色彩
■ 11.青藍の報告書

「・・・いいなー。席官。この中で席官じゃないの、俺だけなんすけど。加賀美も席官なんすけど。俺だけ置いてかれちゃったなー。」
侑李はそう言いながら、ちらりと恨めしげに修兵を横目で見る。
修兵はそんな侑李の視線から逃れるように顔を背けた。


「そ、それは、あれだろ。お前の、実力っつーか・・・。」
気まずげな声を出す修兵を、侑李は軽く睨む。
「嘘つかないでくださいよ。誰かさんが、副隊長の権限を利用して、他隊からくる俺の席官への誘いを断っているそうじゃないですか。お蔭で俺はいつまでたっても編集長補佐から逃げられないんすけど?」
恨めしげに言われて、修兵は黙り込む。


「どうしてくれるんすか?同期がこんなに席官になってるっていうのに。俺だけ、平のままですけど?」
「いや、だから、九番隊で空きが出たら推薦してやるって言っただろ?」
「嘘だったら締切直前に編集部やめてやりますからね・・・?」
「う、嘘じゃない!本当だ!」


『あはは!そりゃあ、六番隊からの誘いが断られるわけだ。』
青藍は楽しげに笑う。
「笑うなよ、青藍・・・。俺がそれを知った時、どれだけこの人を殴りたかったか・・・。六車隊長に抗議しても適当に流されるし・・・。絶対編集部に関わりたくないだけだ・・・。」
侑李はそう言って頭を抱える。


『僕が侑李に直接話に行けばよかったね。』
そんな侑李の様子に青藍は苦笑する。
「あはは・・・。まぁ、あれだよ。檜佐木副隊長が、それだけ侑李を気に入っているということだよ。そうですよね、檜佐木副隊長?」
キリトはそう言って修兵を見る。


「それは、もちろんだ。俺はちゃんとお前の優秀さを知ってるぞ。お前は原稿の回収が完璧だからな。担当がお前になってから、京楽隊長は締め切りをちゃんと守ってくれているしな。」
「そういうことじゃないんすけどね・・・。」


『あはは。まぁ、九番隊で可愛がられているようで、いいじゃないか。』
「それはそうなんだけどな・・・。釈然としない。」
侑李は複雑そうに言った。


「あら、いいじゃない。上司に可愛がられるというのは、幸運なことよ。ましてやそれが副隊長なんだから。使える繋がりは使えばいいのよ。」
「そうそう。檜佐木副隊長は器用な方だから、頼めば何でもやってくれるよ。」


「・・・なるほど。確かにそうだな。修兵さん、何かあったら、俺に力を貸してくださいね。駄目って言っても、松本副隊長経由で頼んでもらいますから。」
「ははは・・・。お前ら、本当に青藍の友人だよな・・・。」


「・・・はぁ。まったく。ま、とりあえず、お前ら二人とも席官入りおめでとう。」
侑李はそう言って笑う。
「ありがと。」
「ありがとう、侑李。」


『僕も雪乃も君たちを席官仲間と認めるよ。』
「そうね。これからは席官同士忙しくなるわね。席官にしか知らされない内容もあるから、心しておくことね。青藍がどれだけ隠し事をしているのか、よく解ると思うわ。」


『そんなには、隠して、ない、よ・・・?』
青藍はそっぽを向きながら言う。
「嘘おっしゃい。たまに隊主会の席に呼び出されていること、私、知っているのだから。」
『!?』


「総隊長から直々に、任務を任されることもあるようね。まぁそれは、咲夜さんと橙晴も一緒だけれど。当然、朽木隊長もそれを知っているわ。」
『何故知っているのか・・・。』


「貴方の報告書を精査すればすぐに解るわ。隊長たちにしか解らないように暗号化して普通の文書のように見せているけれど、その内容は読むだけで恐ろしいわよ。流石朽木家当主よね。その辺の犯罪者より犯罪者らしいわ。」


『あはは・・・。相手が相手だからね・・・。それにしても、あれ、解読されちゃったかぁ。』
「違うでしょ。私になら解読されてもいいから、私に書類が回るようにしているのでしょう。まったく、勝手に私を巻き込むなと何度言ったら解るのかしら!」


『あらら。そこまで見抜かれているのね・・・。僕の自信作だったのに。また新しいの考えなきゃ。隊長格でなければ見抜かれないと思ったのになぁ。』
青藍はそう言って唇を突きだす。


「いや、青藍。本当に何をやっているの・・・。」
「え、僕たち、これからそんな恐ろしいもの見るの・・・?」
「たぶん、副隊長の俺よりも青藍の方が色んなこと知ってるぞ・・・。」
「席官になろうがならまいが、結局青藍に巻き込まれるのか・・・。」

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