色彩
■ 26.特別・・・?

「それじゃあ・・・。」
「どんな理由にしろ、茶羅は特別ということなのではないか?」
ルキアは泣きそうな茶羅を勇気づけるように言う。


「私も別に反対はしない。白哉は・・・まぁ、複雑だろうが。」
「そうでしょうね・・・。それは仕方ないでしょう。」
ルキアは苦笑する。
「ですが、瑛二殿は籍を抜かれているとはいえ、周防家の出身ですし。」


「「そうなのですか?」」
ルキアの言葉に雪乃と深冬は目を丸くする。
「おや、知らなかったのか?瑛二殿は周防家当主、周防慶一殿の弟なのだ。」
咲夜は意外そうに言った。


「・・・つまり、蓮さんたちは梨花さまと実花さまの従兄弟?」
「そうだ。だから周防家の次期当主を決めるのに蓮の名が挙がったのだ。なんだ。青藍は話していないのか。・・・話し忘れているだけかもな。」


「そうだったのですね・・・。確かに、言われてみれば、似ておりますわ。それに、ずっと不思議だったのよね。瑛二さん、動きがとても綺麗なのよ。」
「それは私もそう思っていました。」
雪乃の言葉に深冬が賛同する。


「でも、佳乃さんも動きが綺麗よね?」
「ははは。それはそうだろう。佳乃は元々漣家の女中だったのだから。」
「「えぇ!?」」


「漣家に来た瑛二殿が佳乃に一目惚れして、駆け落ち同然だったのだ。当時私は漣家の当主だったから、少し手伝いもしたが。瑛二殿と私の見合いの席で、佳乃と一緒になりたいから手伝ってくれと言われてな。あれは面白かったなぁ。」
「瑛二殿も中々剛毅な方ですよね・・・。」


「・・・私、頑張ろうかしら。」
それまで黙っていた茶羅は、ポツリと呟く。
「母上、私は・・・私も、追いかけてみてもいい?」
茶羅は不安げに言う。


「当たり前だ。好きにしていい。青藍も橙晴も好き放題ではないか。」
「あはは。そうですね。」
「でも、父上たちは良く思わないのではないかしら。周防家の血を引いていても、それを公表すれば、混乱は免れないもの。青藍兄様はともかく、父上と橙晴がそれを許してくれるかしら?」


「白哉たちはなんだかんだ言いつつも茶羅自身が幸せだと思える道に進ませてくれるだろう。皆茶羅には甘いからな。」
「えぇ。白哉兄様も青藍も橙晴も、茶羅のためならば結局手を貸すでしょう。」


「少なくとも、青藍は手を貸してくれるぞ?この前、茶羅のことを心配していたから。茶羅が幸せになるように、色々と考えている。咲夜様の白無垢を茶羅にあげようとしているくらいだ。」


「あぁ、だから、私に聞いてきたのか。白無垢について。深冬に着せるのかと思ったが、茶羅にあげるつもりなのか。」
咲夜は納得したように言う。


「はい。経済的に困っても、あの白無垢を売れば、それを元手に何かをなすことも出来るだろうと。だから、いつか家を出ていくであろう茶羅に、それを渡そうと考えているようです。家の中に居る間は守ることが出来るけれど、家を出たら手を出せないこともあるからって。」


「青藍って、あれでもちゃんと兄なのよねぇ。」
「ふふ。はい。」
深冬は自慢げに頷く。


「白哉も、反対はしないだろう。白哉が複雑なのは、大切な娘が他の男の元へ行ってしまうからだ。文句は言うかもしれないが、茶羅の幸せな顔を見るためなら、何だってしてくれる。」


「橙晴だってそうよ。双子として、生まれたときから一緒に居るのよ?茶羅のことが大切だし、幸せになってほしいと思っているわ。」
「もちろん、私も、ルキアも、深冬も、雪乃も茶羅の味方だ。燿がどう思って居ようと、茶羅は頑張っていいし、それでうまく行かなくても、私たちが居る。遠慮なく頼っていい。」
咲夜はそう言って微笑む。


「私も応援するぞ、茶羅。」
「私も、茶羅には幸せになってほしい。私の大切な友人で、家族だ。」
「そうね。私もそろそろ逃げるのは止めようかしら。そうしたら、私も家族になるわ。」


「おや、雪乃は覚悟を決めたのかい?」
咲夜は楽しげに言う。
「それは・・・最初に言うのは橙晴にです。橙晴ったら、本当にめげないのだから。」
「それが橙晴のいいところだ。」


「ふふ。何だか勇気が出ました。私も、ちゃんと愛されているのね。」
茶羅は嬉しそうに微笑む。
「当たり前だ。青藍だけじゃなく、茶羅も、橙晴も、私の大切な子なのだ。私と、白哉の間に生まれた、愛しい子なのだ。君たちが生まれたとき、私たちがどれほど嬉しかったか、解らないのだろうなぁ。」


「そうですね。私も、皆が生まれたときの感動は忘れられません。兄様もそれはそれは嬉しそうで。」
ルキアは思い出したのか、笑みを浮かべる。


「ふふ。そうだったな。白哉は、最初に必ず、生まれてきてくれてありがとう、と、君たちにお礼を言うのだ。いつも、泣きそうな顔で。それから安心したように笑う。茶羅と橙晴が生まれた時は、青藍も嬉しそうだった。まぁ、生まれる前から嬉しそうだったが。私のお腹に手を当てて、元気に生まれてきますようにって、いつも言っていたのだ。」

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