色彩
■ 10.同窓会H

「・・・雪乃様、大変ね。青藍様ったら、意地が悪いわ。こうなることが解って私たちに連絡を入れたのね。」
二人を見送って、実花が不満げに言う。


『おや、実花姫は、加賀美君の浮気を疑わないのかい?』
「当たり前じゃない。この人がそんなに器用な人だと思いますの?青藍様とは比べ物にならないくらい不器用なんだから!」
『僕だってその方面の器用さはないよ。』
青藍はそう言って笑う。


「そりゃそうよね。深冬様以外には駄々漏れでしたものね。」
『五月蝿いよ。実花姫だって必死に入ってきたくせに。』
「・・・演技に決まっているじゃない。茶番に付き合って差し上げたのよ。」
実花はどこか気まずげに言う。


『そう?ま、いいけどね。実花姫も大概素直じゃないなぁ。そう思わない、深冬?』
「そうだな。豪紀兄様も豪紀兄様だが。」
「な!?」
深冬の言葉に豪紀は目を丸くする。


『あはは!確かにそうだ。加賀美君ってば、解りやすいよねぇ。』
「実花さまの言う通り、不器用なのだ。」
深冬は苦笑する。
「深冬・・・。頼むからそれ以上言ってくれるな・・・。そもそもお前らが鋭すぎるだけだろう・・・。何故こちらのことはこうも筒抜けなのか・・・。」
豪紀は疲れたように言う。


「事実ですわ。豪紀様ったら本当に不器用。あの両親の子どもとは思えないわ。」
「五月蝿いぞ、実花。余計なことは言うな。」
「八重様だってそう言っていらしたわよ。私の子どもにしては、不器用なのよね、って。」
「・・・。」


『ふふ。加賀美君、大変だねぇ。ま、応援しているよ。遠くから。とりあえず、実花姫と手でも繋いでみたら?』
「「・・・。」」
青藍の言葉に、実花と豪紀は動きを止めて互いを見て、目が合ってしまったために、気まずそうに目を反らした。


『おや、その様子だと、手をつないだこともないらしい。君たち、数か月後には夫婦になるんでしょ?そんなんで大丈夫なの?』
「余計なお世話だ・・・。」
「そうね。あの人、自分が余裕だからって・・・。」
楽しげな青藍を二人はじとりと見つめる。


『何?見本でも見せないと出来ないの?・・・仕方がないなぁ。』
青藍はそう言って深冬の手を取り、指を絡める。
『こうすればいいだけじゃない。』
言いながら青藍はつないだ手を二人に見せる。
そして見せつけるように、繋いだ深冬の手の甲に口付けた。


「何をする!青藍の阿呆!キス魔!!!」
『別にいいじゃない。いつものことでしょ?』
「そ、それは・・・そう・・・だが・・・。」
青藍が人前でそうするときは大体キスをしたい時なのだぞ、と深冬は内心で呟く。


『ていうかね。最近は深冬から手を繋いでくるんだよ。』
「な!?」
青藍の言葉に、深冬は目を見開く。
『あれ、無自覚?・・・なにそれ。本当に可愛いんだけど。あー可愛い。』
青藍は緩む口元を隠すようにもう一方の手で口を覆う。


「ち、ちが!!!」
深冬は赤くなりながら否定する。
『違うの?じゃあ、わざとなの?それならそれで言ってくれればいいのに。』
そういう青藍の瞳は楽しげだ。
「にゃ!?ちが、違うぞ!?」
『そうなの?』
楽しげに言う青藍に、深冬は悔しげに黙り込む。


「・・・深冬様って、青藍様のこと大好きなのね。」
実花は呆れたように言う。
「実花さま!?」
「だってそうじゃない。意識的にしろ、無意識にしろ、青藍様に触れて居たい訳でしょ?青藍様ばかりが深冬様を想っているのかと思っていたけれど、深冬様も大概ね。」
「う・・・。」


『ふふ。否定しないんだ。それは嬉しいなぁ。』
青藍は楽しげに深冬を見つめる。
「ち、違うもん・・・。」
真っ赤になりながら、深冬は呟く。


『何が違うの?ねぇ、僕に教えてよ。』
そんな深冬に、青藍は甘い声で問う。
「!!!」
その声に、深冬はさらに赤くなって涙目になる。


『ねぇ、深冬?僕は深冬が大好きなんだけどなぁ。深冬は違うの?』
「・・・ず、狡い。」
『僕が狡い奴だなんて、君はとっくに知っているじゃないか。』
恨めしげに言った深冬に、青藍は微笑む。


『ま、今はいいや。君の可愛い愛の告白を他の人に聞かせるなんて勿体ないし。後でたっぷり聞かせてもらおう。』
「!!??」
『ふふふ。楽しみだなぁ。』
言いながら青藍は深冬をチラリと見やる。


その金色の瞳が深く色づいていて、深冬はぞくりとする。
いつもと違って、でも、いつもと同じ瞳。
色は違えど、その瞳は深冬の大好きな瞳なのだ。
その瞳が情欲を映し出している。
これでは敵わない、と深冬は内心で呟く。

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