色彩
■ 35.妹を思う兄たち

『いやぁ。皆にはすでに話した気でいたのだけれど、雪乃が知らないって言うから、話し忘れていたんだね。』
青藍はそう言って笑う。
「私もこの間まで知らなかったぞ。」
深冬は不満げに言う。


『ふふ。ごめんね?隠していた訳じゃないよ?』
「でも、そう考えると、その内、豪紀様・・・というより実花さまは・・・。」
深冬はチラリと茶羅を見る。
「何だ、深冬。まだ何かあるのか?実花姫も何かあるのか・・・?」
豪紀は少々疲れたようである。


「その内、実花さまは私たちの親戚になるな・・・?」
『まぁ、そうなるよね。今も遠い親戚だけれど、もっと近くなる。』
「え、何それ。どういうこと?」
京は興味津々といった様子だ。


「ふふ。そうだねぇ。そうなると、僕と青藍は、義理の兄弟ということ?」
『あは。そうかも。義理の義理の兄弟。』
「は?いや、待て。それは、だって、お前の弟が今日祝言なんだから、あとは・・・。」
豪紀はそう言って茶羅を見る。
『まぁ、そうだね。』


「あれ?でも、蓮さんの兄弟って、お兄さんの燿さんと、妹の晴さんだけですよね?」
キリトは首を傾げる。
それを聞いて侑李は目を見開いた。
「それって・・・もう、一択しかないな・・・?」
『あはは。ま、そうなるね。』


「え、燿さん!?」
キリトは目を丸くする。
『ふふ。まだ秘密の話さ。』
「特に朽木隊長には秘密にしておくんだよ?」
蓮の言葉に皆が頷く。


『茶羅が自分で掴まなければいけないからね。僕が強制することも出来るけど、それじゃあ詰まらないし。』
「おま、え・・・それは、いいのか?貴族としてはまともな判断じゃないぞ?」
豪紀はあり得ないと言った様子だ。


『あはは。加賀美君は、本当に貴族だよね。別にいいんじゃないの?茶羅は、邸の中に籠るような子じゃないからね。』
そう言う青藍の視線の先にはあちらこちらから呼ばれて動き回っている茶羅が居る。


『あの子を家に繋ぐことは出来ないよ。あの子を家に繋ぐというのは、鳥の羽をもぐに等しい行為だ。そういう所、茶羅は母上に似ている。』
青藍はそう言って笑う。


「咲夜様は、茶羅自身が幸せだと思う道を選んで欲しいと言っていた。」
深冬も茶羅を目で追いながら言った。
『ふふ。僕もそう思う。ああやって、自由に飛び回っている茶羅が一番輝いているもの。何よりも茶羅が楽しそうだ。』


「そうだな。私は、ああしている茶羅が好きだ。皆がああして茶羅を呼ぶのは、そうしている茶羅が好きだからだろう。」
深冬はそう言って微笑む。


「ふふ。茶羅は昔からそうだよねぇ。」
『うん。目を離すとすぐにどこかへ行ってしまうから、困ってしまう。きっと、あの子は何処までも飛んでいく。遠い空へ飛び立ってしまう。僕はずっとそんな気がしていたから、茶羅がどこへ行こうと、驚かない。心配はするけどね。』


「ふふ。茶羅なら何処へ行っても大丈夫だ。」
『そうだね。』
「そうそう。どこかへ行って駄目だったら、青藍の元に帰ってくるよ。」
『駄目な時しか帰ってこないかなぁ。落ち込んだ茶羅を見るのは嫌だなぁ。』
青藍は複雑そうに言う。


「あはは。青藍、本当に茶羅のこと、可愛いよね。」
『当たり前じゃないの。茶羅は僕の可愛い可愛い妹だよ。蓮だって、晴さんがお嫁に行ったら絶対に寂しいんだから。』


「それは・・・そうだろうなぁ。兄さんなんか、泣くね。」
『あはは。燿さん、晴さんのこと、凄く大切にしているものね。』
「そうそう。過保護なくらいさ。ちなみにその兄さんはどうやって朽木隊長に立ち向かうか画策中です。」


『あはは。燿さんも大概狡い人だよねぇ。』
「本当だよ。両思いだと知った上で、茶羅には知らない振りをしているからね。我が兄ながら、中々アレな奴だよ。茶羅、それを知っても大丈夫かなぁ。」
蓮は困ったように言う。


『茶羅だから大丈夫だよ。この僕の妹なんだから。・・・ま、父上が認めなくても、朽木家の当主は僕だからね。僕が認めれば、茶羅は燿さんのものだ。』
「兄さんは、青藍の方が手強そうだから、朽木隊長に認めてもらう方法を考えているんだよ。「青藍君は自分と同じだからやり辛い。」だってさ。」


『あはは!僕は、茶羅がいいというのなら、認めるのに。』
「認めるのは認めるけど、認めるまでに兄さんと茶羅で遊ぶんでしょ?」
『ふふ。それは勿論。そんなに面白いこと、僕が見逃すはずがないじゃない。』
「だから兄さんは嫌がるんだよ。兄さんは、青藍がアレな奴だって、解っているもの。」


『あはは。僕だって燿さんが敵になるのはやり辛い。・・・ま、そんな訳だから、次は茶羅だ。また皆のことを巻き込むから、よろしくね。』
「僕からも、よろしく、と言っておくよ。大事になるんだろうなぁ。」

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