■ 6.皆で避難
「私が手放したくないと言えば、そなたは諦めるのか?」
「それは・・・諦めません。」
困ったようにそう答えた燿に、白哉は笑った。
「では、反対するだけ無駄だ。我が子らを敵に回すのも骨が折れる。その上咲夜やルキアも茶羅の味方だ。朽木家の当主もすでに認めている。これでは私も分が悪い。」
「・・・大切に、致します。」
「あぁ。頼む。そなたらを見守ろう。それが、親の役目だ。瑛二殿も反対は出来まい。自身も無茶を通したのだから。」
「ふふ。はい。」
『・・・ふふ。』
そんな二人を見て、青藍は笑う。
「何だ?」
『いえ。父上、見栄っ張りだなぁと、思いまして。』
青藍はくすくすと笑う。
それを見て、白哉は拗ねたような顔をした。
『あはは!父上、本音では、反対したくて仕方がないくせに。』
「当たり前だ。私と咲夜の可愛い娘なのだぞ。青藍こそ、寂しくて仕方がないのだろう。反対せぬのは茶羅のため。幼い頃から茶羅には甘いな。」
『寂しいのは当たり前です。僕の可愛い妹ですよ?生まれる前から可愛くて仕方がなかったのに、こんなに早く僕の手から離れていくなんて。でも、その辺の貴族の道具にされるよりよっぽどましです。苦労はするでしょうが、茶羅は、そちらを選ぶ。そういう子です。』
「そうだな。何より、茶羅がそう望んでいるのだ。仕方あるまい。」
『・・・そういう訳だから、燿さん、早く茶羅を捕まえてあげてね。』
「解ったよ。」
楽しげに言う青藍に、燿は頷く。
「手を出すのは祝言を挙げてからだぞ。それから、私が燿を認めていることは、茶羅にはまだ話すな。二人で緊張しながら、私の元に挨拶に来ることだな。」
「!?」
白哉の言葉に、燿は固まる。
『あら、父上の意地悪が始まった。』
「その方が面白いからな。簡単に手に入れさせるものか。茶羅も、燿も、互いにな。」
『こんな父上が舅になるなんて、燿さん、大変だなぁ。』
「茶羅をやるのだから、このくらい耐えてもらわねば。せいぜい苦しめ。」
「それは・・・辛いですね・・・。」
燿は苦笑する。
「まぁ、その前に、茶羅に想いを告げることだな。想いは形にせねば伝わらぬものだ。」
「なるほど。それが、朽木家の仲良しの秘密ですか?」
「そうかもしれぬ。」
『ふふ。そうですね。』
三人は悪戯に微笑みあう。
「では、私は仕事に戻る。青藍も、あまり遊んでいるな。白紙の書類を持って、何処に行くつもりだ。」
『あはは。ちょっと休憩です。今日の書類仕事は終わっておりますので、ご安心を。父上も早く戻られた方がよろしいですよ。茶羅が父上を探しているでしょうから。』
「そうか。・・・あまり深冬に迷惑を掛けるなよ。」
白哉はそう言って去っていく。
その背を二人は笑いながら見送ったのだった。
『失礼します。六番隊朽木青藍です。』
「琥珀庵です。」
『十四郎殿はいらっしゃいますか?』
冬獅郎に甘納豆を届けて、二人は十三番隊に来ていた。
「あら、青藍君に燿さん。隊長なら雨乾堂にいらっしゃるわ。」
『清音さん。少しお邪魔させて頂きますね。深冬、それからルキア姉さまもお借りします。』
青藍はそう言って二人の腕をつかむ。
「「な、何だ、青藍?」」
『今日は貴族の方々が護廷隊の見学に来ているようなので、避難した方がいい。今頃十番隊に居るでしょうから、次は十三番隊ですよ。十一、十二番隊はスルーされるでしょうからね。僕も橙晴も捕まってしまって大変だったのです。』
「そういうことなら、二人とも休憩してくるといいわ。」
『あ、あとキリトも避難した方がいいよ。』
「僕も?」
青藍に言われて、キリトは首を傾げる。
『密かに君を狙っている姫君も来ているからね。』
「それは・・・そうだね・・・。」
キリトは苦笑する。
「キリト君も大変ねぇ。じゃあキリト君も行ってらっしゃい。お茶でも持っていくわ。」
清音はそう言って給湯室へと向かう。
『いつもありがとうございます、清音さん。・・・後は母上か。白刃、居る?』
青藍に呼ばれて白刃が姿を見せる。
「なぁに?」
『母上に、姿を消して直接雨乾堂に来るように伝えておいて。』
「はーい!」
白刃はそう返事をして駈け出していく。
それを見て、青藍たちは雨乾堂に向かったのだった。
『十四郎殿、お邪魔しますよー。』
青藍はそう言って雨乾堂に入る。
ルキアたちもそれに続いた。
「お?皆してどうしたんだ?」
ぞろぞろと入ってきた面々を見て、浮竹は首を傾げる。
「俺は菓子を届けに。新作もありますので、感想を聞かせて頂けると助かります。」
燿はそう言って菓子の入った箱を差し出す。
「そうか。頂こう。・・・で、青藍たちはどうしたんだ?」
『今日は貴族の方々が見学に来ているようでして。休憩ついでに、深冬とルキア姉さま、それからキリトにそれを知らせに来ました。僕と橙晴は彼らと顔を合わせてしまって、大変疲れたので。』
青藍は面倒そうに言う。
「はは。なるほどな。」
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