色彩
■ 6.同窓会D

「え・・・まじ?」
「僕、見たことあるけど、どう見ても女性だったよ・・・?」
「青藍がたじたじになるくらいには、気の強そうな方だったよ?」
「女の私から見ても、女性らしい女性よ?」
「俺、あの人に誘われたことあるぞ・・・?」
五人はあり得ないと言った表情だ。


『あはは!流石牡丹さんだ。あの人の本名は長谷川一葉。正真正銘の男だよ。』
「えぇ!?本名は聞いたことあるけど、浮竹隊長、そんなこと言っていなかったよ!?」
『だって、牡丹さん、それを隠して遊んでいるもの。』
「遊んでいるって・・・。」


『父上がそれを一目で見抜いて、相当悔しがっていたけれど。そんな父上が愛する妻がどんな人なのか、興味を持っちゃって大変なんだから。母上に会わせろと五月蝿くて仕方がない。最近は深冬に会わせろとも言ってくるし。ま、見せたところで、敵わないと認めるだけだろうけど。深冬はともかく、母上と会わせると気が合っちゃって大変になりそうなんだよなぁ。』


「・・・やられたわ。詐欺じゃない。道理で色々と詳しい訳よ・・・。」
雪乃が疲れたように言う。
『おや、雪乃、牡丹さんに何か言われたりしたの?』
「そ、それは、別にいいじゃないの。貴方には関係ないわ。」
そう言って雪乃は気まずげに目をそらし、酒を口に含んだ。


『ふぅん?・・・橙晴の喜ばせ方でも教わった?』
青藍は雪乃にだけ聞こえるように意地悪く言った。
「ごほっ。・・・な、何を言い出すのよ!?」
青藍の言葉に噎せながら、雪乃は顔を赤くする。


『何だ、図星か。冗談だったのに。・・・橙晴はさぞいい思いをしたのだろうねぇ。』
「ちが、違うわよ!!違うんだから!!!」
『はいはい。流石新婚。ご馳走様って感じ。』


「だから違うってば!!!大体、新婚なのはそっちだって同じでしょ!!!私も深冬もどれだけ苦労しているか!!!貴方たち、自己主張が激しすぎるのよ!!」
『さて、何の話だろうなぁ。・・・あ、ありがとうございます。いただきまーす。』
その時、膳が運ばれてきて、青藍は待っていましたとばかりに箸をとる。


「ちょっと、人の話、聞いているの!?」
『聞いているよ。雪乃が橙晴に愛されちゃって大変、という話でしょ。』
「な!?」
『全く、我が家はその辺オープンだから、困るよねぇ。』
「貴方だってその一人でしょうが!!!」
『僕や父上や橙晴と違って自重しています。』


「「「あれで!?」」」
「お前、嘘つくなよ・・・。」
『嘘なんて吐いてないよ。あの二人、公衆の面前で相手の唇を奪うことに何の抵抗もないもの。邸の中に居る時なんか、本当に酷いんだから。ねぇ、雪乃?』


「な!?そ、し、知らないわよ、そんなの・・・。」
『ふぅん?まぁ、別にいいけどさ。僕はそんなことしないでしょ?だから、雪乃なんか、僕のこと男じゃないとかいって、皆で陰口を叩いていたよね。母上も茶羅も酷いよね。それから梨花実花姫の二人も一緒だったようだけれど。』


「な!?何故それを知っているのよ・・・。」
雪乃は目を丸くする。
『知っているさ。狡いよね。皆でお風呂に入るとか。ルキア姉さままで参加しちゃってさ。雪乃も同じ目に遭ったらしいけど。まぁ、雪乃の場合、一目で解るけどね。』


「!!!」
『橙晴も橙晴で駄々漏れだしね。父上においては隠す気がない。母上はそれに慣れつつあるし。僕、隠している方だと思うんだけどなぁ。』
「そういう割には、朝比奈の祝言の時、公衆の面前でやらかそうとしただろう・・・。」


『やらかそうとしただけで、本気でそうするつもりはなかったさ。ちょっと遊んだだけだもの。それに、あの場だったからだよ。あの場には僕を狙うような人たちは居ない。誰彼かまわずあれを見せるなんて自殺行為でしょ。それでなくても変な輩が寄ってくるというのに。何故僕の顔は父上に似なかったのか。少しでも父上の要素が入っていれば・・・。』
青藍はそう言ってため息を吐く。


『大体ね、可愛い深冬を見るのは僕だけでいいの。見せてあげるわけないじゃない。』
「うわ、惚気た。」
「惚気たわね。」
「青藍、お前、ぶれないな・・・。」
「そうだね・・・。」
「こいつはそう言う男だよな・・・。」


『別にいいでしょ。僕がどれだけ苦労してあの子を手に入れたか・・・。』
「攫って行った奴が何を言っているんだ・・・。」
豪紀は呆れたように言う。
『何さ。深冬を頼むと言ってきたのは、君の方じゃないか。』
「そう言うつもりで頼むと言った訳じゃない。預かってくれと言ったんだ!」


『あぁ、そうだよね。可愛い可愛い妹のために、嫌いな僕に頭を下げたんだよね。』
「喧しい!!」
『事実じゃないか。いやぁ、あれは面白かったなぁ。』
青藍はニヤニヤと笑う。


「お前はほぼ脅しだっただろうが!!」
『そうだっけ?僕は深冬が欲しいなぁって、お願いしただけじゃない。』
「お前のお願いは脅し付きの命令なんだよ!!!加賀美家を潰してでも深冬を貰うと言ったのはどの口だよ・・・。」

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