色彩
■ 12.説得力に欠ける

「御剣。居るか?」
隊主室から出て来るなり、冬獅郎は京の名を呼ぶ。
『冬獅郎さん。お疲れ様です。』
「あ?お前ら、何やってんだよ。」
青藍たちを見て、冬獅郎は眉をひそめる。


『彼らの応援に来ました!』
「お前は暇なのか。」
『まさか。ついでに書類の配達もしています。』
青藍はそう言って書類の束を見せる。


「俺は瀞霊廷通信を届けに。これ、今月のです。」
「あぁ。そうか。ご苦労。」
冬獅郎は差し出された瀞霊廷通信を受け取ると、京を見た。


「御剣。これ、今日の仕事だ。頼んだぞ。お前の席はここだが、今日も松本の監視をしつつ仕事をしろ。隊主室の長椅子と机を使っていい。」
「あはは・・・。解りました。では皆さん、僕はこれで。」
京は書類を受け取ると、何時ものことだと苦笑して、隊主室に入って行く。


『あら。忙しそう。』
「で、篠原はちょっと俺について来い。これから流魂街に行く。念のため斬魄刀も持って行け。すぐに行けるか?」
「はい。」
言われたキリトはそう言って斬魄刀を手に取る。


「よし。じゃ、行くぞ。・・・お前らも仕事に戻れよ。じゃあな。」
「それじゃ、僕もこれで。来てくれたのにごめんね。」
『いいさ。顔を見に来ただけだからね。気を付けて。』
「はーい。」
キリトはそう言って先に歩を進めていた冬獅郎の元へ駈けていく。


「・・・忙しないわね。初日から。」
それを見て雪乃がポツリと呟く。
「ま、仕方ないだろ。席官だからな。」
「そうだな。さて、俺たちも仕事に戻るぞ、侑李。」
「そっすね。じゃあな、雪乃、青藍。」


『うん。また。修兵さんも、職権乱用は程々に。侑李はやると言ったらやりますよ。』
青藍は悪戯に笑う。
「はは。気を付ける。じゃあな。」
二人は手を振って去っていく。


「それじゃ、私たちも仕事に戻りましょうか。私は五番隊に用があるの。」
『僕は十二番隊だから逆方向だ。今日は邸に帰るんだよね?』
「えぇ。今日は早番だから。」
『うん。じゃあ、またあとで。』
二人はそう言って仕事に戻ったのだった。


『六番隊、朽木青藍です。・・・何方かいらっしゃいませんかー?』
十二番隊舎の入り口で、青藍はそう声を掛ける。
勝手に入ると何が起こるか解らないからだ。
一瞬の沈黙があってから、近くの扉が開いた。


「青藍か・・・。阿近は研究室だぞ。隊長副隊長もな。」
出てきたのは睦月である。
『そうなの?書類を持ってきたのだけれど。・・・睦月、酷い顔だけれど、生きてる?』
目の下には隈。
全身から草臥れた気配が漂っている。


「・・・三日くらい眠っていないだけだ。問題ない。」
『僕が三日寝ないと騒ぐくせに。』
青藍は不満げだ。
「俺はいいんだよ。まぁ、入れ。」
睦月に言われて青藍は隊舎内に足を踏み入れる。


『相変わらず薄暗い。不健康過ぎない?大丈夫なの、隊士たちの健康状態。もっとお日様の光が必要だと思うよ?』
隊舎を見回しながら青藍は言う。
「まぁ、大丈夫だろ。普通の奴は此処に来ないから。」


『それもそれでどうなのだろうか。・・・ま、いいや。お疲れのようだから、この鯛焼きあげるよ。恋次さんがくれたんだ。』
言いながら青藍は袖の中から鯛焼きを取り出して、睦月に差し出す。
睦月はそれを嬉しげに受け取って頬張り始める。


「・・・美味い。そう言えば久しぶりに物を食べたな。二、三食食べ忘れたか・・・?」
鯛焼きを食べながら睦月は首をひねる。
『そういうの、医者の不養生っていうんだよ。僕らが倒れたときに睦月が倒れていたら意味がないんだから、ちゃんと自分の健康も考えること。いい?』


「お前に言われてもなぁ。説得力に欠ける。」
『五月蝿いな。当主命令。』
「はいはい。善処しますよ。」
適当に言う睦月を青藍は不満げに見つめた。
そしてため息を吐く。


『・・・この書類、阿近さんに渡しておいて。涅隊長宛てだけど、まぁ、どうせ阿近さんが処理するでしょ。』
「解った。」

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