色彩
■ 24.月の宴E

「豪紀兄様はやっぱり青藍に巻き込まれるのだな・・・。」
『ふふ。そうらしい。加賀美君も、化け物の仲間入りかなぁ。苦労するのは意外と実花姫の方かもね。』
「私?」


『うん。十五夜様はあれでも霊王家の筆頭家臣だからね。ここに居られる安曇様は霊王宮祭儀長官。十五夜様に次ぐ地位に立つ。そして、先ほどここにいらっしゃった霊妃様は霊王様の妻だ。どの方も、中々に複雑怪奇だからね。並みの者じゃあ相手にならない。』
「ははは。確かにそうだな。」
青藍の言葉に咲夜は楽しげに頷く。


『ですよねぇ。まぁ、詳しい説明は加賀美君から聞いてくれ。もちろん他言無用だけれど。朽木家と関わる加賀美君の妻になるのならば、それ相応の覚悟が必要なのさ。もっとも、それが出来ていないような君じゃないけれど。』


「当たり前よ。豪紀様が何か面倒なことに巻き込まれていることなんて、前から気付いていたわよ。それが、朽木家や漣家の力に関するものだということもね。豪紀様が頭を抱えるのは青藍様たちと関わった時だもの。」
「ははは。倅、見抜かれておるぞ。」
安曇は楽しげに豪紀を見る。


「そのようですね・・・。」
豪紀は苦笑するしかない。
「安曇様が深冬様のお父様ってだけじゃないことだって、薄々気が付いていたわ。」
実花ははっきりと言い切る。
『あはは。流石だよねぇ。』


「それで、今日のことを整理すると、まず、安曇様は霊王宮の方なのね。それで、霊王様には霊妃様と言う妃が居た。そして、その二つの力は拮抗するものである。次に、霊妃様と深冬様が似ているということから、安曇様と深冬様は霊妃様の縁者なのね。それも直系ね。」
実花の言葉に安曇は目を丸くする。


「何故解るのだ?」
『え、直系なのですか!?』
「そうだ。」
『!?』


「ま、待て、安曇。ということは、霊妃は子を・・・?あんなに小さいのに?」
咲夜は混乱したように問う。
「そうだが?強大な霊妃の力を受け継ぐ可能性を見出したらしい我が一族は、霊妃に子を孕ませた。一族の者と交わらせたのだ。」


「・・・それは、大丈夫なのか?色々と・・・。」
「さぁな。だが、霊王は何も手を出さなかったし、霊妃もそれを受け入れた。それ故私はここに存在している。そもそも霊妃は確かに霊王の妃だが、直接顔を合わせたことがあるかも怪しい。互いにアレだから、互いの情報は互いに知っているだろうが。あれらは本物の化け物だからな。」
安曇は何でもない事のように言う。


『それで・・・安曇様はその霊妃様のお子の子孫・・・?』
「あぁ。当然、深冬も霊妃の直系と言うことだ。」
「・・・何か、私は凄い血を受け継いでいるようだな?」
深冬はポツリと言う。
『そのようだね・・・。吃驚した・・・。』


「それで、実花さまは何故直系だと解るのだ?」
深冬は不思議そうに言う。
「え?だって、霊妃様が婆と言われても怒ることすらしないのよ?霊妃様と言うのは相当厳しい方だと感じたのだけれど。咲夜様や十五夜様が敬意を払っているくらいですし。青藍様も霊妃様には可愛がられているようだけれど、霊妃様への敬意は忘れていないわ。それは、あの方がそれほど苛烈な方だからでしょう?」


『それは・・・そうだけれど・・・。』
「でも、霊妃様も自分の子孫には甘いのね。親が子を甘やかし、祖父母が孫を甘やかすように安曇様と深冬様に接していらっしゃったわ。安曇様も安曇様で、あんな物言いが出来るのは自分の身内だからなのでしょう?」
「この短時間でそこまで気が付くか・・・。」
安曇は苦笑する。


「私、血縁者って縦の繋がりが解りますの。安曇様と深冬様を見たときも親子だってすぐに解ったわ。お二人は似ているけれど、どんなに似ていない者であっても、解ってしまうのよねぇ。だから、その人を見ると本当の親が誰だか解ってしまって中々難儀なのよ。夫を騙している妻と言うのは、結構居るものなのよね。」
実花は困ったように言う。


『実花姫、難儀な才能を持っているんだね・・・。』
青藍は苦笑する。
「そうなのよ・・・。でも、青藍様たちは正真正銘咲夜様と白哉様のお子よ。深冬様は安曇様のお子だし、豪紀様もご両親は間違いないわ。もちろん、私と梨花姉さま、雪乃もそうだけれど。」


『なるほど。それで、実花姫のそんな才能を知っている人は他に居るのかい?』
「今は居ないわ。お婆様は知っていたけれど。お婆様もそういうものを感じる人だったの。でも、すでにお亡くなりになって居られる。それに、誰の親が違うとか、口に出しても厄介なことになるだけですもの。」

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