色彩
■ 16.やばい二人

『まぁ、いいじゃない。必要な時にこっそりと君と会うことが出来るのだから、それなりに便利だよねぇ。』
「・・・ん?お前、さっき図面は廃棄したと言っていただろう?」
青藍の言葉に豪紀は首を傾げる。
『言ったよ?必要ないから廃棄したって。』


「・・・じゃあ何故お前はそれを使おうとしているんだよ。」
『だって、僕の頭の中に入っているもの。だから、紙媒体は必要ないでしょ?』
当然のように言った青藍に、豪紀は唖然とする。
「必要ないって、そういうことかよ・・・。」


『そうだよ?ちなみに師走も頭に入っているかな。だから、君の当主引き継ぎの儀のとき、誰にも気づかれずに師走と睦月を加賀美邸に引き入れられたんじゃない。』
「お前、信じらんねぇ。」


『あはは。いいじゃないの。別に悪用しようってわけじゃないのだから。』
「信用ならない。」
『酷いなぁ。』
「・・・青藍、無茶苦茶だよね。」
「そうだな・・・。」


「そうか?私も同じことをするぞ。」
「「「「!!!!????」」」」
安曇の言葉に皆が目を見開く。
『流石安曇様。』
「自分の身を守るためならそのくらいのことはせねばな。力勝負は向かないからな。」
『ですよね。僕も力勝負はなるべく避けたいので、頭を使うことにしています。』


「・・・この二人、やばいな。」
「そうだな・・・。」


「深冬様。安曇様って一体どういうお方なの・・・。」
実花は唖然としてそう零す。
「父様は、ああいう方なのだ。少なくとも青藍と同じくらいには、アレなのだ。」
そんな実花に深冬は苦笑して答える。


「容赦はないが、でも、優しいのだ。母様を想って泣くくらいだしな。私の自慢の父様だ。」
深冬は柔らかく笑う。
「なるほどねぇ。深冬様も大物なのね。そりゃあ、青藍様が欲しいと思う訳だわ。」
「そうか?」


「えぇ。私なんか、まだまだね。私も欲しいと思ってもらえるように精進しなきゃ。」
「ふふ。そんなことをしなくても、大丈夫だと思うぞ?実花さまは実花さまのままでいい。」
「え?どういうこと?」
首を傾げた実花に、深冬はただ微笑むだけだった。


「失礼いたします。青藍様方のお迎えに上がりました。」
そんな声とともに、座敷の襖が開かれる。
『あ、睦月。・・・時間?』
睦月の姿を認めて、青藍は問う。


「はい。お時間にございます。月が中天へ近付いております故、そろそろお邸に帰られますよう。安曇様もご一緒に、とのことにございます。」
臣下面をしてそう言う睦月に、彼の素を知るものは笑いをかみ殺す。


「月?・・・そうか。今宵は満月だったな。私も衣装を着て来るべきだったか。」
「そんなこともあろうかと、安曇様の分はこちらでご用意いたしております。」
「用意のいいことだ。私が今日、こちらに来ることまで解っていたようだな。」
「あの方から茶羅様にご連絡が入ったようで。茶羅様からご連絡がありました。」


「なるほど。あの婆はこちらに来る気か。朽木家も苦労するな。」
安曇は苦笑する。
『え、それ、本当ですか?』
安曇の言葉に青藍は目を見開く。


「私と咲夜と青藍の三人が揃うのだ。あれが来るのも解る。どうやら私は一仕事しなければならぬらしい。青藍、私には甘味が必要だ。」
『ふふ。ご用意いたしましょう。睦月、甘味の調達は任せる。』


「畏まりました。・・・今宵の奏者は如何いたしましょう?橙晴様と雪乃様はあのご様子ですし、茶羅様は師走と山へお出かけ中にございます。」
『そう言えばそうだった。そうだねぇ・・・あ!ちょうどここに周防家の方と周防の笛があるじゃないか!ね、加賀美君、実花姫?』


「「!?」」
「いや、俺たちは全く話が読めていないのだが。」
『まぁ、いいじゃないか。ちょっとした宴だよ。といっても、参加できるのは朽木家と漣家、それから一部の死神だけだけれど。』
「それ、何かすごく嫌な予感しかしませんわよね・・・?」
「あぁ・・・。俺は面子が予想できて怖い・・・。」
微笑みながら言う青藍に、二人は顔を引き攣らせる。


『ふふ。加賀美君もいい加減慣れればいいのに。あ、でも、実花姫は事情を知らないんだっけ。どうしようかな・・・。』
「その事情というのは、お父様や梨花姉さまも知らないこと?」
『うん。・・・実花姫にお伺いする。』
唐突に当主の顔になった青藍に、一同は目を瞠る。


「な、何か・・・?」
『貴方は加賀美家当主の婚約者だ。彼の役目を背負う覚悟がおありか。』
「・・・えぇ。私は加賀美家当主に嫁ぐ身。その責任の重さも理解しております。私の務めは、何があろうと、豪紀様の隣に立ち、共に歩んでいくことにございましょう。」


『その言葉に偽りはありませんね?この先、いかなる時でも、貴方は豪紀殿の力になるということですね?』
「はい。」
実花ははっきりと頷く。


『・・・豪紀殿には勿体ない方かもしれませんねぇ。』
「深冬こそ、青藍殿には勿体ない。」
青藍のからかいに応じるように、豪紀は言い返す。


『おやおや。この私にそんなことを言うとは、豪紀殿も胆が据わっていらっしゃる。』
「胆を据えなければ、朽木家当主と付き合うことなど出来ないもので。」
『ふふ。本当に面白い方だ。』
「そちらこそ。」

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