色彩
■ 33.説明求む

「青藍兄様、大好き。」
茶羅はそう言って青藍に抱き着く。
『ふふ。頑張りなさい。』


「えぇ。あ、師走と蓮も秘密にしておいてね。」
「はいはい。」
「うん。その方が面白いからね。主に僕と青藍が。」


『あはは。まぁ、そうだね。』
「何よ。面白がって。」
笑う二人に茶羅は唇を尖らす。


『まぁ、いいじゃない。ほら、茶羅。あそこで恨めしそうに僕を見ている父上のご機嫌取りに行ってきなさい。「父上、大好き。」って、抱き着いてくるといいよ。』
「ふふ。そうね。行ってくるわ。」


『・・・さて、加賀美君。そろそろ僕の妻を返してくれるかな。』
「深冬に聞け。」
豪紀は面倒臭そうに言う。


『というか、侑李も京もキリトも、深冬を可愛がるの、やめてくれない?』
「だって、お前の奥さんなんだろ?」
「僕らが仲良くしたっていいじゃない。ねぇ、深冬さん?」
「はい。」
深冬は京に笑みを見せる。


「僕は大切な後輩だもの。いつもこのくらい可愛がっているもん。」
「いつも青藍のせいでご迷惑をお掛けしています。」
「あはは。別にいいよ。今に始まったことじゃないからね。寧ろ、深冬ちゃんも巻き込まれている方だし。」
「そうそう。青藍は何でも巻き込むから、深冬さんが謝る必要なんてないよ。」
「そうだな。俺たち、知らないうちに巻き込まれているからな。」


『面白くないなぁ。何さ。皆して可愛がっちゃってさ。僕なんかいつでも可愛がりたいよ。ずっと傍に置いておきたい。あぁ、もう、可愛くてかわいくて仕方がないのだけれど、どうするのがいいかな、加賀美君。』
青藍はそう言ってため息を吐く。


「知らん。」
『そうやって、加賀美君は余裕なんだ。・・・さっさと実花姫に尻に敷かれてしまえ。』
呪詛を呟くように青藍は言った。
「お前、そういうこと言うのやめろ。現実になったらどうする。」


『別にいいじゃないか。実花姫は馬鹿じゃないもの。あの八重殿が認めた姫だよ?手強すぎて、君の手には負えないね。ついでに慶一殿に遊ばれるんだ。あーあ。面白い。』
「俺に八つ当たりするなよ・・・。」


『それから、加賀美君に伝えておくけれども。・・・蓮、いいよね?』
「うん。別にいいよ。知っておいてもらった方がいいと思うし。」
二人の様子に豪紀は首を傾げる。
『実花姫が君の妻になったら、君と蓮は親戚になるからね。』


「「「え?」」」
「・・・は?」
侑李、京、キリト、豪紀は動きを止める。


「あはは。そうだね。」
「いや、蓮さん。どういうことすか?」
「笑っていますけど。」
「え、ど、え・・・?蓮さん、一体何者・・・?」
「・・・南雲三席の実家は確か琥珀庵ですよね?」
「うん。そうだよ。」


「「「青藍、どういうこと!?」」」
「説明してくれ・・・。」
『ふふふ。深冬を返してくれたら、話してあげる。』
青藍に言われて、四人は迷わず深冬を青藍の前に差し出した。


「ちょ、ま、って、ください・・・。」
『あはは。深冬、捕まえた。』
青藍はそう言うと、差しだされた深冬の手を取って、自分の方に引く。
「わ!?」
引っ張られた深冬はふわりと青藍の膝の上に収まった。
青藍は後ろから深冬をぎゅうっと抱きしめる。


『・・・ふう。これで良し。』
青藍は満足げに言う。
「よ、よくないぞ!はな、放せ、青藍!」
深冬は赤くなりながら暴れる。


『こらこら、暴れないの。』
「じゃ、じゃあ、放せ!」
『やだ。』
「な!?やだじゃない!!」


『はーい。これ以上暴れるなら、暴れられないようにしまーす。』
青藍はそう言って深冬の顎を持ち上げる。
「な、何をする気だ!?」
『んー?・・・キス?』
言いながら青藍は親指で深冬の唇をなぞった。


「む!?わ、解った。暴れない。暴れないから、それは、やめてくれ・・・。」
青藍の瞳の色が変わった気がして、深冬は身の危険を感じる。
そして、大人しく抵抗をやめた。
『そ?それは残念。じゃあ後でにする。』
青藍は微笑んで、深冬の顎から手を放した。


「後で!?後でって何だ!?青藍!?」
深冬は身をよじって青藍を見上げる。
『ふふ。後でね。』
意地悪く微笑みながら、青藍は楽しげだ。
「な!?」
深冬は顔を赤くする。
『ふは。可愛いなぁ。』

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