色彩
■ 25.想い人

「あと、他に誰かいたか・・・?」
咲夜たちはそう言って首をひねる。
「あ、浮竹隊長は?」


「十四郎さんは確かに格好いいわよねぇ。年が離れているけれど、魅力的だわ。でも、どちらかといえば保護者に近いわよね。」
「「「「確かに。」」」」


「では、恋次は?」
「恋次さんに、父上から私を奪う度胸がおありかしら?」
「それは・・・ないな。白哉兄様の前に青藍と橙晴という壁もあるしな・・・。」


「あ・・・キリトさんは?十三番隊に来ると良く話しているだろう。」
「ふふ。キリトさんは貴族のお姉さま方から人気があるのよ。私はいつもそれを伝えているだけだわ。」
「そう言えば、十三番隊にキリトへ見合い写真が届いたことがあったな・・・。」


「じゃあ、侑李?」
「侑李さんは気のいいお兄さんよね。九番隊に行くと修兵さんと一緒にあれこれ世話を焼いてくれるもの。修兵さんと同じで、良い人で終わるタイプね。」
「茶羅、辛辣だな・・・。」
ルキアは苦笑する。


「あとは・・・京か。」
「京さんは見た目と中身が一致しないところが面白いと思いますけれど、あの人も世話焼きお兄さんタイプですわ。」


「あと他に誰かいたか・・・?茶羅が関わっている男性陣は・・・。」
にこにこと微笑む茶羅に、皆が首をひねる。
「あ・・・。」
深冬が何かに気が付いたように声を上げる。
「何か思いついたか?」


「はい。・・・茶羅、燿さんだろう。」
深冬は確信を持っていう。
深冬の言葉に茶羅は目を丸くした。
「何故、そう思うの・・・?」


「茶羅はよく琥珀庵にお菓子の作り方を教わりに行く。でも、燿さんが教えられる日にしか行っていない。瑛二さんに教わることだって出来るのに・・・。私も何度か一緒に行ったが、全て燿さんに教わった。」
深冬は真っ直ぐに茶羅を見つめて言った。


「ふぅん?そうだったのか、茶羅。」
「そんなことをしていたのね。」
「言われてみれば、茶羅は昔から燿さんによく懐いていたな。」


「それに、茶羅が琥珀庵の物で好きなのは、燿さんが作っている洋菓子だ。一番好きなのはバナナのマフィンだが。」
「!!!」
深冬に言われて、茶羅はさらに目を丸くする。


「え?茶羅が好きなのは、琥珀庵の餡蜜じゃないのか?」
「茶羅はそれも好きです。でも、餡蜜は和菓子の中で燿さんが唯一作るものなのですよ。この前、燿さんがそう言っていました。」
茶羅はだんだんと俯いていく。


「で、茶羅?燿さんなの?」
雪乃の問いに、茶羅は顔を上げた。
その顔は珍しく赤い。
それを見て四人はそれが本音だと確信したのだった。


「ほう。それはまた・・・。」
「前途多難ね・・・。」
「燿は貴族の女性にもモテるからな・・・。」
「死神の中にも、燿さんを想っている人が居るようです。」
赤い顔の茶羅を見つめながら、四人は口々に言う。


「・・・そ、そんなこと、解って、居ますわ。」
茶羅は呟くように言う。
「でも、それは私の片思いです。燿さんは、きっと、私のことなど、何とも思っておりませんもの。」
茶羅は悔しげに言う。


「それは・・・どうかしら?」
茶羅の言葉に雪乃は首を傾げる。
「え・・・?」

「私の友人が、燿さんを好きになったことがあって、お近づきになろうと、お菓子作りを教えて欲しいと頼んだことがあるのよ。あ、貴族の子なのだけれど。でも、断られたって。他にもお菓子を教わろうと頼んだ子たちが居るようだけれど、皆、瑛二さんに教わってくれと言われたらしいわ。」


「え・・・?でも、私、普通に教えてくれたわ・・・。いや、朽木家の姫だから断れなかったのね。」
「まぁ、朽木家の姫とその辺の姫じゃ、対応に差が出るかもしれないけれど。でも、燿さんってそう言う人かしら?」
雪乃の問いに深冬と咲夜、ルキアは首を横に振る。


「燿は私が相手でも普通に接してくれる。琥珀庵の前を通ると気安く声を掛けて来るぞ?貴族相手でも流魂街の民相手でもそう対応が違う訳でもない。」
「そうだな。燿は相手が誰であろうと平等に接する。接客業でもあるから、そうしている部分もあるだろうが。かといって、何も思っていない相手にわざわざ時間を割くようなタイプでもないだろう。」


「そうですよね。何せ、蓮さんのお兄様ですもの。」
「あはは。確かに蓮は意外と容赦がないからな。」
「そうですね。蓮は思った以上に容赦がありません。だから、青藍の友人でいることが出来るのでしょうが。」
咲夜とルキアは苦笑する。


「青藍ったら、蓮さんの言うことはちゃんと聞くのよねぇ。」
「あはは。確かにそうだ。」
「まぁ、似た者同士なのでしょう。何かと共通点も多いですし。」
「そうだな。蓮も青藍と橙晴のことをなんだかんだ言いながら、玲奈に婚約を申し込む前に叔母上の所に話を通していたらしい。」


「あら、そうだったのですか?蓮さんって、結構やるのねぇ。・・・とまぁ、燿さんはそんな蓮さんのお兄さんなのよ?そんな人が理由もなくお菓子作りを教えたりするとは思えないわ。」

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