色彩
■ 9.席官のお誘い

「え?だ、それは、一体・・・?」
キリトは戸惑ったように首を傾げる。


「俺も、勿体ないとは思っていたんだ。漣が稽古をしているから、席官レベルではあるんだが、何分、うちの隊では席官に空きが出なくてなぁ。いや、まぁ、それは、喜ばしいことでもあるんだが。・・・朽木もそう思うだろう?」
浮竹はそう言ってルキアに問う。


「そうですね。確かに実力は申し分ありません。咲夜姉さまが鍛え上げましたので。キリトが努力していることもよく知っておりますし・・・。」
「キリトさんは書類の整理も早いのです。」


『まぁ、霊術院の首席卒業は伊達じゃないよね。キリト、ずっと主席だったもの。』
「たまに、蓮とも稽古をしているよね。」
皆にそう言われてキリトは困った顔をする。


「・・・と、いう訳だが、どうだ?あぁ、確か、御剣が同期だったな。そうか。彼奴が居たな。それじゃあ、彼奴を十七席にするっていう手もあるのか。」
『京も席官に?』
青藍は目を丸くする。


「あぁ。彼奴は松本捕縛要員だからな。松本班の御剣を席官にするのは避けたいが、彼奴、最近鬼道と瞬歩の腕が上がってきてんだよな。他から引き抜きの話も来ているくらいだ。引き抜かれるよりは、うちで席官になってもらった方がいい。全く、松本は役に立つんだか立たないんだか・・・。」
冬獅郎はやれやれと首を横に振る。


「ふむ。確かに京も実力を上げている。実はいい霊圧をしているのだ。霊圧が大きい訳ではないのだが、器用な奴でな。この間散歩をしていた時に見つけて、気まぐれに瞬歩の回転のかけ方を教えたらあっという間に出来てしまった。」
「あれはお前のせいか・・・。松本が驚いていたぞ。」


『母上、本当に神出鬼没ですよね・・・。』
「あはは。ちょうど修練中だったのだ。」


「どうだろう、キリト。行ってみないか?」
浮竹はそう言って微笑む。
「本当、に、僕なんかで、いいのですか?」
キリトは不安げだ。


「あぁ。俺はいいと思うぞ。なぁ、漣。俺もそうだが、お前も適当に言っている訳じゃないんだろ?」
「当たり前だ。私は冗談で言った訳ではないぞ。本気で言っているのだ。」
「お二人の言う通りです。私もそう思っているぞ、キリト。」
浮竹、咲夜、ルキアの三人にそう言われて、キリトは泣きそうになる。


『キリト。君は昔から、僕なんか、と言うけれど、僕は君を凄い奴だと思っているよ。キリトのお母さんは、虚に襲われた君を庇って、死んでしまったと言っていたでしょう?その時感じた恐怖は、きっと、一生忘れられないものだよね。それでも君は死神になって、虚と戦っている。自分の恐怖と戦っている君は、凄いやつなのさ。』
青藍はそう言って微笑む。
「青藍・・・。」


「キリト。やってみたいと思う気持ちが少しでもあるのなら、やってみなさい。責任が重くなって、仕事もきつくなって、苦しい思いもするだろう。だが、それを乗り越えられるだけのことを私は教えたはずだ。それでも、まだまだ力が足りないと思うのなら、私が付き合ってやる。まぁ、その時はボロボロになる覚悟が必要だがな。」
咲夜はそう言って悪戯に笑う。


「それは大変だなぁ。・・・まぁ、それでもだめだったら、十三番隊に戻ってきてもいいぞ。皆がお前を可愛がっているからな。俺もお前の力になろう。」
「そうだぞ、キリト。十三番隊の皆は、キリトを応援するぞ。なぁ、深冬?」
「はい。いつも、助けて頂いているので、私もキリトさんを応援します。」


皆にそう言われて、キリトは一つ深呼吸をする。
そして冬獅郎に向き直った。
「決めたみたいだな。」
「はい。」
「篠原。」
「はい、日番谷隊長。」


「・・・十番隊第八席として、お前を迎えたい。引き受けてくれるな?」
「はい。謹んでお受けいたします。よろしくお願いいたします。」
キリトは真っ直ぐにそう言って、冬獅郎に頭を下げた。
「あぁ。頼む。・・・浮竹、出来るだけ早く欲しいんだが。」


「そうか。諸々の仕事の引き継ぎをして、隊舎の移動もあるからなぁ。・・・二週間後ってところか?」
「解った。正式な任官状は追って通達する。十七席については御剣に話をしてみよう。じゃあな。頼んだぜ、篠原。」
冬獅郎はそう言って雨乾堂を出ていったのだった。

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