色彩
■ 31.一番

『ふふ。雪乃、おめでとう。君にはきっと、苦労を掛けるだろうけれど、これからもよろしく。僕の義妹として歓迎するよ。』
「えぇ。よろしくお願いいたしますわ、お義兄様。」
『あはは。凄く違和感があるから、いつも通りにしてくれ。』


「相変わらず失礼ね。・・・それより、隣に居る貴方の奥さん、どこか不満げよ?」
「うん。何か、すごくこっちを見ているのだけれど・・・。」
言われて青藍は深冬を見る。
すると雪乃の言葉通り、どこか不満げな顔をした深冬が橙晴と雪乃を見つめていた。


『どうしたの?』
「・・・何でもない。」
深冬は目を合わせずに答える。
『ふぅん?』


その様子に青藍は自分の発言を振り返る。
・・・もしかして、雪乃に美人だと言ったことが気に入らない?
なにそれ。
可愛すぎる。


『深冬、こっち向いて?』
「やだ。」
『えぇ・・・。じゃあ、良いもんね。』
青藍はそう言って深冬の腕を引く。


「うわ!?」
そんな声を上げながら深冬は青藍の膝の上に乗せられた。
「何を!?」
深冬は驚いて青藍を見る。


『あ、こっちみた。ねぇ、深冬。雪乃は確かに美人だけど、一番美人で可愛くて綺麗なのは、深冬だよ?雪乃に妬いた?』
「!!!」
青藍の言葉に深冬は目を見開いて、それから赤くなった。


『うわ、どうしよう、橙晴。深冬が可愛すぎる。』
青藍はそう言って深冬を隠すように抱きしめた。
「雪乃には負けますけどね。」
「な!?何を言っているのよ・・・。」
しれっといった橙晴に雪乃も赤くなる。


『一番は深冬でしょ!』
「一番は雪乃です。」
「一番は咲夜であろう。」
白哉はさりげなく咲夜の腰に手をまわしつつ言う。


「な!?白哉、何を張り合っているのだ!」
『母上もお綺麗ですけど、一番は深冬です!』
「雪乃ですってば!!!」
「咲夜に決まっている。」


「おい、ルキア、何か始まったぞ。」
「そのようだな。」
睦月の言葉にルキアは苦笑する。


「あら、いつものことじゃない。・・・睦月も参戦してくれば?」
茶羅はルキアにチラリと視線を向けて、睦月に問う。
「な、にを、言っているんだ・・・。」
睦月は気まずげにそっぽを向く。


「何だ?睦月に想い人が居るのか?」
ルキアは目を輝かせる。
それを見て、睦月はため息を吐いた。
そして、ルキアの頭を撫でる。


「な、何だ?」
「お前はそういう奴だよなぁ・・・。」
「睦月、可哀そうねぇ。全く気付かれていないというのも、問題だと思うわよ。」
「別にいいんだよ。朽木家の世話で手一杯だからな。」
そう言った二人にルキアは首を傾げる。


「そうか。睦月はそうだったのか。」
「あはは。白玉って、そういうことだったんだね。」
浮竹と京楽はそれを見て、楽しげに言った。


「余計な手を出す必要はありませんよ、お二方。」
「はは。そんなことはしないさ。振られたら慰めてやるくらいだ。」
「そうそう。お酒を片手に語らおうじゃないか。寂しい男鰥夫三人で。」
「お二人とも、何気に酷いですよね。まぁ、いいですけど。」


「・・・あの、お三方。そろそろ奥さん自慢止めてあげません?自分たちの奥さんの顔を見た方がいいですよ。」
師走に呆れたように言われて、三人は自分の妻をそれぞれ見た。
白哉、青藍、橙晴による妻自慢に、咲夜、深冬、雪乃は、顔を赤くして涙目になっている。


「びゃ、白哉の阿呆!・・・浮竹、京楽、助けろ!」
「はいはい。咲ちゃん、こっちにおいで。」
「よしよし。白哉に苛められたのか。可愛そうに。」


「青藍の阿呆!・・・豪紀兄様!」
「あー、なんだ。お前も大変だな。」


「橙晴の阿呆!!・・・卯ノ花隊長!」
「あら、雪乃。せっかく綺麗にしているのですから、良い顔をしないと勿体ないですよ。」
三人はそう言って他の席へ逃げ出す。


「あーあ。三人とも、振られましたね。」
師走はからかうように言う。
『「「五月蝿い。」」』
そんな師走に噛みつくように、三人は言った。
「おー怖い。」
それでも師走は飄々としている。


『師走なんか、ほぼ振られているくせに!!』
「な!?」
青藍に言われて、師走は目を見開く。
「そうだな。憐れなことだ。」
「何だ。ただのやっかみか。」
「な、何のことですか。俺にはそう言う人はいませんよ。」
『「「嘘だ。」」』


「あら、師走、そんな相手が居たのね?」
「そのようですね。それは興味深いお話です。」
「私も興味があります。」
乱菊、七緒、卯ノ花に言われ、師走は言葉に詰まる。


『そうなんですよ。師走ってば、橙晴なんか比にならないくらい、片思いが長いんですよ。それも、報われない。』
「仕方なかろう。睦月と師走では睦月だろう。」
「え、俺ですか?」
睦月はきょとんとするが、それには誰も答えない。


「そうですね。睦月か師走なら、睦月でしょう。」
『師走、報われないからって遊んでいると、本当に愛想を尽かされるよ。』
「い!?」
楽しげに言う青藍に、師走は顔を引き攣らせる。

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