色彩
■ 18.空からの乱入者

そして、午後。
修練場にて、視察団は院生たちを視察する。
鬼道、歩法、白打。
次々とそれを見て、今は斬術である。


「・・・始め!」
教師のそんな声と共に六回生たちの打ち合いが始まった。
流石に刀の扱いに慣れているらしい。
実戦さながらの打ち合いが繰り広げられる。


・・・もう少し脇を締めた方がいい、が、あれは多分伸びるだろう。
一通り見渡して、青藍は内心で呟く。
その時。


ドォーン!!!
そんな音と共に何かが降ってきた。
砂煙の中から出て来た院生たちは、間一髪でその物体を避けたらしい。
一体何事かと振り返って砂煙を見つめる。
青藍たちもそちらへ目を向けた。


煙が晴れると出てきたのは、棒状の物体である。
ガチャン。
そんな音がして、先端部分が折れた。
そこから、何者かが這い出てくる。


「ごほっ。・・・荒々しいことよ。何故、この造りから進化しないのか・・・。」
声からして女性のようだ。
噎せながら出てきて、地面へと降り立つ。
その姿に、青藍は息を呑んだ。


「・・・おや、だが、目標はぴったりだの。」
そう言った人物は銀色の髪に紅色の瞳を持っていた。
霊妃・・・ではない。
気配が違う。
背も成人女性並みだ。


では、何者だ。
霊妃の一族であることは確かだろう。
また、僕と深冬を狙って・・・?
青藍はそれを警戒して、深冬の傍に寄る。
そして彼女の腕を取った。
そんな青藍を見て、女は笑った。


「そう警戒するでない、愛し子。我が名は彩雲という。」
また霊王宮か。
そしてまた安曇様の一族か。
青藍は内心ため息を吐く。
とりあえず、他の席官や院生たちに話を聞かれるのは拙いだろう。


『・・・蓮。院生たちに結界を張って。キリトは僕らの周りに結界を張ってくれ。雪乃は視察団の人たちを遠ざけてくれ。加賀美君は、目隠しを頼む。深冬は、僕の傍に。』
微笑まれた青藍はさらに警戒を高める。
彼女の姿に状況を察したのか、彼らは青藍の指示に従って動き始める。


「ほほ。流石だの。妾が何者か解っておるようだ。」
『・・・お初にお目にかかります、彩雲様。安曇様の一族の方とお見受けいたしますが。』
「いかにも。妾は安曇の一族の者よ。そしてそなたは朽木青藍。我らが愛し子。」


『えぇ。・・・本日は、どのようなご用件で?』
警戒を解くことなく、青藍は問う。
「ほほ。出雲と八雲のお蔭で、我らに警戒心を抱いたか。まぁ、そう警戒するでない。妾はその娘を迎えに来たのだ。」
その言葉に、青藍と深冬は目を見開く。


『どういう、事でしょうか。』
「そのままの意味よ。・・・深冬。安曇の子よ。妾とともに、霊王宮に来い。妾と安曇の子として、お前を我が一族へと迎えよう。」
『彩雲様と、安曇様との子として・・・?』


「そうだの。妾は、いずれ、安曇と夫婦となる者故。」
『「!?」』
「ふむ。やはり知らせていなかったか、あの爺。」
彩雲はそう言ってため息を吐く。


「許嫁となって久しいが、あれは一向に妾を妻に迎えようとせぬ。その上、流魂街の女と交わって、子を生したという。その子を溺愛し、その子の夫を溺愛し、暇さえあればこちらに降りてくる始末。」
やれやれと首を振りながら、呆れたように言う。


「・・・だが、それでは困る。あれは霊妃の直系。そして、我らの長である。子を生し、その血を繋がねばならぬ。それが嫌だというから、妾はこんなところまでやってきたのだ。」
その瞳が真っ直ぐに青藍を捕えた。


「それ故、深冬は妾が貰い受けることにした。深冬を霊王宮に連れていけば、安曇はこちらに現を抜かすことがなくなるだろう。あれの体たらくは、すべて、この娘がこちらに居るせいだ。霊王もあれを甘やかし過ぎなのだ。・・・愛し子よ。その娘を渡せ。」


『お断りいたします。』
青藍は静かにその瞳を見返して、はっきりと言い放った。
「何故に?」
『深冬は、愛し子であり朽木家当主であるこの朽木青藍の妻にございます故。』


「愛し子の妻かどうかなど関係ない。安曇の娘であるということが、重要なのだ。安曇は霊妃の直系。その安曇の唯一の子が、その娘。故に、その娘は、間違いなく霊妃の直系であるのだぞ。」
『もちろん、それは伺っております。』


「その娘を、霊王宮に連れて行くと申して居るのだ。半端者を我らが引き受けると。」
彩雲から厳しい雰囲気が醸し出される。
『それを、お断りすると申しております。』
それでも青藍ははっきりと言い放つ。

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