色彩
■ 25.お菓子禁止令

「闇が、祓われた・・・。」
響鬼は小さく呟く。
「咲夜様、とても綺麗だ・・・。」
『うん。今までで、一番、美しい。』


「浮竹、想像以上だね。咲ちゃん、強いなぁ。眩しいくらいだ。」
「あぁ。ここに来るまで長かったが、これを見せられたら、俺たちの苦労は無駄じゃなかったと思えるな。」
「あれが、本来の咲夜姉さまの姿なのですね。」
「流石、我らが巫女だね。咲夜は本当に綺麗だ。」


「白哉が惚れるのも解る。私でも惚れそうだ。」
「渡さぬぞ、安曇。」
「白哉さん、大変ですねぇ。」
「また敵が増えましたねぇ。」


「ざまあみろ!幸せな私は寛大なのだ!」
咲夜は得意げに踏ん反り返る。
『ふふ。流石母上ですねぇ。そういうことですので、彩雲様。お帰り下さい。・・・あ、そうそう。安曇様にご用があるのでしたら、甘いお菓子をご用意して差し上げるのがよろしいでしょう。一瞬で釣れると思います。』


「何!?私はそんなに単純ではないぞ!!」
楽しげに言う青藍に、安曇は抗議する。
『そうですか?じゃあ、このお饅頭は僕が頂きましょうかねぇ。』


「な、狡い!私にもくれ、青藍!」
青藍が掌に袖の中から取り出した饅頭をのせると、安曇はそれに飛びついた。
『ふふ。ほら、ね。』
「安曇・・・。君はそれでいいのかい・・・?」
その様子に十五夜は呆れ顔だ。


『今日はあの方も来られないようですし。いや、一部は来ているのか。』
青藍はそう言って響鬼をチラリと見やる。
「そうですね。これだけのことがあったにも関わらず、あの方は「妾は眠い。」と言ってお休みになりました。こうなることが解っていたのでしょう。これではあの方が出るまでもない。理を曲げても我らが王も咎めぬはずです。」


『なるほど。僕らは皆、あの方々の掌の上、と言うことか。ま、仕方ない。・・・それよりも安曇様。許嫁が居るとは聞いておりません。』
「言っていないからな。」
安曇は饅頭を咀嚼しながらしれっと答える。


『安曇様・・・。深冬が連れて行かれるところだったのですよ。流石に僕も安曇様のこと糞爺だと思いました。もう糞爺に格下げです。』
青藍はそう言ってため息を吐く。
「な、何!?そんな!?」
そんな青藍に安曇は涙目になった。


『というかですね、そもそも、安曇様は早々に引退するか追放されるかして悠々自適に隠居生活を送りたい方ですので、捕まえるだけ無駄です。』
「「「「確かに。」」」」
青藍の言葉に皆が頷く。


『彩雲様、もう一度言います。無駄です。無駄ですが、直系がどうのこうのとおっしゃっておりましたので、どうしても安曇様の血統が欲しいのならば、安曇様に薬でも盛ってモノにしてしまえばいいのです。まったく、面倒臭い。必要ならば僕の元に届けられる謎の媚薬をいくらでもあげます。安曇様にあげる菓子にでも盛っておいてあげましょうか?』


「な!?青藍!?それは、酷いぞ!!!私の意思は無視か!?そうなのか!?」
安曇は青藍に縋り付く。
『五月蝿いですよ、安曇様。安曇様も安曇様です。適当に一回ぐらい相手をすればいいじゃないですか。運が良ければ一回で終わります。』


「いや、青藍。それはそれでどうなのだ・・・。深冬が複雑だろう・・・。」
面倒臭げにそう言った青藍に、咲夜は苦笑する。
「そうだ!咲夜の言う通りだぞ、青藍!そなたはそう言う男だったのか!?」
『そんな訳ないじゃないですか!僕は深冬一筋です!!深冬との子どもしかいりません!』
青藍は堂々と言い切る。


「言い切った。」
「言い切りましたわね。」
「言い切ったな・・・。」
「はっきりと言い切ったねぇ。」
「相変わらずのようだな、深冬。」
そう言って皆が楽しげに深冬を見つめる。


「な、だ、それは、ですね・・・。」
見つめられた深冬は、顔を赤くしながら、目を泳がせる。
『こら、そこ!!深冬を苛めない!苛めは駄目です!』


「青藍は私を苛めているではないか!!」
『安曇様はいいんです!糞爺に格下げ中ですからね!!』
「酷い!!」


『そんなことはありません!安曇様が許嫁を放って置くからこんなことになるのですよ?大体、そのくらいのことでどうこう言うお年でもないでしょう。酸いも甘いもかみ分けたいい大人なのですから。これでは僕と深冬に現を抜かして仕事をサボっていると言われても仕方ありません。』
青藍は腰に手を当てて叱るように言う。


「む・・・。」
安曇は叱られた子どもの様に、気まずげに唇を尖らせる。
『そんな可愛い顔しても許してあげませんよ!僕は怒っているんです!色々黙っていた上に、こんな面倒事に巻き込んだのですから!暫く朽木家では安曇様のお菓子を用意しませんからね!他の皆も勝手にお菓子を与えないでください!朽木家当主の命令です!!!』


「そんな!?」
その言葉に安曇はさらに涙目になる。
「あはは。安曇には痛いお仕置きだね。」
「いい薬だろう。」

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