色彩
■ 4.同窓会B

「・・・この二人、金銭感覚おかしくない?」
「そうだな・・・。」
「青藍は何となく解っていたけど、加賀美君もだったとは・・・。貴族ってそういうものなのかな・・・。」
三人は唖然としたように言う。


「あら、お金の計算をするだけまともな方よ。朽木隊長なんて、お金の計算なんてしないのだから。」
雪乃の言葉に三人は目を丸くする。


『あはは。父上はお金の計算をする必要がないのさ。計算せずに買っても、懐に問題ないからね。父上、働かなくても贅沢三昧しながら生きていけるもの。』
「朽木隊長は別格だろう。俺やお前じゃ比べるまでもない。」
豪紀は呆れたように言う。


『そうそう。父上、隊長として稼いだ分はほぼ使っていないからね。使う必要もないけど。あ、でも、僕が当主となってからはそっちを使っているようだけれど。』
「まじで?朽木隊長、隊長になってから長いよな?」
『そうだねぇ。僕らが生まれる前からだから、相当長い。』


「私、この間、帯留めを買っていただいたわ。咲夜さんと深冬と茶羅とお揃いのやつ。」
『ふふ。深冬から聞いた。雪乃も可愛がられているよねぇ。橙晴が悔しがっていたよ。「雪乃を飾るのは僕の役目なのに」って。父上の目は確かで似合っているから余計に悔しそうだった。・・・今付けているのがそれでしょう?』
「そうなの。よく解ったわね。」


『ふふ。深冬が嬉しそうに見せてくれたからね。後でそのお店に行った時、他の帯留めを見てきたけれど、僕もそれを選ぶね。父上、趣味がいいなぁ。それだけ君たちを見ているというのも悔しいけれど。深冬があんなに嬉しそうじゃ、文句を言うことも出来ない。』
青藍はそう言って唇を尖らせる。


「あら、まだまだ、朽木隊長には敵わないのね。」
『あはは。本音を言えば、一生敵う気がしないよ。それでも、父上の背中を追うのは辞められないのだけれど。あの背中を見てしまったら、追いかけずにはいられない。あの背中を見て、強くなりたいと思ったから。』
青藍は苦笑する。


「本音を言うなんて、珍しいわね。」
『そうかな。』
「そうよ。いつも適当に誤魔化すんだから。・・・まぁでも、確かに朽木隊長は強敵よねぇ。」
雪乃もまた苦笑する。


『そうなんだよ・・・。深冬が父上に懐きすぎて面白くない。』
「あはは。青藍、大変だねぇ。」
「橙晴も朽木隊長に振り回されているものね。」
「そうみたいだな。雪乃に関して色々と朽木隊長が面白がっているらしい。」


「私だって大概振り回されているわよ。朽木隊長は、青藍なんか比じゃないくらい狡い人なのだから!ああやって私で遊んでいるのだわ。」
雪乃はそう言って頬を膨らませる。


『雪乃、父上に微笑まれると弱いものね。真っ赤になって、たじたじになってしまうのだから。』
青藍は楽しげに言う。
「五月蝿いわね!仕方ないじゃない。あの微笑みを向けられて顔が赤くならない女性が居るのなら見てみたいわよ。」


『深冬は赤くなったりしないよ?』
「そ、れは、そうだけど・・・。」
青藍の言葉に雪乃は口籠る。
「あはは。だって、深冬ちゃんは安曇様を見ているからね。安曇様と朽木隊長は同類だし。」
キリトは面白そうに言う。


『確かに。安曇様も狡いんだよなぁ。基本無表情なくせに、結構お茶目で、でも、大人で。僕、あの方にも敵う気がしない。この耳飾りを頂いた時のことは絶対に忘れられないし。この耳飾りは、僕と深冬のお守りの様なものなんだ。毎朝、これを付ける時に安曇様に頂いたお言葉を思い出す。その言葉が、僕らに力をくれるんだ。』
「私と橙晴もそうよ。この髪紐を頂いた時の言葉を、毎朝思い出すの。」


「お前ら、安曇様のこと大好きだよな・・・。」
豪紀は呆れたように言う。
『もちろん。僕らの大切な家族ですから。』
「そうね。あの方、本当に朽木家の一員なのよ?」


『そうそう。朽木家には安曇様のお部屋があるのだから。・・・そう言う加賀美君だって、安曇様には感謝しているくせに。』
青藍は言いながら豪紀をチラリと見やる。
「それは・・・そうだが。」


『安曇様のお蔭で八重殿が柔らかくなられたものね。』
「ま、あれは、誑し込んだという方が正しい気もするけど。私、その場に居たけれど、青藍が安曇様に頼んでああさせたのかと思ったくらいだもの。」
『あはは。雪乃ったら酷いなぁ。あれでも安曇様は通常運転だよ。あの人、素で狡い人なんだ。自覚はないようだけれど。』


「お前だって、俺の母親を誑し込んでいるだろうが。いい加減やめろ。」
『人聞きの悪いこと言わないでくれるかな。あれは深冬のためです。僕らの平穏を邪魔されては困るからね。』
「青藍って本当に、最低よね・・・。」
雪乃はそう言ってため息を吐く。


『酷いなぁ。深冬のためと言うのは本当なのに。』
「どこまで計算なのだか・・・。」
『お義母様と仲良くするのも僕の務めです。あ、もちろん、お義兄さんである、加賀美君とも仲良しだよ?』
「誰がお前と仲良しだよ・・・。お前のせいで碌なことがないわ。」
豪紀は疲れたように言う。

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