色彩
■ 34.周防家の次男

「・・・青藍、皆吃驚しているようだよ。もう少し、自重しなさい。そういう所は朽木隊長に似たんだね。」
蓮は呆れたように言う。
『ん?・・・あれ、皆、どうしたの?』
唖然としている四人を見て、青藍は首を傾げる。


「・・・羊の皮を被った狼って、こういう人を言うんだね。」
「そうだな・・・。ちょっと、ビビったわ・・・。」
「青藍、見ているこっちが恥ずかしいよ・・・。」
「お前、そんなだったか・・・?」
四人は口々に言う。


『あはは。だって、深冬はもう、僕の妻だもの。』
青藍はけろりと答える。
「まぁ、そうだね。ほら、この人、朽木隊長の息子だからね。僕は、朽木隊長と咲夜さんの新婚時代を知っているから、免疫が出来ているけれども。」
「「「「なるほど。」」」」


『まぁ、それはいいとして。・・・蓮が何者かという話だけれど。』
「あぁ、そう言えばそうだったな。」
「衝撃的すぎて忘れかけたよ・・・。」
「僕も・・・。」


「実花姫と俺が結婚すると親戚になるってことは、実花姫と親戚ってことですよね?」
豪紀は蓮に確認する。
「うん。梨花と実花は僕の従兄弟だよ。」
蓮はさらっと言った。


「それ、は・・・どういうことです?慶一殿って御兄弟いらっしゃらないですよね?」
豪紀は訳が分からないと言った様子だ。
『「居るよ?」』
「え・・・?何処に?聞いたことも見たこともないぞ?」


『あはは。加賀美君、慶一殿のお父上である主計殿を見たことは?』
「あるが・・・。」
『主計殿の瞳の色は?』
「確か・・・紫。・・・紫?」
豪紀はそう言って蓮の瞳を見た。


「蓮さんの左目は、紫ですね・・・?」
「それに確か、南雲五席の瞳も紫・・・。」
「あ、そうか。晴さん、紫だ。」
『では、慶一殿の髪の色は?』
「金・・・というか、南雲三席の髪と同じような・・・蜂蜜色というか。」
「蓮さんの髪は、瑛二さんによく似ています。」


「「「「ということは・・・。」」」」
『あ、解った?』
「琥珀庵の店主である、瑛二さんって・・・。」
「周防家の方なのですか・・・?」
豪紀は恐る恐る聞いた。


「うん。僕の父さんは、元は周防瑛二という。父さんは、周防家当主、周防慶一の弟なんだ。まぁ、表沙汰になると面倒だから、言い触らしたりはしないでね。」
「それは・・・解りましたけど・・・。瑛二さんはどうして琥珀庵に・・・?」
京は目を丸くしながら問う。


「簡単に言うと、母さんに一目惚れして家を捨てた。」
『そうそう。ちなみに佳乃さんは母上が漣家の当主だったころに、漣家の女中をしていた。』
「で、漣家に訪れた父さんが、母さんに一目惚れして、父さんは咲夜さんとの見合いの席でそれを咲夜さんに告白し、咲夜さんは面白がって父さんと母さんを応援したらしい。」


「ちょ・・・っと、待ってくださいね・・・。色々と衝撃的すぎて、何処から聞いたらいいのか・・・。」
豪紀はそう言って額に手を当てる。


「あはは。まぁ、貴族からしたら、正気じゃないよね。周防家は上流貴族だもの。それを捨てて流魂街に移り住むなんて。」
『それも、瑛二殿、慶一殿よりも笛の上手なんだよ。蓮だって、梨花実花姫より上手いし。』


「ふふ。そんなことはないよ。僕のはただの遊びみたいなものだから。」
『そうかな。蓮の笛はとても舞いやすかったけど。』
「弥彦様に比べたら雲泥の差だよ。」
『弥彦様は、まぁ、特別だからねぇ。ちなみに、弥彦様というのは、現漣家当主の天音様の夫のあの弥彦様。あの方、実は、周防家前当主周防主計の実の弟なんだよね。』


「は?」
豪紀は唖然とする。
『漣家はね、僕のお爺様に当たる漣鏡夜さまが居なくなり、その娘である母上が漣家の当主となった。でも、母上は色々あって、漣家からも護廷隊からも姿を消した時期がある。』


「それは、前に聞いたけど・・・。」
『その際、漣家には次に当主となることが出来る者が居なかった。母上に兄妹はいないし、もちろん子供も居なかったから、跡継ぎが居なかったのさ。それで、周防家に嫁いでいた天音様が漣家に戻ったんだ。天音様は鏡夜さまの妹君だからね。弥彦様もその時に周防家を捨てて、漣家の者となった。凄いよねぇ。』
青藍は楽しげに言う。


『まぁ、この件については、弥彦様が周防家に居たことを隠しているから、知らない人がほとんどだろうね。天音様が周防家に嫁いだことを知っている人も少ないし。』
「うん。僕の父さんが家を出た後のことだから、父さんも知らなかったらしい。」


『慶一殿に兄弟が居るという話も、父上すら母上と結婚するまで知らなかったくらいだし、知らなくて当然なのだけれど。』
「だから・・・だから、周防家の次期当主の候補として、南雲三席の名前が挙がったのですか?三席だからという理由ではなく?」


「まぁ、それもあるけれど。僕が当主になって、梨花か実花が僕の奥さんになるという話だったから。僕には玲奈さんが居るから、慶一伯父様には、丁重にお断り申し上げました。」
蓮は楽しそうに言った。


『慶一殿、半分遊びだったけど、半分本気だったから、残念がっていたよ。』
「あはは。それは残念でしたねぇ。」
『周防家の次男は愛に生きるよね。』
「そうかも。僕も父さんも弥彦様もみんな次男だ。」

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