色彩
■ 37.三日以上は無理

「よう、橙晴。おめでとー。」
「おめでとう、橙晴。なんだか久しぶりだね。背が伸びたんじゃない?」
「本当だ!僕、抜かれちゃった気がする。それにしても、雪乃を妻にするなんて、橙晴もやるよねぇ。おめでとう。」
「皆さん、ありがとうございます。」
橙晴はそう言って微笑む。


「橙晴ってば、ずっと待っていたものね。」
蓮は楽しげに言う。
「そうだね。本当に、雪乃には待たされたよ。」
『ま、今日から遠慮する必要はない訳だし。好きにすればいいよ。』


「そうですね。・・・と、いう訳で、雪乃?とりあえず、僕の膝の上においで?」
橙晴は素晴らしい笑顔で言った。
「い・・・いや、あの、それは・・・。」
雪乃は思わず後ずさる。


「おいで?早く来ないと、実力行使に出るけれど。」
「な!?そ、それは、駄目よ・・・。」
「じゃあおいで?あ、それとも、後でたっぷり苛めてあげる方がいい?」
清々しい笑みを浮かべながら橙晴はそんなことを言う。


「・・・雪乃様。早く諦めた方が身のためだと思う。橙晴はやると言ったらやるぞ。」
深冬は同情するように言う。
「そ、そうね・・・。」
雪乃は青褪めながらそろそろと橙晴に近付いた。


「ふふ。深冬ったら酷いなぁ。僕、優しいよ?」
言いながら橙晴は近寄ってきた雪乃の手をしっかりと掴んだ。
そして遠慮なくその手を引く。
「きゃ!?」
倒れこんできた雪乃を受け止めて、膝の上に乗せる。


「・・・どの辺が?」
それを見ながら、深冬は呆れたように言った。
「ん?ほら、雪乃が大人しくなったじゃないか。赤い顔しちゃって、可愛いよねぇ。」
言われて雪乃は手で顔を覆う。
「あ、隠さないでよ。」
橙晴は問答無用でその手を退かす。


「・・・青藍もアレだけど、橙晴も大概だよな。」
「そうだね。朽木家って、一体どうなっているの・・・?」
「全体的に規格外だよね・・・。」


「あはは。朽木隊長はあれらの上を行くよ。」
蓮は楽しげに言う。
「え、本当ですか・・・?」
「うん。朽木隊長の表情一つで、あの咲夜さんが、一瞬で抵抗をやめる。涙目になりながら。」


「朽木家の妻になるって大変なんですね・・・。色々と。」
「彼奴、本当にお前の弟だな・・・。お前よりはまともだと思っていたが、そうでもないらしい・・・。」
『あはは。だって僕の弟だもの。それに、橙晴の方が父上に似ているよ。』


「確かに。俺、朽木隊長の昔の写真、京楽隊長に見せて貰ったんだけど、まじで橙晴にそっくりだった。」
『似ているのは顔だけじゃないけどね。』
「そうみたいだね。かくいう青藍も、咲夜さんに似ているのは見た目だけじゃないけど。」


『困ったことに、親子というのは似るものなのさ。』
「そして、兄弟も似てしまうものなんだよねぇ。僕も兄さんと似ているところがありすぎる。」
『蓮、その自覚があったんだね・・・。』
「なんとなく青藍にだけは言われたくない。」


「深冬もよく朽木家に順応してるよな・・・。」
豪紀は恐ろしいものを見る目で深冬に視線を向ける。
「・・・順応しないとやっていられません。」
深冬は遠い目をする。


「そうか・・・。そうだな・・・。深冬も、大変だな・・・。家出したくなったら、帰ってくるといい。」
豪紀は同情するように言う。


『ふぅん?』
その言葉に青藍は豪紀をじとりと見つめた。
「・・・・・・まぁ、三日以上は無理だが。」
そんな青藍の視線に耐えきれなかったのか、豪紀は言いながら深冬から目を逸らす。


「青藍に加賀美家潰されちゃうものね。」
楽しげな蓮に、豪紀は内心でため息を吐く。
「えぇ。遠慮なく潰されるでしょうね。見てくださいよ、あの目。本気です。」


「あはは。加賀美君も苦労するよねぇ。あんなのが義理の弟なんだから。」
「そうですね・・・。」
疲れたような豪紀に、皆が笑ったのだった。



2016.11.01 祝言編 完
〜月舞編に続く〜

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
次回は月舞編。
満月の日は忙しくて騒がしい、といった内容です。
前半はオリキャラが多いかもしれませんが、後半は白哉さんや浮竹さん、京楽さん等々、死神の皆さんも登場しますので、月舞編もよろしくお願いいたします。


[ prev / next ]
top
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -