色彩
■ 14.銀色の出現

『ご名答。それから殺し合いにまで発展した。それ故に、草薙の一族は今残っている者たちを残して霧散、又は死に絶えた。僕が知る限り、生き残りは四人。今、順番を指す名前を持っているのはたった三人で、あとの一人はご隠居という所かな。ご隠居といっても「元睦月」だけれど。他にも生き残りが居るのかもしれないけれど、暫くは表に顔を出すことはないだろうね。睦月たちは朽木家が守っているから。』


「守る?あの方たちを?何故?」
『それは秘密。世の中には知らない方がいいこともあるのだよ、実花姫。』
青藍はそう言って微笑む。
「そこまで話しておいて、酷いわ。」
そんな青藍に実花は不満げだ。


『本当は僕だって知らない方がいいくらいの話なのさ。あれで睦月たちは母上と同じくらいには厄介な奴らなのだよ。それに、皆に知られたら、睦月たちに恨まれるし。僕だって平穏を崩されてしまう。それは面倒だから勘弁したい。それでなくたって、漣家と付き合いがあるというだけで色々と面倒なのに。』
青藍は面倒そうにため息を吐く。


「突然そんな姿になるとかな・・・。」
「そうだね。説明するの、面倒だものね、それ。」
侑李と京は気の毒そうに青藍を見る。
「青藍、他にも色々と面倒事を抱えているものね・・・。」
キリトは苦笑する。


『そうそう。例えば、この耳飾りがどこで手に入るのか、とかね。』
「それは・・・教えたところで、手に入る訳ではないからな・・・。」
深冬もまた苦笑する。


と、そこへ突然空間が開いて、そこから安曇が姿を見せた。
『「!?」』
「青藍・・・。深冬・・・。」
泣き腫らした目で二人の名を呼ぶ。
突然現れた美麗な人物に一同は釘づけになった。
そしてその姿が深冬と同じ色彩であることに首を傾げる。


『安曇様!?何故このような場所に・・・。』
青藍と深冬は目を丸くする。
『それに、どうしてそんな目をしていらっしゃるのです?早く冷やした方がよろしいですよ。・・・侑李、何か冷やすものを頼んでくれるかい?』
「はいよ。」
青藍に言われて侑李はすぐに注文する。


「そなたらの、せいではないか・・・。一体、何度私を泣かせれば気が済むのだ・・・。」
安曇は拗ねたように言う。
その言葉に、青藍と深冬は顔を見合わせる。
「私たちが何かしたか?」
深冬は首を傾げる。


「・・・桜を見たのだ。」
「桜・・・。あそこに行って来たのか?」
「あぁ・・・。」
『そうでしたか。ご覧になったのですね。もう少し後になるかと思ったのですが。』
青藍は苦笑する。


「狡いぞ、青藍・・・。」
安曇は悔しげに言う。
『ふふ。いかがでしたか?』


「桜の名前を翁から聞いて、散々泣いたわ!それで、石碑を見せられて、思わず笑った!笑いすぎて涙が出てきた。全く、憎いことをしてくれる・・・。」
悔しげに言いつつも、その瞳は柔らかだ。


『おや、翁にもお会いになりましたか。』
「・・・あぁ。丁度散歩に来ていたようなのだ。全く、ほとんど面識のない相手の前で泣かせおって。」
『ふふ。泣けましたか。』
「泣いた。」
『でも、笑えましたか。』
「あぁ。」


『それで、立ち止まることなく、ちゃんと帰ってくることも出来たのですね・・・。』
「当たり前ではないか。私には帰る場所があるのだからな。」
『ふふ。良かった。・・・お帰りなさい。』
「あぁ。ただいま。」


「・・・ふふ。予想通りだな、青藍。」
『そうだね。予想通りだ。』
悪戯に笑う二人を、安曇は抱きしめる。
『安曇様?』
「父様?」
そんな安曇に二人は首を傾げた。


「・・・礼を言う。お蔭でやっと向き合えた。美央のために涙を流すことが出来た。」
囁くように安曇は言う。
『・・・ふふ。それはようございました。実を言うと、安曇様に余計なことをするなと叱られる覚悟もしていたのです。でも・・・僕らの父様は、もう孤独ではないようだよ、深冬。』


「私と青藍が居るのだから、当たり前だ。」
「全く、心強い子どもたちだ。」
楽しげな二人に安曇は困ったように笑う。


『あはは。安曇様は心強い父様ですよ。』
「そうだな。ちょっと涙もろいが。」
『それが安曇様の可愛いところじゃないか。』
「・・・五月蝿いぞ。そなたらが泣かせるのだ。」
二人の言葉に安曇は拗ねたように言った。


『ふふ。安曇様だって、僕らのこと泣かせるくせに。素で狡いですよね、安曇様。安曇様に息子と言われたとき、僕、泣くのを我慢したのですからね?』
「知っておるわ。情けない声を出しおって。」
「そうなのか?」


「そうだぞ。この男、実は泣き虫なのだ。」
安曇は悪戯っぽく言う。
「ふふ。確かにそうだ。」
『そんなことありません!』

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