色彩
■ 1.お誘い

「青藍、居るか?」
仕事をしていた青藍の元に、侑李が姿を現した。
『侑李?どうしたの?』
「お、やっと捕まった。」
首を傾げた青藍を見て、侑李は笑みを見せる。


『何か用だった?』
「そうそう。お前、最近どこに居るわけ?毎日来てんのに、全く見かけなかったんだけど。」
『あはは。当主業が忙しくてね。死神業の仕事は邸に運んでもらっていたんだ。』
青藍は苦笑した。


「なるほど。そりゃあ、捕まらないわけだ。加賀美の奴も忙しいのか?」
『加賀美君?・・・まぁ、彼はその内祝言を挙げるからねぇ。色々と忙しいのさ。』
「え、まじで?彼奴も結婚するの?婚約したの、割と最近だった気がするが。」
侑李は目を丸くする。


『あはは。確かにそうなのだけれども。加賀美君も当主だからね。そして、死神だ。いつ死んでもおかしくない職業だから、早く結婚するのはそう珍しいことじゃないよ。貴族ならば特に。』
「ま、そうだな。・・・じゃあ、お前らは来られないかなぁ。」
侑李は呟くように言う。


『うん?何が?』
「いや、今度、同窓会をやるんだよ。霊術院の同期たちと。来週末なんだが。」
『へぇ。そうなんだ。あ、もしかして、侑李、幹事なの?』
「はは・・・。」
侑李は苦笑する。


『その様子だと、僕らを連れて来いと言われたのかな?』
「まぁな。」
『君も苦労するよねぇ。幹事も色々と理由を付けて押し付けられたんでしょ?』
「はは。ま、お前の友人だからな。仕方がないんだが。こういうことするのも嫌いじゃないし。」


『京たちも行くの?』
青藍は首を傾げる。
「あぁ。京とキリトは、参加するってよ。で、雪乃も捕まらねぇから、とりあえず、橙晴に許可を貰っておこうかと。」
侑李はそう言って、机に向かっている橙晴を見る。


「雪乃が行くと言えば、いいですよ?」
「そ?」
「えぇ。でも、余計な虫が付かないようにしてくださいね。」
「はは。了解。」


『うーん・・・。来週末、ねぇ・・・?』
青藍はそう言って考え込む。
「何かあるのか?」
そんな青藍に侑李は首を傾げる。


『まぁね。漣家に行かなきゃならなくて。その後でいいなら、少しくらい顔を出すことが出来るのだけれど。でも・・・。』
「でも?」
『たぶん僕、ちょっといつもと違うかも。ね、橙晴?』


「・・・あー、そうですね。僕も最初見たときは吃驚しました。兄様、遊ばれていますよね。」
『あはは・・・。どうやら、あの姿が特にお気に入りの様でね。ああされると、半日ぐらい元に戻らないんだよねぇ。』
青藍は困ったように言う。


「まぁ、別にいいんじゃないですか?兄様のあの姿を見たことがある人もいるでしょうし。深冬も見たことがあるのでしょう?」
『うん。あとほとんどの隊長格も僕のあの姿を知っている。いや、あれとはちょっと違うけど。』


「ふぅん?ま、俺は青藍がどんな姿でもいいけど。」
『そ?じゃ、とりあえず参加で。加賀美君も強制参加で行こう。面白そうだから。』
青藍は楽しげに言う。
『あ、でも、たぶん遅れていくし、もしかすると、行けないかもしれないから、その時はごめんね。それでも会費はちゃんと払うけど。』


「了解。じゃ、とりあえず、頭数に入れておく。後は雪乃だな。お前ら、雪乃に会ったら伝えておいてくれねぇ?」
「僕から伝えておきましょう。今日は雪乃も邸に帰りますから。」
「おう。頼んだぞ。じゃ、俺はこれで。」


同窓会当日。
青藍は漣家に赴き、霊妃に舞を奉納し、霊妃と言葉を交わす。
その際、霊妃が青藍の姿を少しいじった。


お蔭で青藍は今、金色の髪に、金色の瞳という姿である。
その上巫女衣装を着ているものだから、その辺を歩いていると目立って仕方がない。
目立って仕方がないが、着替える暇などなかったために、青藍はそのまま加賀美家を訪れた。
豪紀は青藍の姿に目を丸くして、言葉を失う。


そうして豪紀が青藍をまじまじと見つめている間に、青藍は八重に話をつけ、豪紀を連れ出した。
その道中で同窓会の話を聞いた豪紀は帰ろうと試みるが、青藍はがっちりと彼の腕を掴んでいる。
抵抗を諦めた豪紀は、渋々彼に引かれるままに会場である料亭へと向かったのだった。

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