色彩
■ 8.プリン

『あ、でも、きっと、安曇様は相談に乗ってくれると思いますよ。頼りになる相談役です。』
「なるほど。それは心強い。・・・まぁ、それよりも、青藍君が手を出さなければ、俺としては非常に楽なのだけれどね。」


『それは燿さんの働きぶり次第です。舅たちを手玉に取るぐらいのことが出来なければ、僕は茶羅を朽木家に戻しますよ?』
「それは前途多難だなぁ。」
そういいながらも燿は笑顔である。


『ふふ。簡単には渡してあげません。』
「だから青藍君を敵に回したくない。そんなに綺麗で柔らかい顔をしているのにね。手厳しくて困るよ。」
『それはお互い様と言うものですよ、燿さん。』
「優しいと思うけどなぁ。」


『その言葉、たぶん、ここに居る人たちは信じてくれませんけどね。』
「そうかな。俺は優しいと評判なのだけれどね。」
『それは僕だってそうですよ?』
そんなことを言いながら二人は微笑む。


「・・・なるほど。この二人が同類と言うのはこういうことなのだな。」
「そうみたいだね。蓮さんの言っていた通りだ。」
「蓮も人のことは言えないがな・・・。」
「燿はこういう男だったのか・・・。茶羅も苦労するだろうな・・・。」
そんな二人を見ながら、四人はひそひそと会話をする。


「でも、きっと、茶羅だから、燿さんの相手が務まるのだと思います。」
深冬はそう言って微笑む。
「そうだな。茶羅なら大丈夫だろう。」
「俺は複雑だなぁ・・・。燿と結ばれても、俺たちの相手をしてくれるだろうか・・・。」


「ふふ。隊長、寂しそうですねぇ。大丈夫ですよ。茶羅ちゃんは飛び回るから茶羅ちゃんなのです。燿さんはそんな茶羅ちゃんに振り回されるのでしょうねぇ。」
キリトの言葉に皆が小さく笑ったのだった。


「邪魔するぞ、浮竹。」
暫くして、そんな声とともに、冬獅郎が姿を見せた。
その体には後ろから二本の腕が回されている。
冬獅郎は鬱陶しそうにそれを引きはがそうとするが、その腕は冬獅郎を放さない。
その腕にげんなりとして、助けを求めるように青藍たちに視線を向けた。


『・・・母上?何をしているのですか?』
冬獅郎に抱き着いている咲夜のどんよりとした気配におののきつつも、青藍は問う。
「・・・つ、つかれた。」
『?』
青藍は首を傾げて冬獅郎を見る。


「・・・貴族連中に絡まれてたんだよ。胡散臭い笑顔貼り付けて、別人だろ、あれ。」
冬獅郎は呆れたように言う。
『なるほど。白刃の言付けが間に合いませんでしたか。』
冬獅郎の言葉にその場に居る全員が苦笑する。


「うぅ。冬獅郎が来てくれてよかった・・・。流石私の可愛い冬獅郎だ。」
言いながら咲夜は冬獅郎に頬ずりをする。
「やめろ、鬱陶しい。いい加減放せ。誰彼かまわず抱き着くな。朽木に恨まれるだろうが。俺が。」


「大きくなっても肌がすべすべとは、私の目に狂いはなかった・・・。」
「うるせぇ。人の話聞けよ。・・・おい、お前ら、見てねぇで何とかしろ。」
『あはは。・・・母上、お疲れ様でした。丁度ここに美味しいおやつがありますよ。燿さんが持って来てくれたのです。僕らと一緒にお茶でもしませんか?』
青藍はそう言ってお菓子を見せびらかす。


「そうだぞ、漣。新作もあるそうだ。お前の好きなプリンもあるぞー。生クリームも載っているぞー。ほらほら、美味そうだろう?」
浮竹は犬猫でも呼び寄せるように、咲夜に声を掛ける。
「それはたべるぞ!」
咲夜はそれに顔を上げて、目を輝かせた。


「そうか。それじゃ、こっちへ来い。ここに置いておくからな。」
浮竹はそう言って、プリンを自分の隣の空いた場所においた。
咲夜はすぐさま冬獅郎から離れて、そのプリンを手にして浮竹の隣に座りこむ。


「お前、それでいいのか・・・。」
そんな咲夜を冬獅郎は呆れながら見つめた。
『流石十四郎殿です。母上の扱い方をよく解っていらっしゃる。』
「いや、お前も自分の母親があんな扱いでいいのか・・・。」


「ははは。日番谷隊長も好きなものを選ぶといい。」
プリンを食べ始めた咲夜を横目に浮竹は楽しげに言う。
「いや、俺はいい。」
「そうか?遠慮はいらんぞ?」


「さっき燿と青藍が来たからもう菓子はいらねぇ。書類だ。頼む。」
冬獅郎はそう言って書類を差し出した。
浮竹はそれを受け取って眺める。
「・・・なるほど。席官に空きが出たのか。それも八席と十七席じゃないか。」


「あぁ。いい奴、居るか?居るなら、十番隊に来てもらいたいんだが。」
「はいはい!居るぞ!居る!!」
咲夜は楽しげに手を上げる。


「何でお前が答えるんだよ・・・。まぁいい。誰だ?」
冬獅郎は呆れつつも咲夜に言葉を促す。
「キリトだ!」
咲夜は自信満々に言う。


「!?」
咲夜の発言にキリトは目を丸くした。
「もちろん八席の方だぞ?」


「!!??」
キリトはさらに目を丸くした。
「・・・だ、そうだ。どうだ、キリト?」
浮竹はキリトに視線を向ける。

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