色彩
■ 15.暇潰し・・・?

「はいはい。そこ三人。仲良しは結構だけれど、皆が置いてきぼりを食らっているよ。何故安曇様が突然ここに出てこられるのか・・・。」
京は呆れ顔だ。


『あ、そうだった。』
「ん?ここは邸ではないのか?・・・どこだ此処は。」
京の言葉に安曇は二人を解放する。
そして周りを見回した。


『安曇様・・・。一体どうやってここに来たのですか・・・。』
「青藍のいるところに出てきただけだ。」
『あぁ、なるほど。』


「・・・それにしても、珍しい格好をしているな。」
『今日は漣家で舞を舞って来たもので。あの方に悪戯されました。』
「ほう。あの婆も物好きよのう。」
言いながら安曇は青藍をまじまじと見つめる。


『婆って・・・。聞かれたら叱られますよ。』
青藍は苦笑する。
「婆は婆だろう。・・・まぁ、気持ちが分からなくもない。綺麗な色だ。髪も、瞳も。」
安曇はそう言って青藍の髪をサラサラと弄ぶ。


『それはありがとうございます。』
「もう少し、長い方がいいな。」
『あはは。あの方にもそう言われました。卍解の時は、腰あたりまで長いのですが。』
「それは見てみたい。後で見せてくれ。」


『えぇ。お見せいたしましょう。驚かないでくださいね。あの姿は皆が怖がるのです。』
青藍は悪戯に言う。
「ふふ。その程度のことでこの私が恐れるはずがない。どんな姿でも青藍は青藍だろう。」
笑いながら言われて、青藍は目を丸くする。


『・・・ふふ。』
そしてくすくすと笑いだした。
「どうしたのだ?」
そんな青藍に安曇は首を傾げる。


『ふふ・・・。いえ、さっき、深冬にも同じことを言われました。僕、やっぱり、安曇様のこと、大好きです。本当に自慢の父様です。』
「ははは。そうか。それは嬉しいな。」
『あ、でも、一番は深冬です。』
「ふふ。相変わらずのようだな。」


『当然です。・・・さて、皆の疑問にお答えしなくてはね。まぁ、さっきの会話から気付いているだろうけれど、この安曇様は深冬の実の父親だ。六番隊と十三番隊の隊士なら一度くらいは見かけたことがあるかもしれない。同窓会なのに、乱入者が多くて悪いね。』
青藍は苦笑する。


「まぁ、霊術院時代からそうだったから、皆、気にしないだろう。咲夜さんを始めとして、色々な死神が来たもんなぁ。隊長格まで来るんだから。」
侑李の言葉に皆が頷く。
『あはは。そんなことばかりだったねぇ。』


「そうか。同窓会か。・・・雪乃も同期ではなかったのか?」
『雪乃は先ほど橙晴が連れ去りました。』
「なるほどな。橙晴も相変わらずか。」
『えぇ。』


「加賀美の倅も居るようだな。そなたがこのような場に居るのは意外な気がするが。」
「朽木青藍に連れてこられたもので。」
疲れたように言う豪紀に安曇は笑う。
「そなたも苦労するのう。」


「えぇ。ですが、この男なので仕方ありません。」
「確かにそうだ。青藍は何でも巻き込んでいくからな。私も巻き込まれている。」
安曇も困ったように言う。
『それはお互い様というものですよ、安曇様。』


「始めに巻き込んだのは青藍だろう。この私を脅すとはいい度胸だ。」
『脅してなどおりませんよ?深冬のために協力をお願いしたまで。』
「ほう?敵になれば深冬を盾にしてでも私を使うと言ったのはそなたではなかったか?」
『さぁて。何の話やら。』


「おい、青藍。安曇様まで脅しているのか?」
「青藍、怖いもの知らずだよね。」
「十五夜様も色々と使っているようだし。」
侑李、京、キリトは呆れたように言う。


『使ってなんかいないよ?必要な時にこちらに来ていただくだけで。十五夜様、呼んだら飛んでくるのだもの。』
「それ、使っているというんだぞ。」


『そう?まぁ、安曇様は例外として、十五夜様は正真正銘の権力者ですからね。権力には権力を、です。霊王宮の筆頭家臣である十五夜様が来てくだされば、四十六室だって怖くない。』
青藍はけろりという。


「・・・青藍、それもどうかと思うぞ。」
深冬は呆れ顔だ。
『大丈夫だよ。ちゃんとお礼はしているさ。感謝もしているんだ。十五夜様が居なければ、僕や母上は無間にでも放り込まれているところだよ。』


「無間・・・って、地下監獄の?」
『そうそう。大罪人が放り込まれるところ。』
「青藍、やっぱり悪人なの?」
キリトは怖いものを見るように言う。


『あはは。彼らが僕らの力に怯えているだけさ。僕は何にも悪いことしていないもの。』
「・・・さっき、加賀美邸への不法侵入が露呈したけどな。」
『いやだなぁ、加賀美君。侵入したのは師走と茶羅と橙晴だよ。僕じゃない。』
「草薙師走に命令したのはお前だろう。」


『別に加賀美邸へ侵入しろと命じたりはしていない。あるものを調べろと命じて、その方法は師走に任せただけだよ。あれを攻略したのは師走の暇つぶし。』
「暇つぶしで人の家を攻略するなよ・・・。」

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