色彩
■ 3.同窓会A

「じゃあ、あの時、お前の母親と一緒に舞っていたのは、お前か!?」
『そうだよ?一緒に舞ったというよりは、逆の舞で相殺した、というのが正しいけれど。』
「え、そんなに前からだったの?ていうか、あれ、相殺したの!?青藍が!?一人で!?」
キリトは驚いたように言う。


『うん。まぁ、一応、そういうことになるのかな。父上たちの力も借りたけど。卍解が出来なかったら、僕はあの時死んでいるね。父上と十四郎殿、春水殿の三人で立ち向かっても劣勢だったのだから。あの父上の左腕が一撃で使い物にならなくなったくらいだし。・・・皆、気付いていなかったの?』
青藍は不思議そうに首を傾げる。


『・・・あ、でも、そうか。あの時、隊長格以外は隊舎に避難してもらったんだっけ。あの騒ぎがあったのは、四十六室のあたりだから、隊舎からじゃあ、見えても誰かは解らないか。』
青藍は納得したように言う。


「雷がやたらと落ちていたから青藍はあそこに居るだろうとは思ったけど、霊圧が大きすぎて、誰が居るのか僕には解らなかった。あの霊圧が咲夜さんのだと聞いた時は驚いたよ。」


「私は綜合救護詰所に待機だったから、何があったのか、よく解らなかったわ。後から青藍に話を聞いただけだもの。あの場に駆け付けたのだって、大きな霊圧が消えて、卯ノ花隊長がそこに居るのが解ったからだし・・・。」


「俺も隊舎内に居たから、よく解らなかった。」
「僕も。日番谷隊長が卍解している気配は感じたけど。冷気が瀞霊廷内に満ちていたから。」
四人はそう言って頷き合う。


「俺も遠目に見ただけだ。此奴の母親が普通じゃない状態だということぐらいしか感じ取ることが出来なかった。あの金色はあれを押さえに来た誰かだと思っていた。」
『あはは。気付いていると思っていたのだけれど、そうじゃなかったようだね。説明が抜けていたようだ。』
青藍は困ったように笑う。


「おかしいと思ったのよ。あの状況で、私たちが駆けつけたとき、青藍、無傷だったもの。」
「確かに。」
「そう言えばそうだな。」
「あれ?でも、隊長たちも無傷だったよ?朽木隊長、左腕使っていたよね・・・?」
キリトは首を傾げる。


『あはは。壊れた建物が元に戻るくらいだから、怪我くらい治るよねぇ。』
「ふぅん?」
笑う青藍に、雪乃は疑いの目を向ける。
『え、何?』


「別に何でもないわよ。ただ、まだまだ隠し事があるようだと思っているだけよ。まさか、わざと隠していた訳じゃないでしょうね?」
『信用ないなぁ。わざと隠していたのなら、今この場でその話をしたりはしないよ。』


「・・・ま、いいわ。それで、何故そんな恰好をしている訳?」
『ちょっと、悪戯の被害に遭ってこうなったよね。半日くらいで元に戻るから、まぁ、気にしないでくれ。』
青藍は苦笑する。


「その衣装は漣家のだよね?」
『うん。さっきまで漣家で舞を舞っていたものだから。時間がなかったからこのまま来たのだけれど。まぁ、この後もちょっと一仕事あるし。』
「・・・なるほど。理解した。だからそんなことになってんのか。」
侑李が同情するように言う。


『そうそう。全く、あの方にも困ったものだよ。』
「そう言うことなのね。じゃあ、貴方がどんな姿になろうと驚く必要はないわね。」
「そうだね。流石漣家だよ。青藍も中々大変なんだね。」
『まぁね。でも、これも僕の務めだから。』


「ま、とりあえず、そんなところに立ってないでこっち来いよ、二人とも。」
侑李に呼ばれて青藍と豪紀は席に着く。
キリトもまた自分の席に着いた。


『僕、お腹空いた。』
席に着いた青藍はそう呟いてお品書きを眺める。
『何にしようかなぁ。・・・加賀美君は何か食べる?それとも呑む?』
「俺、冷酒。それから・・・刺身の盛り合わせ。」
『じゃあ僕も呑もうっと。僕も冷酒でいいや。それから松御膳。』


「お前ら、今出ているものは食べない気か。」
侑李は呆れたように言う。
『「冷めた料理は美味しくない。」』


「・・・。」
二人の言葉に侑李は沈黙する。
「・・・そう言えば、この二人、本物の貴族だったね。」
「そうだね。忘れそうになるけど、そうだった。」
「それに、この人たち舌が肥えているから、並みの物では満足しないのよ。冷めた料理なんて以ての外ね。朽木家の料理は冷めても味が落ちないのだけれど。」


『我が朽木家の板場は、そこまで考えて作っているからね。・・・侑李、注文お願い。』
「はいはい。冷酒二つに、松御膳と刺身の盛り合わせだな。ちょっと待ってろ。」
侑李はそう言って注文する。
『あはは。流石侑李。有能な幹事だよね。』
「言っておくが、お前ら、それ、自腹だからな。」


『はいはい。ていうか、全員分払ってあげるよ。待たせたお詫び。』
「それじゃ、俺は土産の菓子でも付けてやる。」
青藍と豪紀は当たり前のように言う。

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