜は青藍の耳元で囁く。
『はい。僕の闇も、いつか祓ってみせます。きっと、大丈夫です。僕の手の中には暁がありますからね。』


「ふふ。そうだな。君にも必ず夜明けがやってくる。ところで・・・白哉から不満げな視線を向けられているのは、私の気のせいか?」
『気のせいではありません。父上は確りとこちらを睨んでおります。僕、死にそうです。』


「あはは!それでは仕方ない。私は白哉の元へ行こう。」
『えぇ。お願いします。』
二人は悪戯に微笑みあって、咲夜は青藍から離れると白哉に飛びついたのだった。

[ prev / next ]
top
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -