色彩
■ 28.朝比奈邸にてA

『さて、堅苦しい話は終わりにしましょう。秋良殿、祝言は如何いたしましょう?』
「私は何時でも構いません。朽木家のご都合がつく日に合わせましょう。」
『それはありがたい。・・・橙晴はいつがいい?』
「すぐにでも。」
橙晴は即答する。


『あはは。答えに迷いがないよね。』
「さすが橙晴だな。」
青藍と深冬は苦笑する。


『そうだねぇ。やる気を出せば明日でもいいけど・・・。』
「本当ですか?」
『あ、駄目だ。睦月と師走が居ない。技術開発局に貸し出し中だ。』
「えぇ・・・。」


「・・・ちょっと、二人とも、何でそんな急な話になるのよ。」
雪乃は呆れたように言う。
「当たり前じゃないか。僕が何年待ったと思っているの?僕の片思い、二十年近いんだからね?解ってる?」
「それは・・・解っているわよ・・・。」


『それに、今なら深冬と夫婦になったばかりだから、周りが遠慮して僕が忙しくない。もちろん深冬も。後二、三か月もすると以前のように忙しくなる。そうすると、朽木家の予定を合わせるのが大変なのさ。父上は隊長で、僕は三席で、橙晴は五席。ルキア姉さまは副隊長なんだから。それから雪乃だって席官でしょ?』


「そうだな。私と咲夜様は平隊員だが、浮竹隊長の調子が悪いと咲夜様は隊長の代わりになるし・・・。私もその手伝いをしなければならない。」
「と、いう訳で雪乃、早く結婚してしまおう。」
「!?」
笑顔で言い放った橙晴に、雪乃は目を見開く。


「ははは。雪乃は大変だなぁ。」
秋良は他人事のように言う。
「ちょっと、お父様?私が嫁に行くっていうのに、どうして他人事なのよ。」


「雪乃の嫁ぎ先が朽木家だからだよ。白哉様、咲夜様、青藍様、橙晴様、茶羅様、ルキア様。それから、深冬様も。雪乃が大切に思い、大切に思われる。朽木家はそう言う場所なのだろう?それならば、何時嫁いでいこうと、私は安心だ。」


『ふふ。そう言っていただけると、嬉しいですねぇ。』
「雪乃様は、青藍と私の大切な友人です。私も大切にします。」
深冬は真っ直ぐに秋良を見て言う。
「ふふ。深冬様にそう言っていただけるとは、光栄にございます。」
そんな深冬に秋良は笑みを零す。


『でも、祝言を挙げるなら、急いだ方がいいのは本当だよ。その内加賀美君も祝言を挙げるそうだよ。僕と深冬の兄だから、それなりに顔を出さなきゃならない。僕としてはそれより前にして欲しい。まぁ、橙晴が急がなくてもいいというなら、その後でもいいけどね。』


「僕は早い方がいいです。じゃないと雪乃、また逃げそうだから。」
橙晴は雪乃を横目で見ながら言う。
『あはは。それは大変だ。』
「逃げないわよ。信用ないわね。」


「信用がないんじゃなくて、余裕がないの。」
「何を言っているのよ・・・。」
「本当のことだもの。僕だって余裕綽々じゃないんだよ。そう見せているだけに決まっているじゃないか。雪乃が告白に呼び出されるたびに冷や冷やしているんだから。」


「・・・雪乃様。諦めが肝心だと思う。」
深冬は諦めたように言う。
「ははは。深冬様、悟っていらっしゃる。」
秋良は楽しげだ。


『ふふ。そうだよ、雪乃。我が朽木家は皆嵐のようだからね。諦めて流されなさい。深冬のように。流されたら流されたで面白いからさ。ね、橙晴?』
「そうですね。基本的に滅茶苦茶な人しか居ませんけど、受け入れた相手に対しては強い味方になりますし。だから、早く結婚しようよ。」
皆に言われて、雪乃は言葉に詰まる。


「・・・解ったわよ。覚悟を決めればいいんでしょ!」
「ふふ。流石雪乃。」
『じゃあ、祝言は一か月後ってところかな。』
「一か月後かぁ・・・。」


『何?橙晴、不満なの?』
「もっと早い方がいいです。」
『あはは。でも、それ以上前だと、雪乃の白無垢自分で作れなくなるけれど。』
「それは、いいんです。ね、秋良殿?」
橙晴は楽しげに秋良を見た。


「そうですね。雪乃の母が着たものをすでに橙晴様が手直しをされております。」
「勝手に何をしているのよ!?」
秋良の言葉に雪乃は目を見開く。


『あはは。さすが橙晴。手回しが早い。じゃあ、二週間後で。丁度父上と母上が非番だし。まぁ、父上に文句を言われるかもしれないけれど。睦月と師走が帰ってくれば、そこから一週間ぐらいで手配が終わるだろう。貴族の方々にもお知らせしないといけないし。』
「やった。」


『あーあ。後は茶羅とルキア姉さまかぁ。』
青藍はそう言ってため息を吐く。
「ルキアさんはあれだが、茶羅には想い人が居るぞ?」
『ふふ。それを知らない僕じゃないよ、深冬。』
「何だ。知っているのか。」


『うん。だから、もしものための、母上の白無垢さ。』
「なるほど。青藍は、そこまで知っていてそれを準備しているのか。」
『まぁね。相手に確認したところ、その気はあるらしい。だから、僕は遠慮しなくていいと伝えておいた。まぁ、彼はあれで曲者だから、茶羅は大変だろうなぁ。』
青藍は楽しげだ。


「そうなのか?」
『うん。笑顔で女性を容赦なく振っていたよね。普段はああいう感じだから、僕も驚いたけれど。女性には手厳しい。僕と同じタイプだね、あれは。』

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