色彩
■ 32.秘密にしてね

「・・・どこまで知っておいでで?」
にこにこと微笑む青藍に、師走は恐る恐る聞く。
『今この場で僕が知っていることを話したら、君は女性陣に袋叩きにされるだろうね。』
その言葉に師走は顔を青褪めさせる。


『ふふふ。見かけによらず、だよねぇ。』
それを見て、青藍は微笑んだ。
「いや、あの、出来れば、何も、言わないで頂けると・・・。」
『そ?じゃ、黙っていてあげよう。僕は。』


「僕は・・・?ってことは、ご当主以外にも知っておいでで・・・?」
師走は恐る恐る白哉と橙晴を見る。
「「当然。」」
「ちなみに俺も知っているぞ。調べたの、俺だし。」
「うわぁー!!!!もうヤダ!何この家。怖いわ!睦月も何やってんだよ。」
師走は頭を抱えて叫ぶ。


『ちなみに茶羅もそれに薄々気が付いているよね。』
「えぇ。だから師走は私の護衛なのよ。父上が、何故私と貴方が山中に野宿しても文句を言わないかって、全部知っているからだわ。貴方が私に手を出すことはない。ある一人以外には興味もないものね。父上が敵になるというリスクを背負ってまで、私に手を出すこともしない。それくらいには賢いものね、師走?」
茶羅は楽しげに言う。


「だ、それ、は・・・。えぇ・・・。もう、何なんですか・・・。」
『まぁ、そう落ち込まないでよ。別に君の恋路を邪魔しようっていう訳じゃないからさ。寧ろ、僕は協力しているよね。』
「え・・・?」
師走はポカンとする。


『あのねぇ。何のために君を茶羅に付けていると思っているの。茶羅が行くのは何処?その場所には誰が来るの?君は何を持ち帰ってくるの?・・・まさか、気付いていないの?』
「御嬢さんがよく行く・・・場所・・・。」
師走は考えながら呟く。


「・・・・・・あぁ・・・そうだ。そうだな・・・。だから俺が行かされてんの?」
思い至ったのか、師走は青藍を見る。
『そうだよ?まぁ、でも、一度も会えていないようだけれどね。』
「おかしいと思ったんだよ・・・。あそこは俺より睦月の方が適任だし。つか、青藍。お前、本当にどこまで知ってんだよ・・・。」


『あはは。君の片思いは、君たちの婆様が教えてくれた。』
「婆様で、俺・・・ってことは、え、お前、彼奴なの!?や・・むぐ!?」
名前を出しそうになった睦月の口を師走は慌てて塞ぐ。


「黙れ、睦月。それ以上言ってくれるな。・・・はぁ。あの婆さん、まだ生きてんのかよ。」
『ご健在ですよ。時折、漣家に寄って行かれるようです。数年前に、偶然行き会ってね。師走を拾ったと言ったら、楽しげに話してくれたよ。』


「信じらんねぇ。・・・白哉さん、貴方の息子、怖いんですけど・・・。」
「今さら気が付いたのか。遅かったな。」
「師走、もう逃げられないわね。ご愁傷様。」
「御嬢さん・・・。」


「諦めろ。俺はもう諦めた。」
睦月は淡々という。
「いや待て。お前も何かやらかしてんのか?」
「やらかしたというか・・・。」


『睦月の秘密がばれました。』
「五月蝿い!!大体お前の情報源は狡いんだよ!」
『別に僕、自分から聞いたわけじゃないもーん。大体、睦月だって、ちょいちょいやらかしているじゃない。』
青藍はそう言ってチラリとルキアを見ながら首元を指さす。


「な!?それは、あれだ。反省しただろう・・・。」
『ふふふ。反省しても知られたら拙いよね。』
「あれは駄目だよねぇ。」
「そうね。あれは問題だわ。」
朽木三兄弟に言われて、睦月は小さくなる。


「駄目だ、師走。俺もやらかしてた・・・。」
「俺、それ見たな。」
「五月蝿い。」
「睦月も師走も阿呆よねぇ。」
「御嬢さんだって色々やっているじゃないですか。」
茶羅を横目で見ながら師走は言う。


「私はいいのよ。別に何かやらかしたわけではありませんもの。それに、母上公認なんだから。ね、母上?」
「ふふ。そうだな。」
咲夜はそう言って笑う。


「・・・実は、茶羅については、青藍も気付いているのだ。」
「何ですって!?」
深冬の言葉に茶羅は目を見開く。
それから青藍を見た。


『ん?知っているよ?結構前から。ねぇ、蓮?』
「うん。僕も知っているよ。いや、気付いた、というのが正しいけれど。」
「な、何を・・・。」
『僕は別にいいよ?手出しはしない。手を出すなと言われたから。』
「だ、誰に!?」


『おっと。口が滑った。いや、なんでもない。』
青藍はそう言って愉しげに笑う。
「青藍兄様、ちょっと、こちらに来てくださるかしら。」
茶羅に言われて、青藍は茶羅の元へ行く。


「少々お耳をお貸しくださらない?」
『ん?何?』
青藍はそう言って茶羅に耳を貸す。
その耳に手を当てて、茶羅は青藍にひそひそと問う。


「父上もご存じなの?橙晴は?」
『あはは!たぶん知らないよ。』
「兄様、秘密よ?」
『はいはい。わざわざ言うことはしませんよ。僕は茶羅の味方だからね。君がそうしたいのならば、僕は手を出したりしない。僕は茶羅を信じるよ。君は、好きにしていいんだ。』

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